財政破綻に備える 今なすべきこと (携書146)
古川元久
ディスカヴァー・トゥエンティワン ( 2015-06-18 )
ISBN: 9784799315774

<本書の目次>

はじめに 「この道」の先にあるもの

第1章 迫りくる財政破綻の足音

第2章 財政破綻の引き金のロックはもう外れている

第3章 円高トレンドから円安トレンドへ

第4章 自立した地域社会が日本を救う

第5章 「足るを知る」ことが第一歩


当ブログでも、日本の財政破綻リスクをたびたび論じてきました。


昨年あたりから、日本の財政破綻はもはや避けられない所与だとする論ずる本が増えてきました。


民主党衆議院議員・古川元久氏の本書も、その一つです。


財政破綻に至るメカニズムが非常に分かりやすく書かれています。その点、今まで読んだ本よりも高評価です。一方、処方箋のほうについては、このレベル(食料とエネルギーの地産地消)しかないのか?というのがやや残念でしたが、このレベルしかないというのが、恐らく限界のような気もしますので、処方箋にやや物足りないと思いつつも、★★★★★を贈ります。


一昨年の10月に始まった日銀の異次元緩和。偶然その日にブログ記事を書きました。


私はこの異次元緩和を支持しません。漠然と不安に思っていましたが、本書にもはっきりと書かれていました。異次元緩和には出口がない点です。

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<当ブログ記事の目次>

出口のない異次元緩和

専門家や関係者と話しをすると、多くの人が同じ懸念を持っていることがわかる。それは、「もはや、どう考えても出口はないのではないか」ということだ。つまりは、日本は戻ってこられない道に入り込んでしまったのではないかとい心配だ。 (P79)


異次元緩和の結果、日銀は民間銀行より国債を買い集めています。しかし、日銀の介入によって、国債価格の市場調整能力が失われてしまっています。

半ば日銀が意図的に作り出している低金利に財政破綻リスクなど繁栄されるはずもない。このことは市場の価格形成機能の崩壊を意味し、国債の金利から市場が発する警告を読み取ることができなくなってしまっている。さらに、このことは、住宅ローン金利などにも深刻な影響を与えている。 (P50)


異次元緩和のおかげで、本来あるべき価格よりも高値で取引されてしまっているため、民間銀行からしてみれば、日銀に高値で国債を売るチャンスです。しかし、異次元緩和を止めようとする場合、高値で買ってしまった国債はどうなるのでしょうか?売るに売れない、売れば暴落(金利上昇)の引き金を引いてしまう、だから出口がありません。

日銀が国債購入額を減らせば、今のような高値では誰も国債を買わない。だから、政府が市場で国債を売却しようとすれば、他の投資家はより低い価格でないと購入しないので金利は上昇することになる。 (P73)


黒田日銀総裁は、インフレターゲット2%を掲げた時期がありましたが、インフレ率などコントロールできないと、彼はご自身の著書で吐露しているではありませんか。だから、黒田氏自身も、出口がないとわかっているはずです。


財政破綻の端緒

では、出口がないなら、このまま異次元緩和を続け、国債を買い続ければいいかというと、そんなことはありません。


本書によると、SMBC日興証券の試算によれば、日銀の国債保有シェアは14年6月時点で27%、18年末には50%に到達するとのことです。そのまま国債を買い続けて、2020年、2025年になったら。。。。。日本国債は市場での流動性がなくなり、日銀によるマッチポンプ(専門用語では財政ファイナンスと言うらしい)になります。もちろんそこまでいかなくても、流動性の低下により格付けの低下を招くでしょう。

国債の格付けが原則キャップとなり、地方債や民間企業が発行する社債はそれを超える信用格付けは取れない。日本国債の格下げは地方債や社債の格付けにも影響するわけで、日本企業の資金調達にも影響を及ぼすわけである。 (P56)


資金調達コストの上昇は、借入債務の大きい企業(電力会社あたりか?)の経営や、やはり債務の多い地方自治体の財政を直撃することになるでしょう。国が破綻する前に、企業と自治体の破綻が始まるはずです。

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財政破綻のメカニズム


2008年に起きたリーマンショック。サブプライムローンの暴落がCDSというデリバティブ金融商品によって仕掛けられました。マイケル・ルイス(著)の『世紀の空売り』が分かりやすいです。


そして、日本国債に対しても、外資系金融機関や外資系ヘッジハンドが仕掛けてくる可能性が高いのではないでしょうか?


よく、外国人の国債保有比率は低くて、外国人の売買に左右されないと言われますが、以下の事実を知ると、そんな呑気なことは言ってられないことが分かります。

海外投資家の国債保有比率は14年12月末(速報)時点で9.3%(中略)国債の現物市場での海外投資家比率は、23.7%と2割を超え、先物市場では、49.2%と約5割を占めるに至っているのだ。 (P70)


日銀が国債を買い占めて流動性が低くなっていきますので、海外投資家は仕掛けやすくなります。


地方自治体の破綻がきっかけか、海外投資家の揺さぶりがきっかけか、何で起きるかは分かりませんが、何かの拍子に現物国債の値が崩れ、金利が少しばかり跳ね上がるような事態が発生すると、瞬く間に国債値崩れ、他の債権や株価への波及、金利上昇が連鎖的な発生する可能性があります。


実際、サブプライムローンの焦げ付きからリーマンショックに至るプロセスは、そのように起きています。しかも、日本国債残高は、リーマンブラザーズの負債残高の比ではありません。


一度金利上昇・国債の下落のタガが外れると、歯止めが利かなくなり、金利上昇・国債下落が自己再生産するがごとく起き、日本円の大暴落・ハイパーインフレの結末を迎えそうです。


いくらまで下がってしまうんでしょうね?想像がつきません。

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預金封鎖、そして食料危機とエネルギー危機


ハイパーインフレが起きると、まず間違いなく預金封鎖が起きそうです。戦後は実際に預金封鎖&100倍のハイパーインフレが発生しました。今の日本は、戦後と異なり、生産設備がありますので、一方的に100倍のようなインフレが起きる可能性はありませんが、150円とか200円とか250円あたりは、あってもおかしくないと思います。


そして、もっとも懸念するのは、食料とエネルギーの供給です。食料自給率もエネルギー自給率も低い日本は、食料危機、エネルギー危機に陥る可能性が高いです。原発再稼働反対など、一気に吹き飛びます。


処方箋=地産地消


ですので、本書の低減も、食料危機、エネルギー危機への対処としての、食料とエネルギーの地産地消です。地産地消については、藻谷浩介氏の『里山資本主義』がお薦めです。地方の経済状況が首都圏に劣るのは、経常収支赤字だからです。そして最大の赤字原因が、エネルギー供給を外部(外国)に頼っていることです。大都市圏以外の地方自治体は、まじめにエネルギーの地産地消に舵を切ったほうがいいです。


本書で取り上げられた地産地消の例


古川元久氏について


私自身、愛知県出身で1997年まで愛知県にいたこともあり、1996年に出馬した古川元久氏のことをよく覚えています。もっとも、直接の面識はありませんが。本書を読んでみて、氏の頭脳明晰さ、優秀な方だということがよく分かりました。ネガティブな評価もあるようですが、優秀な才能が政権を取れない民主党の中で埋もれてしまうのは、非常にもったいないと思います。


古川元久氏関連
ネガティブな意見
書評読み比べ


本ブログ記事内で紹介した書籍




世紀の空売り
マイケル・ルイス
文藝春秋 ( 2010-09-14 )
ISBN: 9784163730905





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