『ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~』


一度完結した『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ。満を持して続編の本書を読みました。


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タイトルと表紙からの考察

まず、本書のタイトルで気になる点は2つ。第7巻まで続いた後の本書が第8巻とならずに振り出しに戻ったこと。これまで副題は「栞子」の名前を冠していましたが、今回からは「扉子」になりました。


そして、表紙を見ると、栞子さんの向かいに黒髪ロングストレートの少女が座っています。他でもありません。栞子さんと五浦大輔くんの子どもの扉子ちゃんです。前7巻が2010年から2011年という設定なのに対し、本巻は現在(2018年)に設定されています。栞子さんと五浦くんは前7巻のあとすぐに結婚し、その1年後に生れたのが扉子。現在6歳です。お母さんににて、大変な本好きです。


今まであまり細部まで気にしたことがなかったのですが、扉子が読んでいる本には王冠が記されています。本書の中に登場する内田百閒の『王様の背中』でしょうか。


<目次>

  • プロローグ
  • 第一話 北原白秋 与田準一編『からたちの花 北原白秋童謡集』(新潮文庫)
  • 第二話 『俺と母さんの思い出の本』
  • 第三話 佐々木丸美『雪の断章』(講談社)
  • 第四話 内田百閒『王様の背中』(楽浪書院)
  • エピローグ


人と人をつなぐ本

これまでの『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズといえば、一冊百万円から一億円超までの稀覯本にまつわるエピソードが中心でした。古書店同士が稀覯本を巡って競り合い、時には、栞子さんが階段で突き落とされるなど暴力沙汰にも発展することもあれば、お互い裏をかき、騙し騙されつつ話が進展します。その中で、それぞれの登場人物の抱えている人生における悩みや問題点も、栞子さんによる洞察で炙り出されていきます。ミステリー小説仕立てになっており、それゆえに「事件手帖」と命名されていました。


しかし、本書は全く趣が異なります。第四話で稀覯本が出てきますが、それよりも本が人と人をつなぐ存在であることがハイライトされ、ほっこりします。


第一話では、老境に差し掛かった坂口昌志、彼が恩を感じている異母兄の平尾和晴、その娘の由紀子。断絶関係にあったのですが、幼い由紀子に『からたちの花』の歌ったのは、父平尾和晴ではなく坂口昌志氏でした。


第二話では、豪邸に住む母・磯原三喜と、31歳で亡くなった秀実、そして秀実の妻のきらら。教育ママだった三喜は嫌がる秀実に絵画やピアノを習わせますが、秀実はゲームをやりたいと癇癪を起こすような子どもでした。親の期待に反し、秀実はラノベのイラストレーターの道を選び、コスプレオタクのきららを伴侶に選びます。親としては子育てに失敗したと思い、息子夫婦と疎遠でした。


しかし、そんな秀実が亡くなる直前、母がくれた本が見つかったことを大喜びし、母に見せる約束をしたまま亡くなってしまいます。母はその本が何であったかが分かりません。栞子さんがファイナルファンタジーのピアノ楽譜であることを見抜くわけですが、秀実がファンの集いで演奏したことをきっかけにきららと出会いました。つまり縁結びの曲でした。


ピアノ楽譜が自分の職業に活かされ、かつ伴侶を得るきっかけにもなったことから、母に大変感謝していたわけですが、そのことを直接伝える前に亡くなってしまいました。しかし、栞子さんがその謎を解き明かし、母三喜と嫁きららの仲を取り持つことができました。思わずうるっときた瞬間です。


第三話では、ホームレスせどり屋の志田が与えた『雪の断章』が高校生だった小菅奈緒と紺野祐汰の二人の仲を取り持ちます。淡い恋心に二人は赤面です。第四話では、第7巻で栞子に敗れた吉原喜市の息子吉原孝二が、ビブリア古書堂に売られかかった『王様の背中』を騙して奪おうとして失敗に終わるエピソードです。


全体としては、以上四つのエピソードを、個人情報を適当にぼやかせながら栞子さんが扉子に語り、扉子は幼いながら本が人と人との出会いを紡いでいく様子を学んで(?)いきます。今後、扉子がどんな風に成長していくのかが楽しみです。


本書では大輔は直接は登場せず、上海へ出張中という設定になっています。しかし、ある大事な本をどこかに置き忘れ、栞子さんに探してくれるよう依頼します。その本が実は・・・・(読んでのおたのしみ)



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