Black Box
伊藤 詩織
文藝春秋 ( 2017-10-18 )
ISBN: 9784163907826

<目次>
  • はじめに
  • 第1章 あの日まで
  • 第2章 あの日、私は一度殺された
  • 第3章 混乱と衝撃
  • 第4章 攻防
  • 第5章 不起訴
  • 第6章 「準強姦罪」
  • 第7章 挑戦
  • 第8章 伝える
  • あとがき


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山口敬之氏の本を愛読していた私は、2017年5月29日、山口氏が準強姦罪犯だという告発を受けた時、耳を疑いました。山口氏と言えば、安倍晋三首相にとても近い、近すぎるジャーナリストです。


当時、森友・加計問題と同じく、また民進党ら左翼勢力がくだらないことを政局として利用しているのではないかと疑いました。しかし、その疑いは誤りでした。疑って申し訳ありませんでした。



批判の鉾先


本書の狙いは、山口敬之氏を糾弾することではありません。左翼勢力とも関係ありませんし、安倍政権を追い落とすためのものでもありません。それが本書を読んだ率直な印象です。


本書の批判の鉾先は、警察、司法・法制度、性犯罪ホットライン、病院などです。性犯罪被害者を守る仕組みが充分ではありません。


性暴力被害者のNPOに電話で問い合わせれば、面談に来なければアドバイスすら拒絶されたり、警察に行けば、受付カウンターの担当者が要領を得ないため、周囲の耳目がある中「強姦被害に遭った」ことを告白せねばならなかったり、警察の捜査官が男性だったり、捜査官の第一声が「捜査するのは難しいよ」と落胆させるようなことを平気で言ったり、NPOも病院も警察も、当てにはなりませんでした。本書に書かれている内容のざっくりと半分ぐらいはそんな内容でしょうか。


彼女が会見に臨み、本書を上梓した目的はただ一つ。そのような社会の仕組みを変えたいということに尽きます。


私が会見をしたのは、今後彼女や私の大事な人たちを、私と同じような目に遭わせたくないという気持ちに尽きる。 (P222)


私も四人の娘の父親です。他人事ではいられません。


被害者が安心できる受け入れ体制を


強姦だけでなく痴漢などの性犯罪被害に遭った時、初動が大切ですが、詩織さんの場合もパニックになっており、初動が遅れてしまいました。初動が遅れると証拠(血液・精液・DNA鑑定等)が取れなくなります。結果、彼女の場合は、山口氏が性交渉を認めているため、物的証拠は不要でしたが。


誰も被害に遭うことを想定した教育を受けていないため、被害に遭ってしまった場合に咄嗟の行動ができません。すぐに警察に通報する、すぐに病院に駆け込む等必要でしょうが、先に述べた通り、その警察や病院側に受け入れるための体制がないというのが実情です。被害者が受ける屈辱・忍耐は相当なものです。


詩織さんの場合、親の反対を押し切り、自力でアメリカへ留学するなど、かなりの行動力のある方です。そんな彼女でさえ気後れしそうな被害の申し出を、普通の女性なら気持ちが萎えてしまうでしょう。


精神的に大変な境遇にある被害者を、安心して受け入れられる体制が、病院や警察に必要です。


中村格氏は説明を


さて、山口敬之氏が犯罪者であったかどうか、その判断は私は保留します。山口氏の弁によれば、詩織さんが山口氏のベッドに入ってきたとのこと。その証言の真偽は測りかねますが、疑わしきを罰せずとも言います。


しかしそれでも捜査はすべきですし、逮捕機会があったのなら、逮捕すべきだったでしょう。逮捕中止を指示した中村格さん(当時刑事部長)。説明責任が大ありです。


刑事部長が逮捕中止を指示し、その説明責任を果たさないのは、警察機構そのものの信頼を揺るがすもので、言語道断です。


本書の中には、桶川ストーカー殺人事件の犯人を突き止め、警察の隠蔽を暴いたジャーナリストの清水潔氏が登場します。詩織さんには清水氏と協力し、警察の隠蔽を暴いて欲しいものです。


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