落語の口演


<目次>
  • 「これはやめとくか」と立川談志は云った。
  • 新聞配達少年と修業のカタチ
  • 談志の初稽古、師弟の想い
  • 青天の霹靂、築地魚河岸修業
  • 己の嫉妬と一門の元旦
  • 弟子の食欲とハワイの夜
  • 高田文夫と雪夜の牛丼
  • 生涯一度の寿限無と五万円の大勝負
  • 揺らぐ談志と弟子の罪 ー 立川流後輩達に告ぐ
  • 誰も知らない小さんと談志 ー 小さん、米朝、ふたりの人間国宝
  • 解説 福田和也


立川流の落語家であり、テレビドラマ『下町ロケット』で佃製作所の経理部長を演じた立川談春。そんな彼の著書である本書を知ったのは、ひょんなことがきっかけだった。今年の4月に、以下のスライドが私の周囲でバズっていた。本書を題材に、企業の人材育成を解説していたのだ。



企業の人材育成に携わる身として、日本の古典芸能から学べるエッセンスがあるのなら、これは読まねばなるまい。そして読みました。結果的に★★★★★(5つ星)。


なお、『赤メダカ』は、昨年末にTBSよりテレビドラマ化されていたが、私自身が元々テレビをほとんど見ないこともあり、その存在を本書を読むまで知らなかったことはお断りしておく。読書日記人気ランキング


photo credit : vera46 via Wikipedia

落語の予備知識


落語と言えば『笑点』ぐらいしか見たことがなく、予備知識がなかったので、読了後、早速、以下の事実を確認した。立川談志は、名前は知っていたものの、顔を知らなかったことに気づいた。


  • 昇進制度:前座(無給)・二つ目(有給だが半人前)・真打(一人前)
  • 落語協会から立川談志らの独立(1982年)
  • 立川談志(1936年-2011年)
  • 柳家小さん(1915年-2002年) 談志の師匠。談志独立時に破門。
  • 立川談春(1966年~)、1984年高校中退・談志に入門、1988年二つ目、1997年真打
  • 立川志らく(1963年~)、1985年談志に入門、談春の弟分、1988年二つ目、1995年真打


本書のメッセージ


本書は、立川談春の入門から真打昇進までの伝記である。家元である立川談志、兄弟弟子とのやりとり、さまざまな葛藤、談春・兄弟弟子たちの成長。2008年に出版され、2015年に文庫化された。2008年時点では、談志は存命だったことになる。


本書は成長の物語であるが、二つのメッセージがあると受け止めた。

  1. この世は不条理・理不尽であることを踏まえつつ前へ進むこと
  2. 徹底的な徒弟制度により伝統が受け継がれること


1.この世は不条理・理不尽であることを踏まえつつ前へ進むこと

この世は、不条理なこと、理不尽なことに満ちている。それでも人は前に進まなければならない。それは、企業の中でも同じではないか。談志は「落語とは人間の業(ごう)の肯定である」と言い、「修業とは矛盾に耐えることだ」と言う。そして、やっていい苦労と避けるべき苦労がある。

どの道人間が生きていくためには、苦労、辛抱はつきものだが、我慢できる苦労とできない苦労がある。同じ苦労なら我慢できる苦労を選びなさいってことだ。 (P101)


談志という人も、ある意味とんでもない人だ。談春ら3人の弟子を築地魚河岸に奉公に出してしまうし、師匠とは絶縁状態になるし。


2.徹底的な徒弟制度により伝統が受け継がれること

そして、企業が見習うべきは、徹底的な徒弟制度ではないだろうか。バブル崩壊以降リーマンショックぐらいまで、企業の徒弟的な慣習は、どんどん排除されていった。今少し盛り返しつつあるように思う。一方、落語や歌舞伎などの古典芸能の業界は、徹底的な徒弟制度が生きている。徒弟制度により、伝統が受け継がれている。

型ができていない者が芝居をすると型なしになる。メチャクチャだ。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになる。 (P80)

(立川談志を破門にした柳家小さんに稽古をつけてもらった時)稽古の仕方、進め方が談志(イエモト)とそっくりだったのである。小さんが談志に教えたものを、同じ教え方で談春(オレ)は教わってたんだ。

談春(オレ)の芸には間違いなく、柳家小さんの血が流れていたんだ……。

そう実感できたら、何故かたまらなくなった。 (P292)


企業経営に照らし合わせる。


企業に照らし合わせて考えてみよう。企業理念や社是を社員の行動様式・振る舞いまで落とし、それを実践・伝承していくということではないだろうか。数カ月以内に2本のブログ記事で同様のことを述べているので、参照ください。


  • 【書評】『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』
    リッツ・カールトンでは、毎朝朝礼で企業理念についてのディスカッションを行っているとのこと。私は、これはすべきだと考えている。
  • 経営戦略・人材戦略と整合の取れた人材育成施策
    経営戦略を行動様式に落とすのは、結局、人材育成による。経営理念や経営戦略が浸透しないと嘆く前に、上司は部下にその意義を語り、ディスカッションして自分ごととして考えさせる努力が必要だろう。落語業界のような徒弟制度を導入せよとまでは言わない。しかし、経営理念・経営戦略が社員に浸透していないとすれば、これは100%経営とミドルマネジメントの責任である。


現在の自分がこのエピソードを振り返って感じる立川談志の凄さは、次の一点に尽きる。

相手の進歩に合わせながら教える。 (P80)


「相手の進歩に合わせながら教える。」、これは、ミドルマネジメント層にも100%当てはまる。

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