<目次>

  • プロローグ
  • 第一章『走れメロス』
  • 第二章『駈込み訴へ』
  • 第三章『晩年』
  • エピローグ


最初にお断りしておきますと、ネタばれ注意です。


11ヶ月ぶりとなり『ビブリア~』シリーズ第6巻。今までの中では一番の最高傑作だと思います。五浦大輔と篠川栞子が、古書探しの依頼を受けながら、古書にまつわる人間の関係を紐解いていくのは、お馴染みのストーリー展開なのですが、第5巻までは、一話で一冊の本を中心にした一話完結型でした。もちろん五浦と栞子との関係進展や、栞子と母智恵子との関係の紐解き、滝野蓮杖や志田のように、繰り返し登場する人物もいますが、基本的には一話完結型だったと思います。


しかし、この第6巻では覆しました。三章構成で3つの太宰治作品が取り上げられるものの、三章で一つのストーリーになっています。とても人間関係が複雑に絡みますので、図示してみました。



『ビブリア古書堂の事件手帖6』人間関係図

100%正確である自信がありませんので、間違いがありましたらご指摘ください。


「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」


太宰治が吐露した言葉とされています。次の太宰治の実体験が『走れメロス』の下敷きになっているらしいとのこと。


太宰治と友人の檀一雄は熱海温泉で遊びすぎ、支払いができなくなる。太宰は檀を熱海に置いて、師匠の井伏鱒二にお金を借りに行く。しかし、太宰がなかなか帰って来ない。檀は太宰を追いかけ上京するが、なんと太宰は井伏と将棋に興じていた。実は、太宰は井伏になかなか借金の申し入れを切り出せなかった。激怒する檀に太宰がつぶやいた言葉が「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」。『走れメロス』とは真逆の展開となっている。


『ビブリア~』では、田中嘉雄、杉尾先代は既に故人となりましたが、47年前の『駈込み訴へ』の盗難事件の真犯人が分からぬまま、田中、杉尾、小谷次郎の三人が疑われ、師匠筋の富沢博とも絶縁状態になり、ロマネスクの会も解散、三人の親友もそれ以来疎遠になってしまいました。存命の小谷と富沢の二人は47年間、真相を待たされ続けたことになります。


友の裏切り~『駈込み訴へ』

はい、旦那さま。私は嘘ばかり申し上げました。私は金が欲しさにあの人について歩いていたのです。

これは『駈込み訴へ』の一節ですが、キリストに対するユダの裏切りがベースになっているとのことです。


『ビブリア~』では、田中嘉雄は五浦絹代との恋ならぬ恋のため、久我山尚大に教唆され、富沢博から『駈込み訴へ』を盗んでしまいました。盗んでまで手に入れたいと思わせる稀覯本は、人を狂わせるものがあります。


『晩年』の稀覯本


栞子の持つ『晩年』のアンカット版は、栞子の祖父聖司が、富沢博の『駈込み訴へ』を取り戻した褒美として、富沢博からいただいたものでした。一方、自家用(自殺用)『晩年』は、杉尾先代~田中嘉雄を経て、久我山尚大が田中嘉雄から買い叩き、久我山真理が相続しています。


田中俊雄が探してたのは栞子の持つアンカット版ではなく、久我山真理の所有する自家用のほうでした。 『ビブリア~』第6巻は全体で、『晩年』の稀覯本をめぐる人間関係を紐解いていくことになります。紐解いた結果が上の人間関係図のとおりです。


「人と古書の繋がりを守る」


『ビブリア~』シリーズのテーマを一言で言えば、「人と古書の繋がりを守る」ということになるのでしょうか。人と古書のソーシャルネットワークと言い換えてもいいかもしれません。第6巻の中でも、「人と古書の繋がりを守る」というフレーズや描写が何度も登場します。

不思議な思いに浸っていた。本当にこれは七十五年前に太宰治本人が手元に置いていた本なのだ。俺たちの知るだけでも、杉尾の父親、田中嘉雄、久我山尚大の手を経ている。本の中身にも、これをもっていた太宰自身にも、その後手に入れた人々にも、それぞれの物語がある。それらがすべてこの一冊に詰まっている。

このようなかたちで、人と古書の繋がりは描写されます。


関連書籍・関連リンク


『ビブリア~』の古書をめぐるミステリー、稀覯本が人を狂わせる様は、この『せどり男爵数奇譚』に着想を得ているとのことです。稀覯本の金額の跳ね上がり度合いは、本書のほうが激しいです(200万ドル、7億2000千万円まで跳ね上がる)。ただ、五浦くんと栞子さんのような恋愛エピソードは本書にはありません。


『ビブリア古書堂の事件手帖』関連リンク


書評読み比べ



修正履歴


『晩年』アンカットの行き先が篠川文香になっていたが、正しくは篠川栞子。また、田中敏雄から五浦大輔への依頼事項も追加。(2015年1月18日 13:45)



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