<目次>
- 第1部 官僚を動かせ
- 第一章 政治家が方向性を示す
- 第二章 自らの思いを政策に
- 第三章 決断し、責任を取る政治
- 第四章 国民目線の改革
- 第五章 マスコミの聖域にメス
- 第六章 「伝家の宝刀」人事権
- 第七章 政務官でも仕事ができる
- 第八章 議員立法で国会を活性化
- 第2部 官房長官時代のインタビュー
- 安倍政権は日本をこう変える(『文藝春秋』2014年2月号)
- 支持率低下覚悟の安保関連法成立(『文藝春秋』2018年2月号)
- 携帯料金は絶対に四割下げる(『文藝春秋』2018年12月号)
- 我が政権構想(『文藝春秋』2020年10月号)
政治・政治家を批判するなら、その政治家の著書を読め、というのが私の信条です。時の総理大臣菅義偉氏の本も読まざるを得ません。
本書は2部から構成されます。第一部は民主党政権下の2012年に出版された単行本『官僚を動かせ 政治家の覚悟』の第一章・第二章の再収録、第二部は官房長官時代の『文藝春秋』でのインタビュー記事です。最終章は安倍首相退陣表明・菅氏出馬表明後の記事です。2012年版にはあったと言われる民主党政権批判部分は本書から省略され、そのため、議事録を残せという下りも省略されています。新書版発刊に際し、そういう批判も起きました。
菅義偉氏の志・政治信条やその拠り所を知る上で、本書はお薦めです。もちろん他の政治家の本と同様、自画自賛である面は否めません。その点は割り引いて読む必要はあるかと思います。しかし他の政治家の本と一線を画しているのは、本書の内容が総務副大臣・総務大臣・内閣官房長官として成し遂げてきた政治施策のオンパレードだといことです。
自画自賛話が鼻につくかもしれませんが、1990年代より政治改革がうたわれ、政治主導・縦割り行政の打破の必要性が言われる中、政治主導で官僚をどのように動かして来たかがよく分かります。その前の民主党政権でも「政治主導」を振りかざしましたが、事業仕分けでは官僚に恥をかかせるだけで、行政をうまく機能させることができませんでした。安倍政権が長く続いたのは、官僚のやる気を引き出し、行政をうまく機能させたからだったのではないでしょうか。今から振り返るとそう感じます。「官僚を動かせ」という第一部のタイトルに表れています。国民の念願だった政治主導・縦割り行政の打破が実現したわけです。
にもかかわらず、どうしたことでしょうか。政治主導の実現はマスメディアはほとんど取り上げません。菅氏の自民党総裁選出馬記者会見をライブで見ていましたが、そのことがよく表れていました。記者会見で官房長官時代の思い出深い成果として、利水ダムの水害対策への活用を挙げていましたが、記者たちは見事にスルーしてしまいました。
ほとんど世間の耳目を集めることのない政策を地道に実現してきた自負があるからこそ、菅氏は「国民のために働く内閣」と自称しているのだと思います。「何を当たり前のことを言っているのだ」という批判は、政治主導ながらも地道な政治努力の積み重ねであることを知らない的外れな批判と私は受け止めます。
菅首相が掲げた『国民のために働く内閣』に「当たり前」の声相次ぐ 好意的な反応も(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース
また、本書では、2018年時点で携帯電話料金の引き下げについて言及していることが分かります。何の裏付けもなく、このような発言はしません。当時から既に総務省官僚が準備していた証であり、このままいけば、事態は動くはずです。
本書を読む限り、体調管理もしっかりしており、「覚悟」を語る以上、菅氏は安倍氏のピンチヒッターで終わるつもりはなく、次期総裁選も出馬し最低4年間は総理の座を務める覚悟ができていると見て間違いないでしょう。
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