歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史
ジャレド・ダイアモンド, Jared Diamond,
ジェイムズ・A・ロビンソン, James A. Robinson
慶應義塾大学出版会 ( 2018-06-06 )
ISBN: 9784766425192

<目次>
  • プロローグ
  • 第1章 ポリネシアの島々を文化実験する パトリック・V・カーチ
  • 第2章 アメリカ西部はなぜ移民が増えたのか
     ――19世紀植民地の成長の三段階 ジェイムズ・ベリッチ
  • 第3章 銀行制度はいかにして成立したか
     ――アメリカ・ブラジル・メキシコからのエビデンス スティーブン・ヘイバー
  • 第4章 ひとつの島はなぜ豊かな国と貧しい国にわかれたか
     ――島の中と島と島の間の比較 ジャレド・ダイアモンド
  • 第5章 奴隷貿易はアフリカにどのような影響を与えたか ネイサン・ナン
  • 第6章 イギリスのインド統治はなにを残したか
     ――制度を比較分析する アビジット・バナジー+ラクシュミ・アイヤー
  • 第7章 フランス革命の拡大と自然実験
     ――アンシャンレジームから資本主義へ
     ダロン・アセモグル+ダビデ・カントーニ+
     サイモン・ジョンソン+ジェイムズ・A・ロビンソン
  • あとがき 人類史における比較研究法
     ジャレド・ダイアモンド+ジェイムズ・A・ロビンソン
  • 原注


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『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイアモンドの新刊が出ました。彼の著書とあっては読まずにはいられません。と思ったら、彼の編集であり、著作ではありませんでした。まぁそれはよしとして、お題に興味があります。現在、プロローグを読み終わったところです。


歴史の本だと思ったのですが・・・実は科学の本なのかもしれません。元来、ダイアモンド氏は進化生物学者です。生物進化の研究手法を人類にも適用した結果、『銃・病原菌・鉄』は、ほかに類例を見ない歴史書となりました。『銃・病原菌・鉄』は、1万3000年前から大航海時代あたりまで、そのほとんどが文字のない世界を扱いました。しかし、本書は目次にあるとおり、多くは19世紀から20世紀を扱います。「歴史」という点では、相当分かっているはずですが、本書では従来に類例を見ない科学的アプローチを採用します。


ダイアモンド氏は、従来、社会科学の分野でも自然実験は利用されてきたとしています。それは、考古学、文化人類学、発達心理学、経済学、経済史、政治学、社会学などの分野です。しかし、歴史においては、経済史を除き、自然実験の利用が不規則で不十分だとしています。


本書の前半は、計量的要素を含まずナラティブに執筆されますが、後半は統計分析に基づいた定量的研究が採用されています。たとえば、アフリカの国別の経済発展状況について、19世紀までに単位面積あたりで連れ去られた奴隷人数と、現在(2000年)の1人当りのGDPは負の相関にあります。欧米がアフリカを搾取した様子が定量的に表されています(第5章)。


イギリス統治下のインドでは、小作地域(地主支配地域)と自作地域の違いが、現在の識字率・公共財の普及率に影を落としています。小作地域ほど、識字率が低く、公共財(本書の中では舗装道路や家庭用電力)の普及率が低い傾向にあります(第6章)。


では、これから読み進めることとします。


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