「日本史が今、早急に書き直されなくてはならない」という理由を記した、私からあなたへの「あるメッセージ」にたどりつく時まで、その2点を念頭において読んでみてください。


冒頭にそう始まるハーバード大学で日本史の教鞭をとるDr.Kitこと北川智子氏の著書『ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)』。その「あるメッセージ」こそが本書の主題であるが、はからずもその主題を真剣に考えるチャンスが到来したようだ。それは3つの外患によって引き起こされた。


  • 竹島問題:イ・ミョンバク韓国大統領の竹島上陸。野田首相は竹島を韓国による「不法占拠」と断罪した。日本国首相によるこのような強い口調での竹島問題の言及は、戦後初めてではないだろうか?
  • 従軍慰安婦強制連行問題:イ・ミョンバク韓国大統領が天皇陛下に謝罪を要求した。
  • 尖閣諸島問題:香港活動家らが尖閣諸島へ上陸した。


これまで日本政府は、その場限りの謝罪外交を繰り返してきてしまった。しかし残念なことに、ほとんどの日本人はそのことに無関心だったのではないだろうか?たとえば、竹島が韓国軍により実効支配されているようなことも、ほとんどの日本人は知らなかったのではないだろうか?少なくとも、私自身はそのことを誰かと話した記憶はない。ほとんどの日本人が無関心だからこそ、政府の対応もええかげんだったのではないだろうか?


■目次■

  • まえがき
  • 第一章 ハーバードの先生になるまで
  • 第二章 ハーバード大学の日本史講義1 LADY SAMURAI
  • 第三章 先生の通知表
  • 第四章 ハーバード大学の日本史講義2 KYOTO
  • 第五章 3年目の春
  • あとがき


北川智子さんはこれまでハーバード大学で2つの講義の教鞭をとっている。目次にあるとり、『LADY SAMURAI』そして『KYOTO』である。歴史とは往々にして男性目線で描かれている。NHK大河ドラマでも『篤姫』や『江~姫たちの戦国~』、来年の『八重の桜』のように、昨今、女性目線のものが増えてきている。本書の読書前は「女性目線で描きなおす歴史書の一種」だろうと思っていた。『KYOTO』も「みやびな古都」を教えるのだろうと思っていた。


しかし、ちがった。


本書の主題は「日本のアイデンティティ」、「日本人の自覚」の再構築である。ハーバードは、アメリカのエリートのみならず、世界のエリートたちが集う。そのハーバードにおいて、日本史を教えることは最強の外交とも言える。課題もたくさんあるが、彼女はそれを自覚した上でハーバードで教鞭を取っているのではないだろうか?


経済のバブルよりずっと昔の敗戦時に、日本にあった誤ったイデオロギーのバブルは崩壊し、それからずっと日本のイデオロギーは空っぽの状態が続いています。あなたが住む日本とはいったいどんな国で、世界の人々にどんな見方をしてほしいのか。日本のアイデンティティーを確固たるものにする歴史叙述が、緊急に必要とされているのです。

日本史が国史として勉強される以外に、海外の人たちにとっての世界史として勉強される時代です。日本とは何か?その質問に十分答えられるような、外交的な歴史叙述を日本内外で語り始めていかなくてはならない時が来ているのです。


私自身、竹島は日本の領土であり、従軍慰安婦強制連行は存在しないという立場を取ってきた。しかし、これまでそのことを言及することはほとんどなかった。というより、多くの日本人と同様、避けてきた。たとえ韓国からのクレームが度重なろうとも、日韓が文化的・経済的交流を深め、未来を築いていけるだろうと考えていた。ヒュンダイ建設会長を務め経済に明るいイ・ミョンバク大統領の登場も、そう期待できるものがあった。


しかし、甘かった。


この大統領は愚かにも自国の選挙のために二つの問題を蒸し返してしまった。しかし、結果的に、多くの日本人がこれまで無関心であった問題に目ざめた瞬間とも言えるのではないだろうか?野田首相の「韓国による不法占拠」という発言は、世論の変化を察知してのことではないだろうか?


はからずも、「日本のアイデンティティ」を再構築するきっかけになるのではないだろうか?「日本のアイデンティティ」とはなにか?そう考えるきっかけをつかむためにも、本書を薦める。


■関連書籍


「日本のアイデンティティ」はどこへ行ったのだろうか?言わずもがな、太平洋戦争の敗戦で失ってしまった。最近読了した本でそのことを言及している本がいくつかあるので紹介する。



内田樹氏は、「昭和人」は昭和20年8月15日に「真ん中でぽっきり折れた」と述べている。


13歳からの道徳教科書
道徳教育をすすめる有識者の会・編
扶桑社 ( 2012-02-10 )
ISBN: 9784594065522


北尾吉孝日記で見つけた。いろんな著作のレファレンスとも言える。いくつかは原著も読んでみたい。



生きるうえで最も大切なことなのに、戦後日本では教えられなくなった「修身」


戦前の教科書「尋常小学修身書」四~六学年のテキストを、軍国主義的な内容など「毒」の部分を取り除いて編集されたのが本書である。東日本大震災で日本人の冷静な行動が世界から賞賛されたのだが、日本人のその精神性はどこに依拠しているのか、日本人自身が自覚できていない。直接的に「修身」という課目が教えられなくなった現在でも、いくつかの徳が日本人の精神に警鐘されているのではないだろうか?



民主党が政権を取る前に書かれた野田首相の唯一の著書。首相の父が自衛官であることもあり、彼の外交姿勢が自民党と変わらない保守派であることがよく分かる。外交音痴な鳩山が沖縄からの基地移転を行おうとしたが、野田首相はそのような愚挙に出ることはないことが分かり、外交を任せても安心できる首相だ。今回、鳩山や菅が首相だったら、もし小沢一郎が首相だったら、「不法占拠」というような強い口調には至らなかっただろう。



ひとつだけ補足したい。「日本のアイデンティティ」を再構築しながらも、「日韓関係」の未来を築いていく必要がある。これ以上関係を悪化させてはならない。日韓が争う様子を笑ってみている国があることを忘れてはいけない。極東を再び不安定な地域にさせかねない。尖閣諸島問題は、ひとまずクロージングするのが吉である。



韓国人でありながら日本に帰化した。韓国の反日の姿勢こそが間違っていると批判している。




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