<目次>
- はじめに
- 第一章 溶けてゆくJR北海道
- 第二章 JR北海道と地方消滅
- 第三章 国鉄がつくったローカル線問題
- 第四章 国鉄時代の北海道の鉄道
- 第五章 国鉄解体とJRグループの誕生
- 第六章 JR北海道が輝いていた時代
- 第七章 JR北海道はどこで道を誤ったのか
- 第八章 JR北海道復活への低減
- あとがきにかえて
本書を読んで、JR北海道の危機は想像していたより根が深いことが分かりました。理由は2点。
- 高速道路網と対等な競争になっていない。JRが不利。
- JR貨物の負担低減のため、本州のJR並にJR北海道に負担が強いられている。
経営数字
JR北海道のサイトから、経営数字を見てみます。
2016年11月発表時点の2016年度(平成28年度)の収支は以下のとおり。
営業収入 :920億円
営業支出 :1380億円
営業損益 :▲460億円
営業外利益:280億円
経常損益 :▲180億円
営業外利益のうち基金運用益270億円
基金運用益について、JR発足時に、北海道・九州・四国は経営安定基金を設けてもらいました。設立当初より赤字が見込まれていたためです。当時は高金利につき400億円以上の運用益がありましたが、現在は低金利ということもあり、270億円に留まっています。
輸送密度推移
本書に1975年と2015年の輸送密度の対比が載っていましたので引用します。
輸送密度 | 1975年 | 2015年 | 比率 |
宗谷本線 | 1878人 | 403人 | 21.5% |
根室本線釧路以東 | 1879人 | 449人 | 23.9% |
根室本線滝川~富良野 | 6608人 | 488人 | 7.4% |
石北本線 | 4357人 | 1141人 | 26.1% |
釧網本線 | 1817人 | 513人 | 28.2% |
根室本線滝川~富良野間は例外で、この間に石勝線が開通し、札幌から帯広・釧路へ向かう特急列車が滝川~富良野を通らなくなりました。この区間を除くと、ざっくりと、40年間の間に7割から8割も減少していることになります。
北海道の地方の人口減少
ふと、人口推移が気になりましたの、Wikipediaで調べてみました。札幌市と、根室本線・石北本線・宗谷本線の終着の根室市・網走市・稚内市の人口です。
1975年 | 2015年 | |
北海道 | 5,338,206人 | 5,381,733人 |
札幌市 | 1,240,613人 | 1,952,356人 |
根室市 | 45,817人 | 26,917人 |
網走市 | 43,825人 | 39,077人 |
稚内市 | 55,464人 | 36,380人 |
見ての通り、北海道全体は横這い、札幌市は大きく伸び、地域の中核都市が大きく下げています。
鉄道輸送人口の減少理由の一つは、札幌一極集中が進行し、それ以外の地域で急速に過疎化が進んだことが一つ、もう一つは、本書で書かれているのですが、高速道路網の整備により、移動手段が鉄道から自動車にシフトしたことです。
不公平な競争がJR北海道の危機を招いた
不公平な高速道路との競争
本書では、高速道路網の整備が自動車の通行料のみによる独立採算ではなく、かなりの財政支出で賄われているのに対し、鉄道の整備・保守は営業収入だけで賄うのは競争原理に反するとしています。
JR貨物の負担
また、JR貨物も単独では存続困難なため、他の6社が線路保守等を負担し、JR貨物は割安の利用料を支払っているだけです。貨物輸送より乗客輸送の割合の大きいJRの本州会社は問題ありません。
ところが、新幹線開通に伴い第三セクターとなったいわて銀河鉄道や青い森鉄道は、優等列車がなくなった分、貨物列車の占める割合が大きくなり、JR貨物に割安で貸していては経営上採算が合いません。その分は、実はJR東日本が補填しています。
しかし、JR北海道には誰も補填してくれません。
モーダルシフトという観点から、国全体としての物流機能を戦略的にとらえる必要があります。北海道の貨物インフラをJR北海道に負担させておいていいのでしょうか?
まとめ
本書を読むまで、独立採算が当たり前、自治体が負担をしないのならJR北海道は不採算路線を廃止すべきだと考えていたのですが、本書の提言も踏まえて考えると、上下分離し、線路の建設・保守は国と道が支えるべきという意見に傾いてきました。
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