戦時国債

昭和17年(1942年)に発行された50円の戦時国債です。

戦前、国債残高のGDP比は200%を超えましたが、

戦後、すぐに返済できました。100倍以上のインフレになったからです。

画像出典:Wikipedia ライセンス:P.D.


<目次>

第Ⅰ部 デフレ脱却で経済落ち込む

 第1章 円安で得した人と損した人

 第2章 日米逆の金融政策の帰結

 第3章 実体経済はなぜ落ち込む?

第Ⅱ部 労働力不足と社会保障の膨張

 第4章 労働力不足経済に突入する

 第5章 医療と介護の問題はどうすれば解決できるか

 第6章 公的年金の問題はどうすれば解決できるか

 第7章 財政の将来はきわめて深刻

 第8章 どうすれば成長を実現できるか


タイトルはともかく、この本は読んだほうがいいです。正直なところ、試算・分析の羅列で、『超整理法』の著者とは思えないほど、稚拙な乱文が多いのですが、それほど切羽詰って書いているのかもしれません。しかし、これほど納得感のある試算・分析を世に問うてくれる方はそんなにいませんので、一体、この後日本はどうなるかを知るためにも、ぜひとも読んでおきたい本です。


日本はこのまま行くと、2030年前後に破綻します。タイトルは、著者の代表的著書『1940年体制』にひっかけてのものでしょう。1940年前後に作られた現在の日本の体制、つまり、企業別労働組合、年金制度、健康保険制度、所得税の源泉徴収などの制度がほころび、そして持続不可能になっています。


本書の課題設定は、労働力不足、医療・介護、年金、財政と多岐に渡っています。すべてについて書評を書くことができませんので、以下、論点を絞って書きます。


年金の所得代替率目標は10ポイント下げるべし


現在の年金制度は、所得代替率50%を想定して、設計されています。65歳を迎えると、現役時の所得の50%が年金としてもらえるという考え方です。ちなみに、2014年6月時点では62.7%でした。



しかし、この所得代替率50%という目標を据え置くと、2031年には積立額が赤字に転落し、年金原資がなくなります。そうならないようにするためには、所得代替率の引き下げ、もしくは、さらなる受給開始年齢の引き上げが必要です。著者の試算であ、受給開始年齢の変更がない場合、所得代替率を40%に引き下げれば、持続可能であるとしています。


それ以外の論点(医療と労働力不足)


それ以外の論点も、医療保険に関しては、75歳以上の後期高齢者の自己負担増が不可欠でしょうし、労働力不足に関しては、労働生産性のアップが必要でしょう。


なお、労働生産性アップについては、冨山和彦氏の『なぜローカル経済から日本は甦るのか』やアトキンソン氏の『新観光立国論』が分かりやすいので、今後書く予定のそちらの書評にゆずります。年金・医療・介護・財政がなかなか手を打つのが難しいのに対し、労働生産性アップの施策は、比較的手が打てるのではないかと思います。


絶望的な日本の財政


しかし、一番の問題は財政です。絶望的です。昨年来の異次元緩和は、いつかどこかで止めねばなりませんが、ソフトランディングが可能なのでしょうか?増加する国債残高を消化しきれるのでしょうか?

2014年12月に行われた総選挙を通じて明らかになったのは、「財政再建は絶望的」ということだ。


現在、輸出企業を中心の業績好調により税収が増えておりますが、決して健全な状態ではありません。ドルベース換算で、我々の手取り収入は明らかに減っているからです。

今、税収が増えているのは、企業利益が増大しているからだ。しかし、それは、企業が新技術を開発したり、生産性を高めたからではない。円安のため、円表示の輸出額が増加しているからだ。ドルベースで見れば、売上が一定で支払い賃金額が減っているからである。つまり、円の価値の下落によって、賃金労働者が貧しくなるからである。その意味で、銀貨の改悪と似たことだ。


ローマ帝国も、日の沈まない日のなかったスペイン帝国も、そして江戸幕府も、没落・崩壊の原因は貨幣改悪です。江戸時代を通じて、「金貨」に占める金貨含有量は4分の1になったと言います。特に、開国後の金の流出が貨幣改悪に拍車をかけ、急激なインフレが発生して幕府が崩壊しました。貨幣改悪の末路は、財政破綻しかありません。


2030年に向けての準備


もは絶望的です。なぜなら、これほどの試算・分析をしている野口先生でさえ、もはや「見当がつかない」と匙を投げてしまっているのですから。

からです。

こうした状況に国債市場が対応できるのか、あるいは日銀による国債購入をこの時点になっても続けざるをえないのか、まったく見当がつかない。


野口先生、なんと罪な。あなたが見当がつかなければ、読者に見当がつきようがありません。2030年には私は61歳。2030年に向けて準備をしておきたいと思います。


  • 日本が財政破綻する心構えを持っておく。
  • 財政破綻しても生き残る知恵と術を持っておく。
    • 60歳で引退はない。生涯現役を続ける覚悟を持つ。
  • そのための社会設計に寄与する。
  • 生き残る知恵と術は、子どもたちにも受け継いでいく。


しかし、本当の問題は・・・


実は問題がひとつありまして。


2030年前後の破綻という試算は、それまで、ほとんどの人が財政は持続可能だと信じ続けた場合のみです。


もし、日本国民のある一定数割合、たとえば10%ぐらいの人が財政の持続不可能性に気づいてしまったら、おそらくそこから国債の暴落、円の暴落が始まります。本書がもし、50万部、100万部のベストセラーになるようであれば、そこから日本は破綻開始する可能性があります。2020年まではオリンピック景気がありますので、2020年までは起きないとは思いますが、オリンピック後の反動が怖いです。



関連書籍


現在の日本の諸制度、所得税、年金、健康保険、企業別労働組合は、1940年前後の戦時体制の確立の中でできてきました。食管制度のように廃止されたものもありますが、ほとんどの制度は生き残っています。これら諸制度のルーツを理解するのに役立ちます。


デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング) ( 2010-06-10 )
ISBN: 9784047102330


実は、生産人口の減少の影響は、1995年から受け出しています。1995年からの10年間の間に、もっと抜本的な手を打つべきだった。残念ながらPOINT OF NO RETURNを過ぎてしまった。




現日銀総裁黒田氏の本。彼は、異次元緩和の問題を理解していながら、異次元緩和へ踏み切ったことが、本書を読めば分かる。ハードランディング路線であるインフレ&国債の滅却を狙っている可能性が高い。


なぜ大国は衰退するのか ―古代ローマから現代まで
グレン・ハバード, ティム・ケイン
日本経済新聞出版社 ( 2014-10-25 )
ISBN: 9784532356132


『2040年問題』の中で引用されている。ローマ帝国、スペイン帝国の崩壊・没落の原因は、貨幣改悪にあるとしている。


2052 今後40年のグローバル予測
ヨルゲン・ランダース
日経BP社 ( 2013-01-09 )
ISBN: 9784822249410


世界全体が難局に向かっている。環境・エネルギー・食料。これらの問題を解決にするには、民主主義の意思決定プロセスでは遅すぎる。独裁国家が笑うかもしれない。




本書も日本を絶望しています。国家、企業、個人に対する提言がコンパクトにまとめられています。国家に対して影響力を行使することはできませんが、企業、個人に関しては、役に立つのではないでしょうか?




本書では、経済官僚たちが既に日本の財政を諦めていることが、図らずも吐露されています。




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