読書日記人気ランキング


本書は9月20日の読書会で紹介しました。



本書との出会い

本とはどのように出会うのかが大切だと思うのです。『 ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書』に関して言えば、二つの出会いが交差しました。一つ目は、音読教育の推進者である齋藤孝氏が、著書『余計な一言』で自らくり返し音読している本として挙げていたこと、二つ目は、現在読まれている中公新書を棚卸したところ初期の良作として浮上したことによります。



柴五郎氏の略歴

柴五郎氏は幕末1860年会津藩出身で太平洋戦争終了後の1945年12月に亡くなりました。享年85歳。


1900年、駐在武官として北京に駐在中、義和団の乱が勃発、暴徒に公使館が囲まれる中、日本のみならず欧米列強の公使館の籠城戦を実質指揮し、乱後にビクトリア英国女王を始め各国からの勲章の授与を受けました。『タイムズ』にもその活躍が紹介されたことから、欧米で広く名前が知られた最初の日本人と称されています。1919年大将に進級、1921年台湾軍司令官を務め、予備役を経て1930年に退官しました。



謙虚な人柄・敗戦を断言

本書の編者石光真人氏よると、自分の武功を自慢することは全くなく、謙虚な人柄だったことがしのばれます。また、中国通でもあり、中国人を蔑ろにして始めた日中戦争・太平洋戦争は日本の敗戦を断言しました。その声が現役の陸軍幹部に届かなかったことは残念で仕方ありません。


本書のあらまし

「遺書」とありますが、正しくは柴五郎氏の少年期の記録です。だいたい期間は1868年の会津戦争から1877年の西南戦争までです。新政府軍による会津若松への総攻撃、母・姉妹の自刃、降伏、江戸での近親、斗南藩(青森県の下北半島)への実質的島流し、飢餓。少年時代に負った数々の苦痛。なにゆえにかようなひどい目にあわされなければならないのか。


その後、弘前県庁へ出仕、東京へ出立、陸軍幼年学校への入学、そして西南戦争で西郷隆盛の死と翌年の大久保利通の死をもって、少年期の記録は終わります。西郷・大久保の死を「両雄非業の最期を遂げたるを当然の帰結なりと断じて喜べり」としています。


しかしこうした苦労を、柴五郎氏は日記にはしたためていたものの、決して口外することはありませんでした。


本書の由来

明治維新の動乱期を敗戦側で過ごした柴五郎氏は十分な教育を受ける機会がありませんでした。そこで晩年の1942年、編者の石光真人氏の父が柴五郎氏と家族ぐるみのつきあいがあったこともあり、編者に校訂を依頼しました。そして時を経て、1971年に本書は出版されることになります。


勝てば官軍・負ければ賊軍

本書は明治維新の黒歴史です。通常我々が学ぶ幕末・明治維新史は勝った薩長側の立場で描かれていますが、柴五郎氏は会津藩士の生れです。本書は会津側の視点で描かれています。


現在の我々は、白虎隊の悲劇や4年前に放送された『八重の桜』により、会津戦争後の会津藩の悲劇を知るところとなりましたが、戦前の薩長藩閥政治とその延長の政治体制下では、本書のように“賊軍”であった会津側の視点に立った出版は不可能だったのでしょう。


明治維新の見直し

昨今、明治維新も見直しされつつあります。たとえば、吉田松陰はテロリスト、明治維新は薩長によるクーデターという言い方もされつつあります。靖国神社について、どちらかというと太平洋戦争の戦没者・英霊を祀るという点で私は肯定的だったのですが、本書を読んで考え直さなければならなくなりました。なぜなら、靖国神社のルーツは明治維新官軍の戦没者を祀ることから始まっているからです。賊軍扱いされた会津藩の戦没者は祀られていません。


文語表現

本書は、文語表現で書かれています。齋藤孝氏が推薦するように、音読がお薦めです。音読すれば、ほぼ意味が分かります。心にも響きます。もちろん時間はかかってしまいますが、本編は120ページぐらいで後半は解説ですので、400ページぐらいの新書を読む感覚で読めるかと思います。


読書日記人気ランキング


<目次>
  • 本書の由来
  • 第一部 柴五郎の遺書
    • 血涙の辞
    • 故郷の山河
    • 悲劇の発端
    • 憤激の城下
    • 散華の布陣
    • 狂炎の海
    • 絶望の雨夜
    • 幕政最後の日
    • 殉難の一族郎党
    • 俘虜収容所へ
    • 学僕・下男・馬丁
    • 地獄への道
    • 餓死との戦い
    • 荒野の曙光
    • 海外か東京か
    • 新旧混在の東京
    • わが生涯最良の日
    • 国軍草創の時代
    • 会津雪辱の日
    • 維新の動揺終る
  • 第二部 柴五郎翁とその時代
    • 遺書との出会い
    • 流涕の回顧
    • 翁の中国観
    • 会津人の気質
    • 痛恨の永眠
  • 柴五郎氏略歴


柴五郎
via 柴五郎 - Wikipedia (license : Public Domain)



↓↓参考になったらクリック願います↓↓
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村