暴落が起きることを前提に分析
なかなか刺激的なタイトルの本だが、別に煽っているわけではない。また、「暴落後」を書いているのであって、「日本経済が暴落する!大変だ!」ということよりも、もはや日本経済の暴落が起きることを前提に、暴落までの道筋を分析し、暴落後にどのように日本を復興させるか?を解説した書である。読書感としては、以外とあっさりしていたと感じる。
2012年に訪れる欧米の転機
さて、本題。現在、EUは危険水域にあり、本書執筆時期よりも円高に振れている(1月27日時点で101円)。2012年にイタリア・スペインの破綻が回避できるかどうかがポイントになる。また、2012年は年末にはアメリカで大統領選挙が行われる。このまま行くと、大きな政府を標榜するオバマ民主党政権や破れ、小さな政府を標榜する共和党に取って代われる可能性がある。
2013年、日本は危機に立たされたほうがよい?
本書は、EUの危機回避、アメリカの共和党の勝利により、ヘッジファンドの矛先が日本へ向けられ、2013年には日本国債が暴落、日本が危機に立たされると予測している。2013年に危機にならず、そのままずるずると2015年、2020年と財政赤字を膨らまし、さらに状況を悪くするよりも、2013年に一端危機に陥り、起死回生をしたほうが日本のためになると筆者は説く。
危機から一転、起死回生なるか?
2013年の日本での危機に対する処方箋は2つ同時に行う必要があると筆者は述べる。消費税の20%へアップと法人税の40%から20%への切り下げである。年金などの社会保障費は全額消費税で賄うとしている。この二つの処方箋により、日本は危機を回避し、成長へ復帰できる可能性も出てくると筆者は説く。
日本経済を理解する入門書
既に多くのAmazonレビューが寄せられているとおり、概ね、危機に至る道筋の洞察には賛同できるが、処方箋については短絡的過ぎる(本書に限らず、経済本の処方箋はほとんど当てにならないと思う)。しかし、日本経済は破綻することを唱えてたり、日本は対外債務が少ないのでいくらでも国債を発行できたりと、トンでもない経済本が多い中、本書は世界経済、そして日本経済に対する洞察が深く、かつ非常に分かりやすく解説しており、漠然と日本経済に行く末に不安を感じておられる方々には、現在の日本経済がいかなる状況にあるのかを理解する一助になるのではないだろうか?
<目次>
第1章 欧州財政危機の未来
第2章 欧州の次に忍び寄る日本の財政危機
第3章 日本は国債バブルの真っただ中
第4章 ヘッジファンドが日本国債の暴落をもたらす
第5章 大暴落後、日本はこう変わる
第6章 日本を豊かにするには、こうしなさい!
関連書籍
この本は世界情勢を理解するのに、大変役に立った。アメリカは一枚岩ではないことがよく理解できた。本書は短絡的な処方箋は提示していない。世界の動向は、いくつものオプションが折り重なって構成されていることが理解できる。
コメント