アフリカ野生動物

<目次>
  • はじめに フィールドでの一日
  • CHAPTER 1 アフリカについて
  • CHAPTER 2 動物たちは日々、生き残りを懸けている
  • CHAPTER 3 フィールドでのサバイバル術
  • CHAPTER 4 アフリカに命の輝きを求めて
  • CHAPTER 5 南部アフリカに見る人間と自然との関係
  • おわりに なぜアフリカで写真を撮り続けるのか


アフリカの野生の動物たちの写真を撮る写真家の山形豪氏。本書は山形氏が撮影したアフリカの動物たちの写真をふんだんに散りばめており、新書としてはめずらしい類の本です。タイトルは釣り過ぎで、決して、ライオン・グルメの本などではありません。


ライオン以外にもあまたの動物が出てきており、写真で登場する動物を列挙すると、キリン、シマウマ、バッファロー、ケープペンギン、チーター、スプリングボック、オリックス、ハゲワシ、ブチハイエナ、ツチブタ、アードウルフ、チャクマヒヒ、カバ、クロサイ、ナイルワニ、アフリカゾウ、アガマトカゲ、オオコウモリ、メンフクロウ、カメレオン、ヌーと、実に多彩な動物が登場します。


本を読む理由というのは、そこに自分の知らない未知の世界があり、それを知りたいと渇望するからです。もちろん、本書のタイトルにある通り、ライオンがまずいということは知りませんでした。先に述べた通り、決して、ライオンのまずさを訴えたい本ではないし、ライオンがまずいというエピソードは、数多の驚きの中のone of themでしかありませんので、タイトルのつけ方としてはどうかなと思います。本書で知った驚きをもとに、他のタイトル案を考えると、こんな感じです。読書日記人気ランキング


  • 最も力の弱い肉食獣チーター
  • 環境衛生係のハゲワシとハイエナ
  • ライオンよりも恐ろしいカバ
  • 動物よりも恐ろしいホモ・サピエンス
  • 野生の楽園と程遠いアフリカ
  • そして牙の大きなゾウはいなくなった
  • アフリカゾウの絶滅危機


ライオンよりも恐ろしいカバ

カバ
pixabay.com (license: CC0)


ライオンよりも恐ろしいカバ。これはなかなか衝撃的な事実です。なぜそのようなことになるかというと、遭遇確率と人間を襲う確率です。まず、遭遇確率に関しては、ライオンのほうが個体数が少ないこと、カバは人間と同様に水辺を好むことにあります。


(ライオンの)総個体数もIUCN(国際自然保護連合)の推定で23000~39000頭とされている。つまり人と接触し、事故が起きる確率がもともと低いのだ。

転じてカバは、南部アフリカから東部アフリカにかけての主要河川や湖沼には大抵いる。(中略)カバの好む場所というのは、水が豊かで草地も多くある。そのような自然条件は人が暮らすのにも都合がよい。それだけに、カバと人とは日常的に接触する可能性が高いのだ。 (P81)


人間にとって、ライオンは怖い動物ですが、実はそれ以上に、ライオンにとって人間は怖い動物です。トラブルに巻き込まれないために下手に近寄らないのは、お互いさまのようです。


人間が肉食哺乳動物の餌食になる確率は、皆無ではないものの極めて低い。前述したように、ただでさえ個体数が少ない上、肉食獣にしたところで、積極的に食べたいと思うよりも、人間に対する本能的な恐怖の方が勝っているからだ。また、これらの“猛獣”がいる野生動物保護区などでキャンプをしていても、寝るときにテントのフラップを閉めてさえいれば、襲われることはない。 (P95)


読書日記人気ランキング


著者山形さん


本書では、著者山形さんの生い立ちについても触れられています。山形さんが小学五年生の時、お父さんがWHO関連の仕事のため、アフリカのブルキナファソへ赴任することになりました。そこで、アフリカの自然に魅せられることになるわけです。数年アフリカに滞在し、日本に帰国後、帰国子女への門戸を開いているICUの高校に通うもなじめず、お父さんがJICAの仕事で再びアフリカに赴任する際、一緒についていったとのこと。現地のインターナショナルスクールで、アートを専攻し、そこで本格的に撮影術を身につけ、イギリスの大学を卒業し、日本に帰国後、写真撮影のアルバイトで糊口をしのぎながら、アフリカに戻っては、アフリカの写真を雑誌等に寄稿することにより、写真家として自立していったようです。



矛盾


アフリカの自然の美しさに魅せられながらも、その矛盾にも気づきます。


野生動物や自然環境の美しさに魅了される一方で、アフリカの抱える様々な問題や矛盾をこの当時から肌で感じてきた。 (P138)


本書を読んで一番堪えたのは、アフリカの自然破壊が相当深刻であること。もはや動物保護区がなければ、ライオンのような動物は生息できなくなりつつありますし、アフリカゾウもものすごい勢いで減っていっているとのことです。いくつか、重要だとおもった箇所を引用します。

私がフィールととしている場所の多くは、南部アフリカ各地に点在する国立公園や野生動物保護区である。アフリカには多くの野生動物が生息しているという印象があるが、実は大陸の大半は、野生の楽園とは程遠い場所だ。 (P158)

野生動物保護区や国立公園がなければ動物やそれらを支える生態系そのものが失われてしまうことも明白だ。 (P162)

ある日、マシャトゥで一番のベテランガイドであるバシが、「昔はもっと牙の大きいゾウもいたのだが・・・」と呟いた言葉がずっと頭から離れない。彼によると、ボツワナでは密猟により大きな牙を持ったオスが皆殺されてしまい、小さな牙のオスだけがメスと交尾をするようになったため、生まれてくる個体は皆小さな牙しか持たず、体つきも小さくなったのだという。 (P178)

今のままのペースでは、アフリカゾウは20年を待たずして絶滅するとさえ言われている。 (P182)


もちろん、山形さんは写真家が本職であり、自然保護活動家ではありません。ご本人は、写真が社会を変える影響力があるか分からないとしています。「うん?そんなことないでしょ?」と一瞬思ったのですが、それは先進国に住む者の驕りかもしれません。というのは、結局、現地での乱獲を止めることができなければ、意味がありませんから。


まだまだ、アフリカは人口が増加していきます。人工が増えれば、野生動物の生息域も減っていきます。と、自分でも問題点を分かっていながら、「一体どうすればいいんだ?」という解が、やっぱり分かりません。問題提起をしながらも解決策が見いだせない、それを山形さんは「矛盾」と言っているのでしょう。


こうして書評を書いたことによって、私もその矛盾に遭遇してしまったようです。書かなければ、そこまでの考えに至らなかったかもしれません。


読書日記人気ランキング


↓↓参考になったらクリック願います↓↓
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村