この4月で次女が高校から大学へ、三女が中学から高校へ、四女が小学校から中学へそれぞれ進学しますが、親の中高数学先取り学習のためにざっと目を通しました。見出しをリストアップします。
Part1「数」を使いこなそう
正と負の数 | マイナスxマイナスはなぜプラスなのか?-1のかけ算は180°回転 |
有理数と無理数 | 正方形には“整数の分数ではあらわせない数”がひそんでいる |
虚数 | 虚数は「存在しない数」といおうよりも「2次元の数」であり、科学に必須。虚数iのかけ算は90°回転 |
数列 | 資産の運用やローンの返済には「等比数列」の知識が必須 |
Column | 「星がどのくらい明るく見えるか」は図形の「相似」の知識があればわかる |
ベクトル | 「ベクトル」は矢印を数に見たてたもの。風や海流、力、磁場などもベクトル |
ベクトルと行列 | ゲームでキャラを自由自在に動かせるのは「ベクトル」と「行列」の計算のおかげ |
Part2「関数」を使いこなそう
関数 | 関数は「未来を予測する装置」。物理学では関数を駆使して、未来を予測する |
指数関数 | パンデミックのおそろしさは「指数関数的な増加」にあり |
対数関数 | 私たちの感覚は「対数の法則」に支配されている。ウェーバー・フェヒナーの法則 |
三角関数① | 三角関数は「三角形の関数」ではなく「円の関数」と考えたほうがよい」 |
三角関数② | 音や光、地震などの「波」の性質は三角関数を使って初めて理解できる |
Column | 「高さ」がわからない場合に三角形の面積を求める方法とは? |
Column | 円と直角三角形の不思議な関係 |
微分 | 「微分」とは関数のグラフを超拡大して見ること |
積分 | 「積分」とは“曲がった図形”の面積や体積を求める方法 |
微分積分学の基本定理 | 微分と積分は、たがいに逆の関係!「距離→速度」が微分で、「速度→「距離」が積分 |
微分方程式 | 物の運動は、微分積分に支配されている! |
Part3「確率と統計」を使いこなそう
期待値 | 宝くじのミニロト、ロト6、ロト7「期待値」が高くてお得なのはどれ? |
条件付き確率 | 99%の確率で犯人を当てるAIが「犯人」と判定。この人物が犯人の可能性は何%?ベイズの定理 |
分散と標準偏差 | テストで前回と同じ70点。クラスの平均点も前回と同じなのに今回はほめられた。なぜ? |
正規分布 | 偏差値は「学力の高さのよい指標」とは必ずしもいえない |
相関 | ビールが売れると水難事故もふえる。だから「ビールの販売をやめれば事故は減る」は本当? |
ここで、黄色と緑色のマーカー部分について説明します。
こういう説明が欲しかった
負の数・虚数・三角関数
中学校、高校で数学に挫折をしてしまう人も多いかと思います。「数学ができないから文系」という進路選択は、本来間違っていると思いますが、残念ながら、数学ができないと選択肢が狭まってしまうのは事実です。しかしながら、IT化・社会のデジタル化が進むにつれ、従来文系学部・文系職種と思われていた分野でも、ますます数学が必要になってきています。
ここで黄色でマーカーをつけた箇所(負の数・虚数・三角関数)について、このような説明をしてくれれば数学が苦手になる生徒を少しでも減らせるのではないかと思った箇所です。負の数を180度、虚数を90度回転させるという考え方は、理工系の大学に進学した方ならおなじみのオイラーの公式に連なる説明です。それなら最初からそう説明してくれればいいのに。。。
この記事の監修は東洋大学小山信也教授、ニュートンプレス編集部の高嶋秀行氏、科学技術ジャーナリストの山田久美氏です。分かりやすい解説、ありがとうございます。ぜひこの説明を教科書に採用されるよう、祈ります。
オイラーの公式
高校の時に習ったことはなかったけど、面白エピソード
対数の法則(ウェーバー・フェヒナーの法則)
音の大きさが10倍になっても10倍の大きさに聞こえるわけではない、明るさが10倍になっても10倍の明るさに見えるわけではない。経験的にはなんとなくそうかなと思っていましたが、近似値ではありますが、実際にそうなのだそうです。
騒音の単位である「デシベル(dB)」は、音圧が10倍になるごとに20デシベル増えるとのことです。また、星の等級は、5等差で100倍になります。式で表すと以下の通りになります。
- デシベル=20 * log10(P/P0)
ここでPは音圧、P0は人が聞き取れる最小音圧です。 - 1等星と6等星の等差=log2.5(100)
条件確率(ベイズの定理)
次の引っ掛け問題。「コイン2枚を放り投げて、落ちたコインの表裏を当てるゲームを考えましょう。片方のコインは表であるとわかりました。さて、もう一方のコインも表である確率はいくつでしょうか?」
答えは「1/2」ではなく「1/3」。無条件の場合「表・表」「表・裏」「裏・表」「裏・裏」の4パターンが等確率です。ここで1枚表が判明すると条件が変わり、「裏・裏」が消去され、「表・表」「表・裏」「裏・表」の三択問題になります。もう一つ表であるというのは「表・表」のみなので、「1/3」になります。条件によって確率が変わるという問題です。
これを一般化すると以下の式になります。
- P(原因A|結果B)=(P(原因A) * P(結果B|原因A)) / P(結果B)
99%の確率で犯人を当てるAIがあった場合、容疑者50人から1人の犯人を当てる確率、容疑者50000人から1人の犯人を当てる確率は以下の通り。
- 容疑者が50人の場合のP(犯人|判定)=0.02*0.99 / (0.02*0.99+0.98*0.01)=0.668(約67%)
- 容疑者が50000人の場合のP(犯人|判定)=0.00002*0.99 / (0.00002*0.99 + 0.99998*0.01)=0.00197(約0.2%)
容疑者が50人の場合、49人に対し1%の確率で誤る可能性があります。その可能性を加味すると、上記の通りになります。この条件付き確率は、先日読了した『統計学が最強の学問である』でも触れられていました。
PCR検査を増やすべきか問題
コロナパンデミックが起きた当初、専門家の間でも統計の素養のない人とある人との間で意見が真っ二つに分かれました。前者が少しでも多くの感染者を炙り出すために検査人数を増やすことを主張したのに対し、後者は検査精度が低く非感染者も陽性反応をある一定割合で示してしまうため、検査人数を増やすことに意味がないと主張しました。
- 参考記事:数学的視点から見たPCR検査
世論とマスメディアは理解していませんでしたが、厚生労働省と政府は正しく理解していたのでしょう。第一次の流行期(2020年3月~5月頃)、決して検査件数を増やすことはしませんでした。その後7月以降に検査件数を増やしましたが、正確な誤判定確率が分かり、どの程度の誤判定が発生するか予測がつき、医療現場の混乱を防げる見通しが立ったからなのだろうと推察します。
コロナのような事態に右往左往をせぬためにも、正しい統計リテラシーは持っておきたいものです。
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