『自己組織化とは何か 第2版』についての四本目の記事です。脳もまた自己組織化の造形のなせる技です。脳が自己組織化のメカニズムがわかれば、人工知能が作れるはず。しかし・・・


<目次>

まえがき

第1章 自己組織化とはなんだろうか

第2章 自己組織化のしくみ

第3章 粘菌は自己組織化する

第4章 脳がつくるリズムとパターン

第5章 生命と人口生命の進化

第6章 生体パーツの自己組織化を操る

第7章 味覚を再現する

第8章 嗅覚を再現する

第9章 生体パーツを取り込むデバイス技術


人工知能


人工知能という問題に触れると、どうも恐怖のほうが先に立ちます。映画『ターミネーター』や『マトリックス』の世界を思い浮かべてしまいます。


本書評のひとつ目の記事で、パルス信号、鼓動が生命体の自己組織化だという話をしました。マイクロプロセッサひとつの処理速度は、とっくに神経細胞ひとつのパルス信号の速度を超えてしまっています。では、コンピュータが脳を凌駕したかというと、NOです。コンピュータがなかなか人間らしくならないのは、並列処理に限界があるからのようです。

一個の神経細胞には数線から一万個を超えるシナプスがあるといわれる。(中略)神経回路網のような一個の素子に1000個を超える入力があるようなネットワークは、現在のIC技術ではとても作ることができない。 (P103)

一つ一つの神経細胞の処理速度が遅くても、神経細胞は10000個を超えるほかの神経細胞と接続しています。神経細胞は、細胞の中で唯一成長とともに数が減っていくとのことですが、減っても急に能力が衰えないのは、たとえ一つの細胞が死んでも、迂回路が無数にあるからです。つまり、シナプスによる接続の数が増えれば増えるほど、人間の能力は増すことになります。


人工知能の研究により、人間の脳の能力を凌駕する時が来るのでしょうか?本書ではいまひとつわかりませんでした。


人工生命と生体パーツ


人工知能は、知的な作業をコンピュータに行わせる試みですが、人工生命は、生命をコンピュータで理解する試みになります。人工知能よりも、人工生命のほうが実現性が早そうです。たとえば、神経細胞の培養は、すでに実現できているとのことです。また、「自己増殖」するものを生命と定義すれば「コンピュータウィルス」は生命と言えなくもありません。


また、本書最終章では、「生体パーツ」の取り組みの紹介でした。生体パーツによるバイオ電池の取り組みは有望そうです。人間に埋め込むペースメーカーは、駆動するためのバッテリーが必要ですが、もし人体から電気を供給できるようになれば、バッテリーの心配が不要になり、小型化できますし、ペースメーカー以外にも人体組み込み型の小型医療パーツが作れそうです。


要約して説明するのが難しいので、ポイントをいくつか引用します。

私たち人間は、一日に2000キロカロリーほどの熱量を消費し続ける。酵素反応の連係プレーによる生体のエネルギー変換やエネルギー利用のしくみは、その効率の良さで、私たちのエネルギー技術を圧倒的に超えている。

しかも、生体エネルギーは一気に放出されるのではなくて、酵素活性のオン・オフで厳密に制御され、必要な分だけ放出される。たしかに、体温を一定に保つ機構はかなり厳密だ。 (P200)

生物由来の安全な材料で作られるので、寿命の問題などが解決できれば(これが難問)、体内に埋め込んで血液から発電するなどの夢が広がる。ペースペーカーに限らず、人口眼や人口内耳をはじめ、電源を必要とする埋め込みデバイスの需要は多く、血液発電への期待は大きい。 (P203)

細胞を部品とする応用研究の領域が、再生医療、創薬、バイオアッセイ、バイオリアクター、新しい情報デバイス、マイクロロボットへと急速に展開し、目が離せない分野となっている。 (P210)

神経チップ

サイボーグ技術の精度と信頼度を向上させて、実社会に導入するためには、電極と神経細胞との間の電気的なやり取りを「細胞レベル」で制御することが必要である。しかし実際には、この肝心なところがまだ十分にはできていない。 (P213)

神経細胞の培養

image from Wikipedia under license of CC BY-SA 3.0


【書評】『自己組織化とは何か 第2版』


↓↓参考になったらクリック願います↓↓
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村