Arsene Lupin

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千年読書会からの8月の課題図書です。モーリス・ルブラン(著)のアルセーヌ・ルパンシリーズの『奇巌城』、菊池寛(翻訳) 。


アルセーヌ・ルパンシリーズは、これまで読んだことがありません。そこで、課題図書を読む前に、ルブランの最初のルパン作品のほうを先に読みました。



『怪盗紳士 怪盗ルパン』/怪盗ルパンの誕生秘話

怪盗紳士    怪盗ルパン 文庫版第1巻
モーリス ルブラン, 南 洋一郎
ポプラ社 ( 2005-02 )
ISBN: 9784591085264

<目次>

・大ニュース・ルパンととらわる

・悪魔男爵の盗難事件

・ルパンの脱走

・奇怪な乗客

・ぼくの少年時代

解説 砂田弘


こちらはポプラ社版で、モーリス・ルブラン(原作)、南洋一郎(文)という位置づけになっています。翻訳ではなく、原作を元にした意訳したということでしょうか。舞台が20世紀初頭のフランスということもあり、どうしても日本人のなじみのないエピソードが出てきてしまうため、そこは日本人向けにアレンジしたようです。


アルセーヌ・ルパンシリーズは、ポプラ社版で全部で20巻あるようです。その第一巻は5作品が掲載されていて、1作目から3作目はひとつのストーリーとなっています。まさに、怪盗あらわる、という感じです。4作目は義賊として現われ、5作品目は、ルパンの少年時代の回想を、作家ルブランがインタビューをしているという形式を取ります。


ルパンの母は貧しく、最初の盗みは、幼少期に母を助けるためでした。そんな母の背中を見て育ったルパン少年はいつしか、貧しい者たちを助けるために、貧しき者を搾取して蓄財している資本家から財産を奪い取り、貧しい者たちに還元することを始めたのでした。


ちなみに、2作品目の『悪魔男爵の盗難事件』ですが、この作品のストーリー展開が、江戸川乱歩の怪人二十面相 対 明智小五郎の物語にもそのままそっくり出てくるではありませんか。当時はそんなことを言う人はいなかったのかもしれませんが。。。。正直に申しまして、盗用です(笑)。


この5作品目と『奇巌城』の間は、まだ何作品かあるようです。作品リストはWikipediaに列挙してありますので、ご参照ください。



『奇巌城』~スケールの大きなストーリーとハイテク


奇巌城 (パール文庫)
モーリス ルブラン
真珠書院 ( 2015-04 )
ISBN: 9784880096148

<目次>

一 夜半の銃声

二 怪中学生

三 惨死体

四 侠少年対怪盗

五 奇巌城

解説


さて、そして本題となる『奇巌城』です。フランス語でL'Aiguille creuse(レイギュイユ・クリュース;空洞の針)。ぜ絶壁の海岸に針のような尖塔が奇巌城です。あまり書きすぎるとネタばれになってしまいます。推理小説の書評の難しいところです。差し障りのない範囲で試みます。


『怪盗紳士 怪盗ルパン』が短編集であったのに対し、『奇巌城』は全体でひとつの作品になっています。私が読んだパール文庫版で、本編わずか134ページしかありませんので、比較的に簡単に読めます。


『奇巌城』は、5章構成になっていますが、奇巌城は最後の章まででてきません。また、主人公はどちらかというと17歳のボードルレ少年です。これまた、少年探偵ものというストーリーは、江戸川乱歩シリーズに出てくる小林少年や、『名探偵コナン』を思い出させるのですが。。。江戸川乱歩だけでなく、コナンの作者もまた、ルブランの影響を受けたのでしょうか(未確認情報)。


本作品は、フランス革命以前のルイ14世の時代から伝わるフランス王家の秘密を扱っており、かなりスケールの大きなストーリーになっています。また、当時にハイテク技術である「電話」の活用など、その後の推理ものに多大な影響を与えているように感じます。


映画『007』シリーズや『ミッション・インポッシブル』でも、ハイテク技術がふんだんに使われていますよね?20世紀初頭というまだ映画が普及する前の時代、ルブランのルパンシリーズは、大いに当時の世界の人々を魅了したに違いありません。そして、われらが日本の『ルパン三世』も、おおいにルブランの影響を受けたのでしょう。


関連書籍


江戸川乱歩の怪人二十面相シリーズの第一巻。この本の第二話が、まさにルパンの『悪魔男爵の盗難事件』とそっくり。富豪が地元にきていた探偵に財宝の守りを依頼するが、しかしその探偵は怪盗が変装した姿だった、という話の展開が、まったく一緒です。



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