ダグラス・マッカーサー(左)と昭和天皇(右)ダグラス・マッカーサーと昭和天皇

画像出典:Wikipedia ライセンス:パブリック・ドメイン



本書を知ったきっかけ


本書を知ったきっかけは、美達大和氏のブログから。殺人を犯した無期懲役囚でありながら、獄の中で著述活動をされている方で、二冊ほど本を読んだが、極めて知能が高い。彼がブログを書いていることを知ったので、定期購読しており、安全保障関連法案の審議で国会でもめたこともあり、現在の日本の安全保障の原点である日本国憲法理解がどうしても必要となり、日高義樹氏の著書なら読んでみる価値があるということで読んでみた次第です。



国際政治の第一人者


日高義樹氏についても触れておきます。現在、御歳80歳。1935年生まれ1959年NHKに入局、ワシントン市局長などを歴任し1992年退職。ハーバード大学などで客員教授も務めています。政治に一家言あるジャーナリストといえば、誰しも田原総一朗氏を思い浮かべるのではないかと思いますが、世界情勢に対する洞察力については、日高氏のほうがはるかに上だと考えています。ワシントン時代に築いたのでしょうか。アメリカ政財界・軍部への人脈がすごい。


本書の中でも、キッシンジャー、ガルブレイス、ドラッカーなど以外に、ルーズベルト大統領の顧問だったハリマン、ダグラス・マッカーサーの配下でGHQにいたリチャード・フィン、リチャード・ブラウン、ビクター・ウィリアムズ、そしてジャック・キャノンという面々に直接インタビューしています。本書を書くためにインタビューをしたのではなく、インタビューの期日で古いものは1974年とあります。彼のインタビューの蓄積の中から、本書のテーマに沿ったかたちで編集されたのが本書、と言ったほうが正しいです。すなわち、本書は日高氏の膨大なインタビュー記録、彼のインテリジェンス活動の一部でしかありません。世界の国際情勢を理解する上では、彼の著書は欠かせません。


読書の目的


読書の目的は、それまでに知らなかったことを知ることにあります。日本国憲法をGHQが草案したというのは知っている事実ですので、そこの部分は特に驚きません。本書を読んで、知ったことを列挙します。


日本国憲法制定の時代背景


  • ポツダム宣言で力を持っていたのは、スターリンだった。チャーチルは選挙で破れ、トルーマンもルーズベルトの死去により急遽大統領に昇格した。スターリンは、ソ連の日本占領への参加の機会を伺っていた。
  • 当時の日本は公職追放で、20万人以上が政府から去っていた。ある意味無政府状態に近かった。戦後の日本で凶悪犯罪が多かったのは、政府・警察が機能していなかったからなのかもしれない。
  • アメリカ本後の参謀本部とGHQでは、日本の占領政策の考え方が異なった。参謀本部は天皇制廃止を目論み、GHQは天皇制存続を目論んだ。
  • アメリカ単独で日本を占領したが、実はソ連や中国のスパイが日本国内を暗躍し、共産党などを支援していた。
  • 日本国憲法は、アメリカ本国や中ソの介入を防ぐべく、急いで作られた。


日米安全保障条約締結の意味


  • 日本に軍隊無しでアメリカ軍が撤収するわけにいかないので、サンフランシスコ平和条約と同時に日米安全保障条約を締結し、引き続き、アメリカ軍は日本に進駐することになった。
  • しかし、アメリカは本質的に日本を信じていなかった。日米安全保障条約は、日本を守るためというよりも、日本が再軍備によって再び中国を攻めることを防ぐためだった。(本書では触れられていないが、1960年の安保改正により、アメリカ軍による日本防衛の義務が生じています。)


日本国憲法改正の是非


その後、1955年に保守合同により自由民主党が結党し、自主憲法制定を結党のより所としました。ですので

、当時自民党に参加した政治家は、自主憲法制定を目指していたことになります。しかし、自主憲法制定をしないまま、時が流れてしまいました。


現代において、民主党に政権を奪われた自民党は、2010年にあらためて党是を制定し、やはり自主憲法制定を掲げています。安倍首相が突出して憲法を改正したがっているのではなく、自民党というものは憲法改正を目的とした集団だ、ということです。


日本国憲法制定の時代背景や日米安全保障条約締結の意味を理解できると、あらためて、自主憲法制定が必要だと考えます。憲法も安全保障もアメリカに与えられてしまったことが、日本人は安全保障に対して思考停止してしまった原因になっていないでしょうか?



<目次>

序章 アメリカは変えにくい憲法を日本に与えた

第一章 昭和憲法のどこがおかしいのか

 第一節 昭和憲法は国会を独裁者にした

 第二節 占領中に作られた憲法は変えなければならない

 第三節 適正な軍事力を持つことは国際責任である

 第四節 アメリカはいまも日本を恐れている

 第五節 昭和憲法の世界は消えてしまった

第二章 平和憲法は勝者のトロフィーだった

 第一節 平和憲法の構想は1945年、ポツダムで作られた

 第二節 日本側は天皇制の維持だけに全力を挙げた

 第三節 占領下の1946年、昭和憲法の原案が作られた

 第四節 昭和憲法はすべて占領軍政治部が書いた

 第五節 マッカーサー司令官があらゆることを決めた

第三章 アメリカは日本人を作り替えようとした

 第一節 軍服のアメリカ兵がNHKの記者を教育した

 第二節 天皇制を存続させ利用しようとした

 第三節 日本人の戦う精神と大和魂をなくそうとした

 第四節 日本の国民とマスコミは憲法第九条を大歓迎した

 第五節 国民が突然、国家主権を与えられた

第四章 異常事態のもとで憲法が作られた

 第一節 東京の深夜は戦場だった

 第二節 アメリカ議会は天皇訴追の決議を行った

 第三節 ソビエトは日露戦争の復讐をしようとしていた

 第四節 日本政府は事実上、存在しなかった

 第五節 アメリカの政治が日本を翻弄した

第五章 アメリカはなぜ日米安保条約を作ったのか

 第一節 アメリカは独立後の日本を信用しなかった

 第二節 日本再軍備を阻もうとした

 第三節 アメリカ軍部は占領を続けたかった

 第四節 朝鮮戦争が事態を一変させた

 第五節 日米は地政学的に敵対せざるを得ない

第六章 日本人は自らの力で国を守ることができる

 第一節 核兵器の国際管理と独自の核戦略を提唱する

 第二節 尖閣防衛のすべてをアメリカに頼ることはできない

 第三節 アメリカは世界の警察官であることをやめる

 第四節 新しい戦争が始まった

 第五節 日本人は常に危機を乗り越えてきた


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