AERAの「放射能がくる」炎上騒動で、雑誌メディアのTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアとの関わり方に二つの方向性が見えてきた。


一つは、ソーシャルメディアを通じてソーシャルメディア利用者と「双方向」に「対話」をしていくという方向性。週刊ダイヤモンドがよい例で、昨年1月のTwitter特集、今年1月のFacebook特集等、ソーシャルメディア上での対話を最大限制作に活かした。これは、ウィキノミクスグランズウェル等で述べられているピアプロダクション・新しい協業スタイルと言える。週刊ダイヤモンド以外にも、東洋経済COURRiER JAPONも、Twitterアカウントを見る限り、対話路線を取っている。


もう一つの方向性は、ソーシャルメディアに対して「情報提供」に徹するという方向性。「一方通行」であり従来の「広告」となんら変わらない。実際、AERA日経ビジネスのTwitterアカウントは、一切、返信を行っていない。Twitterユーザの声を聞いているかもしれないが、対話をする意思は感じられない。


先週末、AERAはTwitter上で炎上した。その際、AERAのTwitterアカウントで謝罪をして見せたわけだが(こちらこちら)、先週にはAERAホームページ上にあった謝罪文は既に消え、何事もなかったように、最新号の宣伝を行っている。果たして、AERA編集部がどのように反省したのか分からないが、この一連の行動から、Twitter利用者を無視しているようにも見えるし、また外部との対話を無視した閉鎖的な編集部であるという印象を持ってしまう。


aera-net

トップ記事から謝罪文が消された。


aera-net2

バックナンバーの「放射能がくる」の号の掲載箇所にも謝罪文はない。


なぜ、AERAはTwitter利用者を無視できるのだろうか?それは、日本におけるソーシャルメディア利用者が、依然キャズムを超えておらず、マイノリティに過ぎないからだろう。Twitterでの炎上は大多数のAERA読者には無縁であり、表面的には恐らく売上にも響かないだろう。そしてAERAの振る舞いは、大多数のAERA読者に対しては、「なかったこと」にしてしまった。最新号を読んでいないので、ひょっとしたら記事として掲載されているかもしれないが、少なくともホームページ上は「なかったこと」になっている。


しかし、このAERAの行動は、今後、二つの点でAERAは凋落していくだろうことを示唆している。一つは、潜在読者を失ったこと。ソーシャルメディアの利用率は若年層ほど高い。AERA読者の年齢構成は直接は知らないが、一般的に新聞の年齢別読者率は高齢者ほど高く、30代・20代になると低くなることから、朝日新聞が出身母体であるAERAの読者層も、新聞と同じような年齢構成と考えられる。今回Twitter利用者を無視したツケは、潜在読者の喪失という形でいずれ払わされることになる。


もう一つは、新たなビジネス機会を失ったこと。ソーシャルメディアを活用し、対話路線を取れば、読者との絆も培われ、固定ファンの拡大に繋げることができただろう。そのファン層をベースに新たなビジネスが展開できたはずである。


雑誌という紙媒体は、書店・コンビニ・キオスクなどを通じて販売される。よって出版社は直接顧客情報を入手することはできない。しかし、Facebookのファンページに見られるように、ソーシャルメディア上のファンの獲得は、年齢・学歴・勤務先・趣味といったファン一人一人の個人情報を入手することに他ならない。個人情報が入手できれば、きめ細かな情報提供ができ、これが新たな収益源になる可能性が高い。雑誌の電子化を率先しているコンデナスト社(ファッション誌VOGUE、GQの出版元)日本法人の社長がそう述べたことを直接聞いている。雑誌という紙媒体が生き残るだけでなく、成長できる戦略の方策の一つと言ってよい。


先にインターネットの潮流に飲み込まれた音楽業界の動きが参考になる。Appleらによる音楽ダウンロード販売によって、CD媒体の音楽販売は壊滅的な打撃を受け、業界全体、大幅に縮小した。アメリカのタワーレコードは倒産し、渋谷のHMVも閉店した。にも関わらず売上を伸ばしている音楽レーベルがある。AVEXである。業界全体が縮小する中、なぜ売上を伸ばすことができるのか?AVEXのセグメント別売上高を見ると明らかである。過去5年間、売上全体に占めるパッケージ(音楽CDや映像DVD・BDなど)販売の割合は65%から41%に大幅縮小したのに対し、コンテンツ制作、ネット事業、ライブ事業は増加しており、売上全体は年率平均7%の割合で伸ばして来た。これは固定ファンの囲い込みにより、ネットやライブを収益源に変えたことに他ならない。


同じ構図が雑誌などの紙媒体にも当てはまる、というのは言いすぎだろうか?固定ファンを獲得し、ネットやライブ(ここではセミナー等)によって収益源の裾野を広げることができるのではないだろうか?


今回、自らの取った行動によって、AERAは潜在顧客の獲得、新たなビジネス機会の創出に背を向けてしまった。


avex

出典:エイベックス・グループ・ホールディングスのIR情報



本文中で紹介した書籍や雑誌

ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ
著者:ドン・タプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ
日経BP社(2007-06-07)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (Harvard Business School Press)グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (Harvard Business School Press)
著者:シャーリーン・リー
翔泳社(2008-11-18)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
週刊 ダイヤモンド 2011年 1/29号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2011年 1/29号 [雑誌]
ダイヤモンド社(2011-01-24)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
週刊 ダイヤモンド 2010年 1/23号 [雑誌]週刊 ダイヤモンド 2010年 1/23号 [雑誌]
ダイヤモンド社(2010-01-18)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
週刊 東洋経済 2011年 3/26号 [雑誌]週刊 東洋経済 2011年 3/26号 [雑誌]
東洋経済新報社(2011-03-22)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る
COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2011年 05月号 [雑誌]COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2011年 05月号 [雑誌]
講談社(2011-03-25)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る



↓↓参考になったらクリック願います↓↓
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村