池上 英洋, 荒井 咲紀
筑摩書房 ( 2017-06-06 )
ISBN: 9784480098009
<目次>
- はじめに
- 第1章 美少女美術の黄金時代
- 第2章 神話世界の美少女
- 第3章 キリスト教と美少女
- 第4章 美少女の復活
- 第5章 「美少女」の誕生
- 第6章 印象派と世紀末の美少女
- おわりに 美少女たちはどこへ行くのか
本書は美術史の本です。取り扱っている題材は美少女。「美女」とはせず「美少女」としているところが、ややロリータな趣がしないでもありませんが、対象としている年齢はだいたい7~8歳から結婚前ぐらいでしょうか。
美術史でありながら、その背景にある大局的な歴史の流れに沿った説明がなされており、歴史の変遷を美術の観点から見直すことができそうです。具体的に言えば、多神教時代のギリシャ・ローマ時代からキリスト教への転換、キリスト教下のルネサンスの到来が意味するところ(多神教の受入れ)、宗教改革の影響など、計らずも新しい視点を得ることができました。
第1章 美少女美術の黄金時代
- ファンシー・ピクチャー 量産される美少女
- ブグロー アカデミーが生んだ美少女画の巨匠
- 不思議の国のアリス 見え隠れする少女の性
- 美少女というファンタジー 児童文学と挿絵のなかの少女
本書の流れは、第2章から第6章が時系列に並んでいるのに対し、第1章のみが時間が19世紀に飛んでいます。というのは、この時代に現在まで続く「美少女」の基準が決まったとのこと。その中心人物が、24ページを割いて説明されるウィリアム・アドルフ・ブグロー(1825-1905年)です。
美少女の美術史を語るうえで、ブグローの作品を外すことはできない。彼は一九世紀フランスの新古典主義を牽引した画家であると同時に、官能美術の巨匠であり、また美少年・美少女画の代表的作家でもあった。実際に、本項に掲載した作品群を見ていただきたいが、いずれも私たちが「美少女」と聞いて想像するイメージによく合致しているものばかりだ。
これは、私たちが時代も人種も文化圏も異なる約100年後の日本人である点を考えれば、実は相当に不思議なことだ。この事実は、現代の「美の基準」なるものが、良かれ悪しかれ近代フランスで形成されたことを意味する。ブグローはその中心人物であり、私たちが彼の描く人物を見て「美しい」と思うのも、言うなれば当然のことなのだ。 (P29)
つづく。
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