<目次>
はじめに マネジメントの時代がやって来る
第1章 突然辞める若手社員
第2章 なぜ若手社員が「謎の生物」に見えるのか?
第3章 マネジャーは部下の“何を”見ればいいのか
第4章 「今いる」部下を変える
第5章 部下を伸ばすほめ方・叱り方
第6章 上司はつらいよ
おわりに 意志の力や人格は関係ない
本書2本目の書評です。前回は、若手社員が「謎の生物」に見える背景について述べました。じゃ、どうするのかというと、思考や動機ではなく、「行動」に注目しましょう、ということでした。
「行動」に注目する
私自身、とかく「動機」にとらわれがちでした。しかし本書で述べているように、自分の動機はともかく、他人の動機を変えさせることはできません。なので、動機は一旦脇においておき、「行動」に注目しましょうというのは、非常に合点がいきます。
さて、ここで注目すべき行動とは、ビジネスの成果に結びつく行動のことです。成果を出す優秀な人材の行動を分析し、その行動を他の社員も真似ができれば、少なくとも平均以下のパフォーマンスしか出せない社員を平均並みに上げることは可能です。そして、行動し続けても結果が出ない行動は望ましくないものですので、排除していく必要があります。
では、その行動とはなんぞや?ということになります。
行動の定義
行動科学マネジメントでは、行動を以下のように定義しているとのこと。頭文字を取って「MORSの法則」と言います。
- Measured(計測できる)
- Observable(観測できる)
- Reliable(信頼できる)
- Specific(明確化されている)
「科学」というからには、「行動科学」も、計測でき、観測でき、再現性があり(信頼でき)、明確化されている必要があります。
上司に問われるのは言語化・形式知化能力
我々の経験や行動というのは、実に曖昧模糊としています。暗黙知というやつです。できる社員の経験値、上司の指示を、より的確に行動に落とす必要があります。端的に分かりやすい例が、営業であれば、売上達成の前にすべきこと、顧客接点を増やす、顧客の予算を獲得する、というのが、計測でき観測できる行動指標になるはずです。
的確な指示を与えるためには、暗黙知を言語化・形式知化する必要があります。よい選手がよい監督になれるわけではありません。よい選手のスキル・行動は暗黙知のままです。それを形式知化できる人が監督にふさわしい、上司にふさわしい人ということになります。この言語化・形式知化する能力というのは、容易につくものではなく、ひとつの方法としては、異動をさせ、いろんなことを経験させるのが常套手段であるように考えます。
結果がすぐに出せる、メリットがある、報酬がある
そしてもう一つ大切なことは、行動の継続性です。ある行動の結果が自分にとってメリットがあれば、人はその行動を繰り返します。ですので、結果が出るまでに時間を要する行動だと意味が失われてしまいます。その場合は、「行動と結果」の単位を小さく分割する必要がありそうです。
そして、結果にはなんらかの報酬があるといいです。しかし、結果から報酬まで時間が空くと、文字通り間抜けになり、日本のボーナス制度は意味がないと本書では論じています。
報酬には、受け手それぞれの趣向があります。成果主義はうまくいきませんでした。本書では、近年の新しい報酬体系として、トータル・リウォードという考え方を紹介しています。金銭面以外の報酬には以下の6点があります。
- A(Acknowledgement)=感謝と認知
- B(Balance of work and life)=仕事と私生活の両立
- C(Culture)=企業文化・組織の体質
- D(Development Career/Professional)=成長機会の提供
- E(Environment Work Place)=労働環境の整備
- F(Frame)=具体的行動の明確な指示
関連書籍
行動観察の具体例が豊富にまとめられていて、わかりやすいです。
以前、研修を受けた際の研修講師だった舞田氏の著書です。こちらも行動科学の本です。
人間も動物です。動物を観察することにより、人間のことも分かってきます。
この本はまだ読んでいませんが、仮想本棚に入れたままでした。「メリットの法則」とは、『「辞めさせない」マネジメント』でまさに述べている「自分にとってメリットのある行動を繰り返す」のことですね。
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