私の第二の故郷シンガポールの数奇な歴史


わたくしは1998年から2000年まで、転勤の拝命を受け、シンガポールに在住しておりました。シンガポールは言わば、私の第二の故郷です。


シンガポール在住時代、この写真にある映像を何度も何度も見る機会がありました。シンガポール初代首相にてシンガポール建国の父と呼ばれるリー・クアン・ユーが41歳の時の写真です。1965年8月9日、シンガポールが独立したその日の写真です。涙目であることがわかります。


シンガポールの今日の輝かしい発展しか知らない人から見ると、なぜ初代首相が独立を果たしたその日に泣いているのか分からないかもしれません。独立とは国民にとって大変よろこばしいことのはずです。独立を喜べなかった国を、私はシンガポール以外に知りません。


実は、シンガポールは独立を果たしたのではありません。それまでマレーシアの一つの州であったシンガポールは、連邦政府によって一方的に分離を言い渡されたのです。英語ではSeparationとかPart companyという表現をしています。この写真は、その時の写真です。


しかし、今日のシンガポールを見てのとおり、シンガポールは奇跡的な発展を遂げます。25年間首相を務めたリー・クアンユーの功績に負うところが大きいことは、誰も否定できません。


リー・クアン・ユー

Courtesy to The Real Singapore


世界のリーダーに多大な影響を与えたリー・クアンユー


リー・クアンユー、世界を語る
グラハム・アリソン, ロバート・D・ブラックウィル, アリ・ウィン
サンマーク出版 ( 2013-10-15 )
ISBN: 9784763133212


リー・クアンユーも、齢90歳になります。首相を退いたものの、世界各国の政治家に多大なる政治思想の影響を与えました。本書の巻頭には、バラク・オバマ、ビル・クリントン、習近平らがリー・クアンユーへの賛辞のコメントを寄せています。そんなリー・クアンユーが今後の世界情勢を語る、それが本書です。おそらく世界の指導者たちは、みな読むことになるのではないでしょうか?


<目次>

まえがき

序文

リー・クアンユーを師と仰ぐ世界の指導者たち

第1章 中国の未来

第2章 アメリカの未来

第3章 米中関係の未来

第4章 インドの未来

第5章 イスラム原理主義の未来

第6章 国家の経済成長の未来

第7章 地政学とグローバル化の未来

第8章 民主主義の未来

第9章 リー・クアンユーの考え方

第10章 むすび


本書でリー・クアンユーは、地域で見れば主に中国、アメリカ、そしてイスラム教国について語ります。中国の台頭により米中の二大国化が進みますが、アメリカの軍事的優位は失われないため、米中が軍事衝突を起こすことはないだろうと言います。


欧米の政治学者や人権団体は、シンガポールは独裁国家である、鞭打ち刑のような人権侵害が行われていると批判します。しかし、リー・クアンユーは、「政治社会学を研究する人物の批判や助言」は無視してよいと言い切り、欧米型の民主主義そのもののあり方へも疑問を投じます。


儒教思想の根底にあるのは、上に立つ者は大衆の利益を知り、個々の利益よりも社会の利益を優先させることで社会をうまく機能させるというものだ。これは、個人の権利を優先させる、アメリカの原則とは根本的に異なる。

欧米の人々は、よい政府はどんな問題も解決できると考え、社会倫理をないがしろにしてきた。

東洋では、自らを律することからはじめる。今日の欧米は正反対だ。


リー・クアンユーの思想のより所


彼の思想のより所はどこにあるのでしょうか?本書を読み進めばすべて分かりますが、儒教、陰陽思想、孫子などの東洋思想のみならず、『君主論』を著したニッコロ・マキャヴェッリ、『戦争論』を著したカール・フォン・クラウゼヴィッツ、市場原理主義者と揶揄されることもあるフリードリッヒ・フォン・ハイエクといった西洋の思想家、また第二次世界大戦時のイギリス政府・亡命フランス政府の指導者ウィンストン・チャーチルやシャルル・ド・ゴール、そして中国で改革開放路線を進めた鄧小平の名前をあげており、リー・クアンユーはこうした思想家・政治家から政治的思想を涵養してきたことがよくわかります。


リー・クアンユーから学ぶ


また、日本との関係性についても少しだけ触れています。


私は国を支配する保々や国民の治め方をイギリス人に学び、権力の使い方は日本人に学んだ。


太平洋戦争時にシンガポールを占領した日本人から学んだということです。決して後の日本の発展から学んだとは言いませんでした。


昨今、リー・クアンユーは、日本に対して批判的な意見が多いと聞きます。日本人にとってはまことに残念なことですが、本書を読んでみても、日本人として耳が痛いことがいくつか出てきます。


かつて東南アジア諸国は、日本に学びました。しかし今や日本はシンガポールに、リー・クアンユーに学ぶ必要があるのではないでしょうか?


最後に、シンガポール独立日の映像を紹介します。ぜひご覧ください。



関連書籍



日本による占領下のシンガポールでの日本人とシンガポール人の交流が描かれており、心温まります。



中公新書からシンガポールの歴史の本が出版されていました。これは読まねば。


ほかに、リー・クアンユーは1999年の日本経済新聞社の私の履歴書に登場しているのですが、残念ながら単行本として出版されていません。当時シンガポールにいた私は、日本経済新聞社シンガポール支局が主催したイベントに参加し、リー・クアンユーの基調講演をきき、かつ私の履歴書の抜き刷り版をいただいたのですが、物持ちが悪いため、残念ながらどこかに行ってしまいました。家の中のどこかにあるはずなので、探してみます。


追記


2015年3月23日、リー・クアンユーは亡くなりました。冥福を祈ります。




↓↓参考になったらクリック願います↓↓
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村