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先月、メンタルヘルスの研修を受けました。メンタル不調は自律神経の不調であり、睡眠障害となって表れるとのことです。また、ひょんなことから入社一年目(19卒)のツイートを見る機会がありました。Twitterで19卒でアカウント検索すると、相当数の「仕事辞めたい」というアカウントが目に入ります。私の大学生の子どもが2人います。他人事では要られません。


メンタルヘルスや新卒の仕事辞めたいツイートなどを考えていて思い出したのが、2015年12月に自ら命を絶った高橋まつりさん。本がないかを調べたところ、この本を見つけました。


<目次>

  • はじめに
  • 口絵(在りし日のまつりさん)
  • 第一章 高橋まつりさんはなぜ亡くなったのか(川人博)
  • 第二章 まつりと私の二十四年(高橋幸美)
  • 第三章 電通に対する十の改革提言(川人博)
  • 第四章 過労死ゼロの社会を(川人博)
  • あとがき
  • 巻末資料


著者は、遺族代理人として電通と交渉のフロントに立った弁護士川人博さんとまつりさんの母高橋幸美さんの著書です。本書は四章構成からなります。


第一章は事件のあらましです。残業時間の実態や当時の上司の対応、会社からの情報の引き出しと面談、労災認定(2016年10月)、会社と遺族の間の合意、刑事事件としての起訴、有罪判決(2017年10月)までです。なお、「和解」ではなく「合意」とした理由は、会社は遺族側の要求をほとんど受け入れ、遺族側の譲歩点がなかったからとのことです。


第二章は、母高橋幸美さんのまつりさんとの思い出です。高橋さんの家は母1子ども2人の母子家庭でした。幼少のころから小学4年生で私立中学進学を決意、特待生として私立中学に進学、そして東大へ進学しました。東大在学中は奨学金を獲得して1年間の中国留学も果たしています。2015年4月電通入社、使用期間を経て10月になると異常な長時間労働が常態化し、12月25日に自殺にいたりました。


第三章は、合意後の2017年4月、電通役員・幹部向けの川人さんによる講演内容です。十の改革提言を引用します。


  • その一 適正な業務量と適正な人員配置
  • そのニ 新入社員を疲弊させる懇親会・反省会を廃止するか、または抜本的に改善すること
  • その三 パワハラ・セクハラを生む土壌をなくすこと
  • その四 電通独特の社風の問題点を洗い出し、改善すること
  • その五 健康管理の抜本的改善を
  • その六 時間短縮により、労働能率の向上をはかること
  • その七 広告業界などサービス産業の過重労働改善のために
  • その八 CSRは足元の遵法精神から
  • その九 CSR(2) 健康経営の実現を
  • その十 国民の健康増進に資する広告業務・コンテンツ業務を


二次会は「2~3件予約しておく」その際、キャンセルしやすいように「偽名とうその電話番号をつかう」という違法指導、「女子力がない」というセクハラ発言、「年次の壁は海よりも深い」という年功序列慣習。遵法精神の欠如と前近代的な慣習に唖然とします。


第四章は、他の過労死の事案です。大卒1年目の新国立競技場での施行管理従事者、43歳のトラックドライバー(入社一年目で過労死)、30代の産婦人科医。公共性が高いこと、労働不足により、本書執筆時点では、医療従事者や運送業従事者は働き方改革関連法から対象外とされたとのことですが、その後どうなったのでしょうか。


幸いにも私自身はホワイトな企業で仕事ができていると自負しています。しかし、Twitterを見る限り、旧態依然とした職場がまだ多いように見受けられます。前途ある若者たちが職場での理不尽な対応で潰されていくのを見るのはしのびありません。


本書のレビューを見ると、Amazonで4件、ブクログで3件しかありません。本書が知られる一助になればと思い、本書評をしたためます。


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