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かねてより知りたかったことの一つが現在の日本語の成立の過程です。夏目漱石の小説は口語体で書かれていてすらすら読めるのに、森鴎外の『舞姫』や樋口一葉の『たけくらべ』は旧来の文語体で書かれていて、すらすら読むことができません。『吾輩は猫である』の連載開始が1905年(明治38年)、『舞姫』が1890年(明治23年)、『たけくらべ』が1895年(明治28年)。ですので、1895年から1905年に新旧日本語の交替、日本語の不連続が生じたと推察していました。本書はその理由を与えてくれるであろうと期待した次第です。


<目次>
  • 序章
  • 第一章 総合雑誌をよむ
  • 第二章 女性のことば
  • 第三章 こどものことば
  • 第四章 大正時代の辞書
  • 第五章 戦争を語る日本語
  • 終章 再び一九二〇年の日本語


言文一致運動

本書によれば、「言文一致運動」は明治20年(1887年)頃から始まり、明治40年(1907年)頃にひとまずの達成をみるとしています。『吾輩は猫である』の連載開始と符合します。また、この口語体普及の原動力になったのが、義務教育の開始(1886年)と国定教科書の制定(1903~1904年)でしょうか?



Wikipediaによると、明治中頃の識字率は地域により20~60%、1925年時点の20歳非識字率は0.9%とのことです。義務教育の推進が劇的な識字率の向上をもたらし、夏目漱石らの大衆文学が花開きました。


流行曲・雑誌・辞書・詔勅

それと同時に、現代日本語が形成され、その証跡は流行曲・雑誌・辞書・詔勅に見て取ることができ、本書はそれらを一つ一つ紐解いていきます。本書が取り上げた流行曲・雑誌・辞書・詔勅は以下のとおり。


  • 映画『東京行進曲』(1929年)の主題歌
  • 総合雑誌『キング』(1925年創刊)、『改造』(1919年創刊)
  • 女性雑誌『青鞜』(1911年創刊)
  • 子ども向け雑誌『赤い鳥』(1918年創刊)、『飛行少年』(1913年創刊)
  • 辞書『大日本国語辞典』(1915年刊行)
  • 日露戦争の詔勅(1905年)


言葉は文化の在り方とも密接に関係します。雑誌には広告が掲載され、当時普及していた商品が分かります。また、外来語の表記も当初はゆらぎ、時間の経過とともに現在の姿になっていったのだろうと思います。また当時、明治民法下では、女性の権限が著しく制限されましたが、平塚らいてうの「元祖女性は太陽であった」という言葉で始まった『青鞜』に、当時の女性解放の動きが見て取れます。



広告
  • 『キング』:健康器具・薬・英会話学校・速記学校
  • 中山太陽堂(化粧品会社)とその子会社のプラトン社(出版社):白粉
  • 『飛行少年』:カメラ・ハーモニカ・懐中電灯・空気銃


外来語
  • 『日本国語大辞典』:「シチュー」「シチュ」「シテュー」「スチュー」「ステイウ」「シチュウ」「スチュウ」「シチウ」
  • 『痴人の愛』『浅草日記』:サラリーマン
  • ロマンチック


女性解放

新らしい女は今迄の女の歩み古した足跡を何時までもさがして歩いては行かない。新らしい女には新らしい女の道がある。新らしい女は多くの人々の行き止まった処より更に進んで新しい道を先導者として行く。

新らしい道は古き道を辿る人々若しくは古き道を行き詰めた人々に未だ知られざる道である。又辿ろうとする先導者にも初めての道である。

新らしい道は何処から何処に至る道なのか分らない。従って未知に伴う危険と恐怖がある。

未だ知られざる道の先導者は自己の歩むべき道としてはびこる刺ある茨を切り払って進まねばならぬ。大いなる巌を切り崩して歩み深山に迷い入って彷徨わねばならぬ。毒虫に刺され、飢え渇し峠を越え断崖を攀じ谷を渡り草の根にすがらねばならない。斯くて絶叫祈?あらゆる苦痛に苦き涙を絞らねばならぬ。 ー 106ページ

  • 伊東野枝 大正2年1月1日に発行された『青鞜』「第三年第一号」


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