image via シンドバッド - Wikipedia (license : Public Domain
ディクソン, ジョン・キデルモンロー, E. Dixon, 中野 好夫
岩波書店 ( 2001-09-18 )
ISBN: 9784001140903
<目次>
- はしがき
- 船乗りシンドバッドの1回目の航海
- 船乗りシンドバッドの2回目の航海
- 船乗りシンドバッドの3回目の航海
- 船乗りシンドバッドの4回目の航海
- 船乗りシンドバッドの5回目の航海
- 船乗りシンドバッドの6回目の航海
- 船乗りシンドバッドの7回目の航海
- アラジンと魔法のランプ
- ペルシア王と海の皇女
- ベーデル王とジャウワーラ姫
シンドバッドと言えば、先に思いつくのはピンク・レディーの『渚のシンドバッド』。この曲が発売されたのが1977年のこと。もちろん、『アラビアン・ナイト』に登場するシンドバッドも名前は知っていましたが、物語の中味を存じ上げませんでした。
折しも、『教養は児童書で学べ』、『古典力』で『アラビアン・ナイト』が紹介されていたこともあり、2018年に読むべき世界の文学作品にノミネートしたばかりです。
出口 治明 / 光文社 ( 2017-08-17 )
齋藤 孝 / 岩波書店 ( 2012-10-20 )
『船乗りシンドバッドの航海』
まず、シンドバッドの冒険の物語に触れておくと、バグダッドの商人であるシンドバッドは、インド洋に航海に出て、難破等の困難を乗り越え商売を成功させる物語です。旅の困難に懲りたのにもかかわらず、血が騒いで再び航海に乗り出す、そんな話が6回繰り返されます。7回目の航海だけは教主の命令で赴きました。
イスラムの世界観:シンドバッドは敬虔なイスラム教徒
大人になってから読むと気づくシンドバッドの物語が描くイスラムの世界観があります。子どもの時に聞きかじっていただけでは、気づきませんでした。
シンドバッドは苦難を乗り換えた時に、必ず神の加護に感謝します。つまり、シンドバッドは敬虔なイスラム教徒です。我々日本人が、桃太郎や浦島太郎に勧善懲悪の道徳を見い出すように、シンドバッドの物語がイスラム世界で読み継がれてきたということは、シンドバッドの行動に、イスラム世界の道徳を見い出しているのかもしれません。
イスラムの世界観:寛大で慈悲深い
シンドバッドの物語がいつ頃の話なのかよく分かりませんが、イスラム商人全盛時代のものだろうと思います。ヨーロッパ人による大航海時代よりも前に、イスラム商人によるインド洋を舞台とした大航海時代はとっくに幕を開けていました。
シンドバッドは何度も難破するのですが、流れ着いた先で野蛮人に遭遇することもあれば、寛大な王様に救われることもあります。後の世のヨーロッパ人による冒険活劇が、難破した先のほとんどを野蛮人として描いたのとは大違いです。多くの人が抱いてしまった現代のイスラムの印象とは大きく異なります。しかし、今でもテロに走るのはごくごく一部で、基本的にはイスラムとは寛大で慈悲深い宗教なのだということが、この物語を通じてもよく分かります。
イスラム教徒の道徳や価値観を理解するには、シンドバッドをはじめとする『アラビアン・ナイト』を大人も読み直すとよいのかもしれません。
日本のアニメへの影響
さて、シンドバッドの物語には、たびたび、怪鳥ロックが登場します。野蛮人の島から脱出する際に、ロックの足に自分を括りつけて脱出するシーン、卵を盗まれて怒ったロックに岩をぶつけられて船が難破するシーン。
怪鳥の映像をふと思い出すと、『バビル二世』と『銀河鉄道999』に思い当たります。
『バビル二世』
『バビル二世』には、三つのしもべの一つとして、怪鳥のロプロスが出てきます。ロプロス=ロック?とも考えてみたのですが・・・検索してみると、けっこう話題になっているようで、作者の横山光輝氏がロックから連想したかどうかの真偽は不明でした。
『銀河鉄道999』
一方で、『銀河鉄道999』について検索すると、103-104話に「怪鳥ロック」が登場していました。この回のタイトルが「アンドロメダ千夜一夜」なので、完全にシンドバッドの物語からのパクリですね。
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