ウィリアム王子とキャサリンの結婚式

ウィリアム王子とキャサリンの結婚式

画像出典:Wikipedia ライセンス:CC BY-SA 2.0


<目次>

序文

第1章 ロイヤル・ウェディングの記号論

第2章 柔らかい立憲君主制

第3章 女王と政治家 サッチャーの軌跡

第4章 階級社会とブレア近代化路線

第5章 アングロ・サクソン流の終焉

第6章 イギリス経済の復元力

第7章 スコットランド独立騒動が示した連合王国の限界

第8章 激動期の連合王国

第9章 ソフトパワー大国への脱皮


『ふしぎなイギリス』2本目の書評です。



前項では、現代の民主主義を作ったイギリス、そのイギリスに成文憲法がないこと、それに対して成文憲法の解釈で国会が紛糾する滑稽さを述べました。


2本目の書評では、世界で最も成熟した民主主義の国でありながら、民主主義と相対する立憲君主制を敷いているという事実と、そんな王室を国民が愛し、王室が国民の愛国心の、国の統合の、英連邦統合の柱であるという点です。


女王は国家元首として組閣を命じる


本書を読むまで、イギリスの議員内閣制の仕組みをよく理解しておりませんでした。日本の議員内閣制と決定的に異なるのは、内閣総理大臣の決定プロセスです。


日本国憲法では衆議院で指名選挙を経て、天皇が任命することになっています。一方、明治憲法では、衆議院に関係なく、天皇が内閣総理大臣を直接任命し、組閣を命じました。もちろん、天皇が自由意思で決めるのではなく、枢密院の上奏を経た後です。


イギリスの組閣プロセスは明治憲法下の日本に似ています。もちろん、君臨すれども統治せずを旨としていますので、女王が自由意思で決められるわけではなく、選挙結果を尊重して下院の第一党の党首に組閣を命じることによって、王室の政治介入を避けています。第一党が過半数を取れない時に問題が生じますが、2010年に連立政権の交渉プロセスが明文化されたため、問題を回避しました。


変わらずに生き残るためには、自ら変わる王室


政治介入はしないといえ、日本の天皇とは異なり、エリザベス女王は国家元首です。世界で最も成熟した民主主義の国でありながら、民主主義と相対する国家元首を頂いている点が不思議です。特にダイアナの死は王室の危機でした。国民の支持を失えば、廃位させられかねません。しかし、ダイアナの死後、イギリス王室は劇的に変わったようです。

20世紀はヨーロッパの王室にとって受難の時代だった。第一次世界大戦の敗戦や革命により各国の王室は一つひとつ廃止されたり象徴的な存在に退いていったりした。その中で、イギリス王室はなぜかくも強い存在感を示し続けているのか。ダイアナ事故死から5年間の王室再生のドラマにはその理由が隠されているように思う。それは、歴史的体験に裏打ちされた、イギリス王室の「変わらずに生き残るためには、自ら変わらなければならない」という行動原理である。


息の詰まるエピソード


本書の中で、息のつまる、思わずほろっとされたエピソードがありましたので、それを紹介して締めくくりたいと思います。愛に満ちたエピソードであり、それがイギリス王室が愛される理由、強さの理由のだろうと思います。それは、2011年4月のケンブリッジ公ウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンの結婚式のエピソードです。


イギリス民法のテレビ番組で王子は、母親(ダイアナ)の指輪をフィアンセに贈った理由を次のように説明している。「母がこの日(婚約発表)の感動と、僕とケイトがこれからの人生で分かち合う喜びを見逃さないようにする僕なりのやり方です。母が僕たちに常に寄り添っていてくれるように」と。



↓↓参考になったらクリック願います↓↓
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村