企業不祥事・業績悪化・経営破たん
前世紀の終わりごろから、多くの大企業が不祥事・業績悪化・経営破たん・廃業に至りました。山一證券、北海道拓殖銀行、日産自動車、三菱自動車、そごう、ダイエー、雪印乳業、日本航空、シャープ、そして東芝。他にもあったかもしれませんが、そらんじて出て来たのは以上の企業です。
これらの企業の中には私の友人が勤めている企業もあれば、顧客企業もあります。心情的にも安易に論ずることができません。
経営責任とは?
これらの企業の問題はなんであったのかと一言で申せば、経営責任であろうと思います。しかし、その経営者の資質とはなんぞや?といったところまで踏み込んだ論説はあまり聞きません。そこで、経営者の資質まで踏み込んで論ずれば、企業不祥事・業績悪化・経営破たんは、経営者の無教養が原因であると私は考えます。
とすれば、その防衛手段は自明です。教養を積むこと。これしかありません。経営者であろうと、それらの企業で勤めている者であろうと同じことです。
教養と無教養
教養と無教養は非対称です。
無教養の人には教養のある人を見抜くことはできません。
しかし、教養のある人は無教養の人を見抜くことができます。
つまり、たとえ経営の舵を取る身でなくても(99%のビジネスパーソンが該当する)、教養を積んでおけば、経営者に教養があるかどうかは一瞬で見抜けます。無教養の経営者が舵を取っている企業は危ういので、万が一、自社の経営者が無教養だと分かったら、早晩転職するか、最低限、馬鹿な意思決定をしないよう封じ込める策を講じておくことが肝要です。
読書
教養を積む最良の方法は、古今東西、老若男女問わず、読書しかありません。
感覚的に、読書習慣が身についている人は、ビジネスパーソンの数%だと考えています。読書をしようと思って最初に困るのは、何を読むべきかです。そこで、タイトルにある「企業不祥事に巻き込まれないために最低限読んでおきたいビジネス書」という観点で、選書してみました。
押しも押されぬ日本最大の企業です。大量生産が当たり前だった業界に多品種少量生産、混流生産を持ち込んだのがトヨタ自動車です。たとえ世の中がIT化されようと、製造業であろうとなかろうと、見える化・平準化・品質の作り込み、ムダ・ムラ・ムリの排除などの概念は役に立ちます。
戸部 良一, 寺本 義也, 鎌田 伸一, 杉之尾 孝生, 村井 友秀, 野中 郁次郎
中央公論社 ( 1991-08 )
ISBN: 9784122018334
太平洋戦争の緒戦の敗戦原因を分析した本です。この本を読んだ時、私は戦慄を覚えました。なぜなら、上記に挙げた不祥事企業群は、太平洋戦争の日本軍と同じ過ちを繰り返しているからです。責任の所在が曖昧な意思決定、兵站を無視した作戦。今もそこかしこで起きているではありませんか。
この本は何人もの方に薦めました。しかしなかなか読んでくれません。ほとんどのサービス業は対面ビジネスのため、生産性を上げるのが難しいです。生産性を上げるには、知識を蓄積し、蓄積した知識を活かしてお金に換えていくしかありません。
本書はマッキンゼーの日本代表だった大前研一氏が、世界一高いコンサルフィーを請求するコンサル会社の手口を暴露した本です。読めば、「なるほど、この手があったか!」と思えます。教育機関にお勤めの方、ぜひ読んでください。銀行にお勤めの方、ぜひ読んでください。教育機関や銀行の在り方が変わります。そして、クラウドビジネス、IoTビジネスのエッセンスも、本書にあります。教養があるかどうかというのは、そういうものの考え方ができるかどうかです。
先月読んだばかりですが、本当に目から鱗でした。この1~2年、働き方改革を提唱する企業が増えてきました。本書はその先を行っています。この手のまともな本が日本の大学から出てこないことが、本当に嘆かわしいです。つまり、日本の文系の大学は、教養を提供する能力が低いということです。
『LIFE SHIFT』を除き、どれも古典的名著です。しかしたとえ古くても、物事の本質は不変です。逆に、ヒントになることが多いです。どのビジネス書を読むべきか悩んでおられる方がいましたら、まずはこれらの本から読み進んでいただければ幸いです。
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