遠く時の輪の接する処遠く時の輪の接する処
著者:松本 零士
東京書籍(2002-08)
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読書のきっかけ

国民読書年記念「朗読会」松本零士と旅する「朗読による大宇宙」に参加したのをきっかけに、本書を読んだ。 松本零士と言えば、『銀河鉄道999』の原作者であり、『宇宙戦艦ヤマト』の監督である。本書は松本零士氏の自伝書である。宇宙戦艦ヤマト、銀河鉄道999ファンにおすすめ。 物心がついたころの幼少時代、少年時代、戦争帰りの父、中高生時代、高校を卒業し上京した若かりし日の貧乏生活。結婚。アニメーションへの挑戦。少女マンガでの挫折、自分の道の確立、そして『宇宙戦艦ヤマト』、『銀河鉄道999』。子供のころに出会ったアニメーションと宇宙。 松本零士氏の少年のころの思いが凝集され、氏のマンガ・アニメの世界が形成されている。

戦闘機の教官だった父

松本氏の父は、第二次世界大戦で戦闘機の教官だった。多くの若者を戦場に送り出し、そして帰ってくることがなかった。その無念の気持ちを、『宇宙戦艦ヤマト』の沖田十三艦長に代弁させている。
父が昔よく言っていた言葉、「人は生きるために生まれるのであって、死ぬために生まれるのではない」。これや『ヤマト』のメインテーマになった。(169ページ)
『宇宙戦艦ヤマト』が最初に放映された1974年。第二次大戦・戦艦ヤマト沈没からまだ29年だった。ヤマトを題材に描くことは、戦争の記憶が残っており、現在より生々しかったに違いない。 また本書では触れられていなかったが、『我が青春のアルカディア』におけるハーロック二世は戦闘機パイロットであった。ひょっとしたら父の描写かもしれない。 復刻版 大宇宙の旅復刻版 大宇宙の旅
著者:荒木 俊馬
恒星社厚生閣(2006-07-07)
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『大宇宙の旅』

1950年に出版された荒木俊馬氏の宇宙解説書。松本氏が少年時代に最も影響を受けた本で、宇宙への夢を膨らませた本である。本書には、フォトン(光子)が女性に擬人化され、少年を宇宙に導く。このプロットは、まさに『銀河鉄道999』のストーリーそのものである。 また、本書のタイトル『時の輪の接する処』は、『大宇宙の旅』にヒントを得た「宇宙波動理論」に基づくとのこと。閉じた宇宙論によれば、宇宙は風船のように膨張している。風船の表面を宇宙の三次元空間とすれば、風船の中を横切るのがワープである。本来、「現在」目に見えている宇宙は「過去」を見ているのだが、ワープすることにより、かなたの「未来」を目にすることができる。

夜行列車により上京

松本氏が上京したのは、高校を卒業した年の1956年。福岡から東京まで夜行列車に上京した。不安と希望。この気持ちが星野鉄郎へと描写されていく。 松本市はこの上京の夜行列車で、謎の美女の幻影を見たとのこと。それが後にメーテルになる。メーテルは、星野鉄郎の幻影である。
「『銀河鉄道999』。9が三つでスリーナインだ」ー”未完成という意味だ。千になると完成した大人になる。だから999は青春の終わりだ、と説明した。後に映画化されたとき「さらば銀河鉄道999、さらばメーテル、さらば少年の日よ」とサブタイトルに書いたのは、そういう意味を含んでいたのだ。(176ページ)
スリーナインの物語は、まさに少年松本あきら(松本零士の本名)の物語である。

上京後の貧乏生活

上京後の貧乏生活を描写したのが『男おいどん』の世界だ。主人公、大山昇太は、松本零士氏そのものである。貧乏で風呂に入らなかったために、インキンタムシになり、押入れのサルマタにはキノコが生えた。『男おいどん』により、自分のマンガのスタイルを確立した。
「個性」や「創作」は目的意識があって初めて生まれてくるものだと思う。それをクリアして初めて、創作者となれるのである。何のために描くか、は何のために自分は生まれてきたのか、を考えるのと同じことでもあった。(145ページ)
大山昇太の子孫は、大山トチローとなり、『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』、『銀河鉄道999』に登場する。 それ以外にも、みーくん、トリさん、佐渡酒造、スターシア、森雪のモデルとなった人(&動物)が本書に登場する。

本書の目次

第一章 大東京四畳半時代 第二章 九州男児松本晟 第三章 漫画とメシの日々 第四章 『男おいどん』ここにあり 第五章 『ヤマト』発進

関連リンク

松本零士オフィシャルサイト 松本零士Encyclopedia 1/500 宇宙戦艦ヤマト (宇宙戦艦ヤマト)1/500 宇宙戦艦ヤマト (宇宙戦艦ヤマト)
バンダイ(2010-12-05)
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