歴史は科学


一言「歴史」と言っても、「歴史」とは実証された部分と後の世の人間の解釈から構成されます。実証主義を採っている点で、私は「歴史」を科学だと思っています。


たとえば貝塚というものがあります。同位体炭素原子の半減期から、何千年前の遺跡が特定でき、その時代にそこで貝を食べていた人がいてそこに貝殻を捨てたというのが事実です。そして、ここからは解釈になりますが、貝塚はさほど当時の海岸線から遠くないところにあったであろうことは容易に推測できます。縄文時代というのは今より推移が高かったので、現在では海岸線から離れたところに貝塚がある場合もあります。


そして、このようにも考察することができます。貝塚より海側に住めば津波に襲われる可能性がある。海の反対側に住めば津波に襲われる可能性は低い。


思いて学ばざれば即ち殆し。


インターネットが普及してより今日まで、特にネット業界ではドッグイヤーと呼ばれるようになり、社会の変化が速くなったと言われることがあります。また、今日、さまざまなテクノロジーが発達した結果、近代以前の歴史を振り返って現代人が学ぶことがあるのだろうか?と疑問を持つ方もおられるやもしれません。


私の答えは明確です。NOです。社会の変化は我々が思っているほど速くはなっていないし、原始時代の社会のあり方から学ぶことはたくさんあります。


人間は知的生命体である以前に動物です。感情の多くは、人間の知性を司る大脳新皮質ではなく、ほかの哺乳動物も持っている大脳辺縁系が司っています。人間の感情や行動が社会を形成している以上、原始社会を紐解くことにより、現代社会をも考察しなおすことができます。


歴史は科学です。歴史を否定することは科学を否定することになります。科学の発達により人類が文明を築いたように、歴史を理解することもまた、人類の進歩に多いに役立ちました。いや、歴史理解がなければ、人類の進歩はなかったと言うべきかもしれません。


『昨日までの世界』

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来
ジャレド・ダイアモンド
日本経済新聞出版社 ( 2013-02-26 )
ISBN: 9784532168605

昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来
ジャレド・ダイアモンド
日本経済新聞出版社 ( 2013-02-26 )
ISBN: 9784532168612


ジャレド・ダイアモンド氏の著した『銃・病原菌・鉄―1万3000年にわたる人類史の謎』、そして今回紹介する『昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来』は、まさにそんな歴史の本です。


ジャレド・ダイアモンド氏は進化生物学者で、1960年代よりニューギニアを舞台にフィールドワークを行っていました。ニューギニアの山岳民族は1930年代にヨーロッパ人に「発見」されるまで、原始的な生活を営んでいました。前著『銃・病原菌・鉄』では、なぜ西洋で文明が発達しニューギニアでは文明が起きなかったのか?を考察し、そして『昨日までの世界』では、「昨日までの世界」、つまりニューギニアやアマゾンなど、つい最近まで原始的な生活を営んでいた社会を理解・分析することにより、われわれ文明社会における根源的な問題を解決する糸口になるのではないか?と多くの示唆を与えてくれます。


ジャレド氏がニューギニアの奥地に入り込み、ニューギニア高地人の一挙手一投足を観察したのは、まさに実証主義であり、科学です。


見知らぬ他人に遭遇した場合、どのように振舞えばいいのだろうか?戦うのか?それとも友好関係を築けるのだろうか?なぜ人は贈り物をするのだろうか?


貨幣経済が発達する前の原始社会では、物々交換が行われていただろう、ということがよく言われます。物々交換とは、相手にとって不要なものと自分にとって必要なものを交換することだと言われますが、しかしそんな都合よく、両者の利害が一致するような相手が見つかるのでしょうか?


歴史を考察すれば未来が見えてくる


本書は、物々交換の理由は経済的価値からくるものではなく関係構築にあると言います。


彼らのあいだで重要だったのは、物々交換が彼らの個人的関係の強化に役立つことだった。互酬を繰り返すことは、関係性強化に繋がる。

物品の必要性よりも関係性強化伝統的社会では、政治的な理由や社会的な理由から、交易者間の関係を維持したいがために、その物品がいずれの側にとっても自前で調達可能な物品であるにもかかわらず、取引の対象となることもまた多いのである。


日本の贈答文化を考えると、まさに符合します。中元・歳暮は、決して、相手が明確に欲しているものを贈ることではなく、どちらかというと関係構築のために贈ります。


私はFacebookもTwitterも使いこなしていますが、あちこちからソーシャルシフトしていくという声が、喧しいです。しかしその本質からして、実は現代社会は原始社会となんら変わりません。


「今、新しい社会の動きが来ているぞ!」、そう思うのなら、歴史書を紐解いてみることをお勧めします。きっとなにかヒントがあるでしょう。


『昨日までの世界』の目次

上巻目次

日本語版への序文

プロローグ 空港にて

第1部 空間を分割し、舞台を設定する

 第1章 友人、敵、見知らぬ他人、そして商人

第2部 平和と戦争

 第2章 子どもの死に対する賠償

 第3章 小さな戦争についての短い話

 第4章 多くの戦争についての長い話

第3部 子どもと高齢者

 第5章 子育て

 第6章 高齢者への対応ー敬うか、遺棄するか、殺すか

下巻目次

第4部 危険とそれに対する反応

 第7章 有益な妄想

 第8章 ライオンその他の危険

第5部 宗教、言語、健康

 第9章 電気ウナギが教える宗教の発展

 第10章 多くの言語を話す

 第11章 塩、砂糖、脂肪、怠惰

エピローグ 別の空港にて

謝辞

訳者あとがき

参考文献


ジャレドの前著『銃・病原菌・鉄』

ナショナル ジオグラフィック〔DVD〕 銃・病原菌・鉄[軽装版]
ナショナル ジオグラフィック
日経ナショナル ジオグラフィック社 ( 2011-06-09 )
ISBN: 9784863131491


このDVD、子どもと一緒に見てみたい。




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