18世紀末から19世紀にかけて手に入れた民主主義は、21世紀には崩壊するのだろうか?
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朝活読書サロン2016年8月18日関連記事
『21世紀の歴史』
8月18日の朝活読書サロンで紹介を受けたジャック・アタリの『21世紀の歴史』。
21世紀とある通り、歴史書ではなく、未来予測の本のようです。
ジャック・アタリについてWikipediaで調べると、アルジェリア系フランス人で、ミッテラン大統領の補佐官を務めた後、ベルリンの崩壊以降に設立された欧州復興開発銀行の初代総裁に就任。オーケストラ指揮者も務める多才ぶりです。いくつか、世界史や社会学関連の著作があるようで、本書もその一つです。
本書について言及しているいくつかのサイトによると、この後の世界には5つの波が押し寄せるとのこと。
- 第一の波 「アメリカ支配の崩壊」
- 第二の波 「多極型秩序」
- 第三の波 「超帝国」
- 第四の波 「超紛争」
- 第五の波 「超民主主義」2060年頃~
- ヨーロッパの知”ジャック・アタリ”の予言する21世紀の歴史 - NAVER まとめ
- (本)ジャック・アタリ「21世紀の歴史」—「ノマド」よりも「トランスヒューマン」に注目 : まだ東京で消耗してるの?
アメリカ支配の崩壊、多極型秩序、超紛争
第一、第二、第四の波に関連する事象はすでに起きていると言えます。
具体的には、
- 中東問題、特にISIS問題
- 中国の台頭、ここ最近では南シナ海への侵略、東シナ海での日本への挑発
- パキスタン、イラン、北朝鮮への核兵器拡散
- これらの動きを抑えることができず、世界の警察をやめようとするアメリカ
そもそも現代の国家概念は18~19世紀以降に欧米で形成されたものです。
年表を紐解いていくと以下のとおり。
- 1689年 イギリス無血革命
- 1776年 アメリカ独立宣言
- 1789年 フランス革命とその後のナポレオン帝国
- 1815年 ナポレオン失脚とウィーン体制
- 1853年 ペリーが日本に来航とその後の明治維新
- 1857年 セポイの乱とその後のイギリスによるインド支配の確立
- 1871年 ドイツ帝国成立
- 1900年 義和団の乱と清の屈伏、その後の辛亥革命(中国秩序の破壊)
- 1917年 ロシア革命、つづいてドイツ帝国・オーストリア帝国の崩壊
- 1922年 オスマン・トルコ帝国の解体と共和制への移行(イスラム秩序の破壊)
西欧と米国が中東欧・ロシア・中国・イスラムの秩序を破壊し、西欧と米国の秩序を世界に押し付けたのが20世紀の歴史とするならば、今起きている中東や中国の事象は、歴史の歯車が逆転し出したと見ることができるのではないでしょうか?
グローバル化
第三の波の超帝国というのは、消費・文化・IT・金融など、企業によるグローバル化のことでしょうか。
- 消費のグローバル化:コカ・コーラ、マクドナルドなどのアメリカの消費行動のグローバル化
- 文化のグローバル化:ハリウッド映画、メジャーリーグ、プレミアムリーグなど
- ITのグローバル化:Microsoft、Google、Amazon、Facebookなど
- 金融のグローバル化:ブロックチェーン?
第四の超紛争では、人間の流動化を招くとのことです。
- 超ノマド:スポーツ選手・アーティスト・超一流ビジネスパーソンなど
- 下層ノマド:難民、移民など
民主主義の行き詰まり
現在、ヨーロッパで、アメリカで、そして日本では、民主主義の行き詰まりと思われる事象が生じています。
- イギリスのEU離脱問題
- アメリカ大統領選で共和党候補にドナルド・トランプが指名される。
- 反対するだけの政党に転落した民進党、相反する政治哲学を有する民進党・共産党の共闘
民主主義が行き詰まった後、超民主主義社会が到来するのでしょうか?
それは一体、どのような形態なのでしょうか?
関連書籍
本書を紹介してくれたレイさんによると、『21世紀の歴史』の世界観が、『ワンピース』の世界観に似ているのではないかとのことでした。無念なことに、私、実は『ワンピース』を読んだことがないのです。現在82巻まで発売されたとのことで、とてもキャッチアップできそうにありません。
世界史の大局を俯瞰するなら、この本がよいということで『銃・病原菌・鉄』を薦めました。なぜ、人類の文明はユーラシア大陸で生じ、アフリカや南北アメリカはヨーロッパ人に征服されたのでしょうか?
それは、ユーラシア大陸が東西に長い大陸なのに対し、アフリカ大陸と南北アメリカ大陸は南北に長いからです。ユーラシアでは、温暖地帯が東西に長く続いており、その温暖地帯を通じて、遠くまで交易することが可能でした。一方、アフリカ大陸と南北アメリカ大陸は、南北に長く、しかも途中ジャングルで隔てられ、交流が不可能でした。事実、ペルーのインカ帝国とメキシコのアステカ帝国は、お互いを知らなかったとのことです。
ユーラシア大陸の東西の交易で伝搬したものが、穀物と家畜です。家畜と同居することにより、家畜から人間が感染症にうつり、ユーラシア人は感染症に対する耐性を身につけました。しかし、家畜が稀有であった南北アメリカの住民たちは、感染症に対する耐性を身につけておらず、ヨーロッパ人のもたらした感染症によって壊滅的な打撃を受け、人口を大幅に減らすことになります。
すべての古代文明はユーラシア大陸に集中し、辺境のアフリカ、ニューギニア、オーストラリアで文明が生じなかったのは、交易がなかったことが原因です。
読書会では紹介しそびれましたが、おすすめの近未来予測本がありました。
書評はすでに書いてありますので、あわせてご参照下さい。
環境問題、エネルギー問題、食糧問題の不都合の予測を提示します。民主主義が判断を遅らせ、致命傷になるのではないかという懸念を示すとともに、中国などの独裁国家のほうが迅速の判断を取ることができ、民主主義国家にとって替わられる可能性があることを指摘しています。
以上
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