<目次>
  • はじめに
  • 第一章 海軍こそが主役
  • 第二章 北樺太石油と外交交渉
  • 第三章 満洲に石油はあるか
  • 第四章 動き出すのが遅かった陸軍
  • 第五章 対米開戦、葬られたシナリオ
  • 第六章 南方油田を奪取したものの
  • 第七章 持たざる者は持たざるなりに
  • 主な引用・参考文献



海軍はバカか?

本書を読んだ率直な感想です。

この手の本を読むと、実に腹立たしくて仕方ありません。


陸軍首脳がバカで無能だということは分かっていました。

海軍は陸軍と比して、優秀だと思っていました。

しかし、その理解は間違っていました。

海軍首脳もまたバカで無能でした。


そして、この本は、安易に反原発を唱える方、安全保障関連法に反対を唱える方に一読をお薦めしたい。骨太のエネルギー戦略がなければ、国を危うくすることを理解するために。

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日本は石油不足で戦争に敗れた特攻隊を見送る女学生達

image via Wikipedia lic : P.D.

本書の著書の狙い


本書の著者の狙いはただ一つです。日本人のエネルギーリテラシーを高めること。著者は冒頭、このように述べます。

われわれ日本人は三度もエネルギー危機を経験しているのに、なぜエネルギーリテラシーが低いのだろうか、と述べた。近くは平成23(2011)年の東日本大震災、そして昭和48(1973)年の第一次オイルショックである。さらにさかのぼれば、石油供給をたたれたがゆえに開戦に踏み切った太平洋戦争がある。 (P11)


リソースプラニング不在


しかし読後感として痛感させられるのは、戦略不在、リソースプラニング不在です。


太平洋戦争は、南方の石油奪取が目的であったこと、その背景として、石油輸入先の大部分を担っていたアメリカから挑発的に禁輸措置を食らってしまったこと、そして、戦争後期には、石油の備蓄が不足し、片道燃料のみで特攻隊が形成されたこと、こうした事実は知っていました。しかし、それ以前に、リソースプラニングが全くできていなかったのは唖然です。


陸軍もリソースプラニングが弱く、日本から十分な食料を支給せず、現地調達を強いました。結果的に、陸軍の死者は、戦死者よりも飢死のほうが多いくらいです。


しかし、海軍のリソースプラニング、つまり燃料計画の杜撰さはどういうことか?戦艦を作っても、戦艦を動かす石油のことをあまりにも蔑ろにしていたとは。


その無計画さ、勘弁してくれ。遊びじゃないんだから。

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1910年代に敗け始めていた


猪瀬直樹氏は、1941年開戦前の夏には敗戦が確定していたことを著書で述べました。しかし本書で述べている事実を総括すれば、1910年前後に敗け始めていたことになります。


  • 1910年前後、イギリスとオランダは艦船のエネルギー石炭から石油に舵を切る。アメリカのスタンダード石油を猛追すべく、ロイヤル・ダッチとシェルが合併し、アングロペルシアが半国営になる。石油を持たざるイギリスとオランダは、着々と石油確保を始める。
  • 1933年、日本政府はようやく「石油国策実施要項」を定める。
  • 1925年、日ソ基本条約締結後に、北樺太の油田を分担して操業を始める。日本が先行するが、1944年にはソ連に譲渡してしまう!18年間で日本側の生産量は214万トン(252万㎘)。需要の約5%を賄っていた。一方ソ連は、1945年には75万トンの生産に至り、最盛期には260万トンの生産に至る!
  • 1929年より満洲にて油兆地調査を開始し、1940年頃まで探鉱を試すものの、最新技術を持っておらず、掘り当てられなかった。アメリカから最新技術を輸入すればよかったものの、軍事機密の漏えいを心配し、アメリカの技術を使うことを拒否。戦後、ソ連の指導の元中国政府が掘り当て、現在、中国の原油生産量は2億トンを超える。
  • 1940年、オランダがドイツに占領されたことにより、オランダ領インドネシアに目を向ける。


このような状況で、なぜ、戦争に踏み切ったのか、理解に苦しむが。。。


結局、艦船を作る計画があっても、その燃料計画は、英蘭に対し20年以上も遅れてしまいました。20年のビハインドは、決定的な技術力の差を産みます。1937年ごろまでであれば、アメリカから技術輸入することが可能であったでしょう。そうすれば戦争せずに済んだはず。


海軍はバカか?

「整備局燃料課の作業によれば、陸軍地域からの取得見込は、第一年から第三年にかけてそれぞれお30万㎘、100万㎘、250万㎘である、と説明した。

これに対して海軍からは、(中略)海軍もボルネオその他でおおいに努力するからその見込量も合せて第2年は200万㎘、その割合でいけば第3年は450万㎘は大丈夫だろう。第一、そうでなければ何のために南進するのか意味がないじゃないか、との発言があり、私にも拒否する根拠はなかった。

企画院、商工省サイドはこれに意見をさしはさむ立場ではなかった。これは統帥事項なのだ」 (P189)

新米技術将校が荒唐無稽な前提条件に基づいて作成した南方からの取得見込数量が、さらに何の根拠も示されず海軍によってほぼ倍増されて、対米開戦最終意思決定の根拠のひとつとされてしまったのだった。 (P190)

11月5日の御前会議に提出された石油リソース計画は、27歳の新米技術将校が立てた計画をさらにど素人の海軍が勝手に上乗せした数字で提出されました。


もう一回言います。

海軍はバカか。

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関連書籍

陸軍と海軍のバカさ加減は違うようです。陸軍のバカさ加減を知るには本書がお薦め。


昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)
猪瀬 直樹
中央公論新社 ( 2010-06-25 )
ISBN: 9784122053304

1940年から1941年にかけて、戦争シミュレーションが行われ、その結論は敗戦でした。『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』でも、別のシミュレーション結果(「秋丸機関」)に言及しています。やはり敗戦です。




石油により太平洋戦争に敗けた様は、史実をベースに書かれた本書が分かりやすいです。

出光佐三のノンフィクションは、以下がお薦め。


イギリスで石炭から石油へと政策転換させたのが、この人です。なぜこのような聡明な政治家から日本から出てこないのでしょうか?



戦略立案力・リソースプラニング力の差というのは、植民地経営の経験の差ではないかという気がしてなりません。



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