<『古典力』目次>
- はじめに
- 第一章 古典力を身につける 今、なぜ古典力が必要なのか
- 古典を読むための十カ条
- 第二章 生きた古典力 四人の先人のワザ
- 実践を支える古典力 渋沢栄一の論語の活かし方
- 孔子に学ぶ古典力 古典がつなぐ仲間意識
- ゲーテに学ぶ古典力 偉大なものを体験する
- 古典を固定観念から解き放つ 小林秀雄に学ぶ古文の読み
- 第三章 マイ古典にしたい名著五〇選
- 作品世界にどっぷり浸かる
- たった一冊の本が、時代を、社会を変えた
- 古代の世界は骨太!
- 書き手の感性や人となりを味わう
- 人間のおろかさ弱さを見つめる
- 社会の中の人間
- 生きる覚悟、生の美学
- おまけのプラス五〇選
- あとがき
- 本書で取り上げられた作品ならびに索引
本書で述べている「古典」には、紀元前の中国やギリシアの古典から、時を経て18世紀、19世紀の名著、一部は第二次世界大戦後の著作も含まれます。ほとんどが100年、1000年の時に揉まれて現代に継承されている書物です。情報の移り変わりの速い現代だからこそ、齋藤氏は古典を読む必要性を説きます。その箇所を引用します。
情報の新陳代謝の速度が急速に上がってきた現代において、古典はむしろ価値を増してきている。移り変わる表層の景色に目を奪われ、「自分は大丈夫なのか」と不安になり浮足立つ。そんな時、百年、千年の時を超えて読み継がれてきた書物を読むことで、「ここに足場があった」と自信を持つことができる。
絶対の真理などはないのかもしれない。しかし、かなりの程度の「妥当」だと思える考え方はある。(中略)
古典を数多く自分のものとすることで、この「妥当性の足場」をたしかなものにしていくことができる。 (P3)
以上のように、冒頭では古典とはそもそも何かを論じた後、第一章では「古典を読むための十カ条」を、第二章では先人のワザを、第三章では「マイ古典50選」という齋藤孝氏自身による選書を紹介します。この齋藤氏の選書こそが、私が次に読むべき本を掘り出す金鉱になります。
なお、本書は【朝活読書サロン】第99回(2017年12月25日)で紹介しました。
本ブログ記事の目次
古典を読むための十カ条
- 第一条 一通りの知識を事前に得る
- 第二条 引用力を磨く
- 第三条 さかのぼり読み - 古典の影響を読み取る
- 第四条 パラパラ断片読み - 全部を読もうとしない
- 第五条 我田引水読み - 自分の経験に引きつける
- 第六条 つかり読み - 作品世界にどっぷりつかる
- 第七条 クライマックス読み
- 第八条 演劇的音読
- 第九条 バランス読み
- 第十条 マイ古典の森をつくる
引用する、全部を読もうとしない、自分の経験と照らし合わせて読む、クライマックスシーンを読む、音読をすることにより臨場感を持つといった内容は的を射ていると思うのだけど、「全部を読もうとしない」というのはなかなかできておらず、このことは肝に銘じたほうがよさそうです。
また、本書では「マイ古典の森をつくる」と述べていますが、齋藤氏が後から執筆した著書『余計な一言』では、読書は「精神の森を豊かにする」と述べています。メッセージが改良されたかなと感じます。
齋藤孝氏のマイ古典50選
では、齋藤氏のマイ古典50選をリストアップします。
作品世界にどっぷり浸かる | ||
カラマーゾフの兄弟 | ドストエフスキー | ◎ |
源氏物語 | 紫式部 | ◎ |
千夜一夜物語(アラビアンナイト) | - | ◎ |
百年の孤独 | ガルシア=マルケス | × |
嵐が丘 | エミリー・ブロンテ | △ |
ファウスト | ゲーテ | △ |
ドン・キホーテ | セルバンテス | △ |
たった一冊の本が、時代を、社会を変えた | ||
方法序説 | デカルト | △ |
星界の報告 | ガリレオ・ガリレイ | × |
社会契約論 | ルソー | △ |
共産党宣言 | マルクス、エンゲルス | △ |
種の起源 | ダーウィン | △ |
学問のすゝめ | 福澤諭吉 | ● |
生物から見た世界 | ユクスキュル | ● |
精神分析入門 | フロイト | △ |
古代の世界は骨太! | ||
旧約聖書・新約聖書(福音書) | - | ◎ |
古事記 | - | ◎ |
オイディプス王 | ソポクレス | △ |
ギリシア・ローマ神話 | - | △ |
『史記』 | 司馬遷 | ◎ |
万葉集 | - | △ |
論語 | 孔子 | ◎ |
饗宴 | プラトン | ● |
書き手の感性や人となりを味わう | ||
福翁自伝 | 福澤諭吉 | △ |
フランクリン自伝 | フランクリン | ● |
徒然草 | 兼好法師 | △ |
枕草子 | 清少納言 | ◎ |
おくのほそ道 | 松尾芭蕉 | △ |
ゴッホの手紙 | ゴッホ | × |
人間のおろかさ弱さを見つめる | ||
阿Q正伝 | 魯迅 | △ |
罪と罰 | ドストエフスキー | ◎ |
変身 | カフカ | ● |
赤と黒 | スタンダール | △ |
ブッダのことば | - | △ |
マクベス | シェイクスピア | ● |
社会の中の人間 | ||
監獄の誕生 監視と処罰 | フーコー | × |
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 | ウェーバー | ◎ |
マネジメント | ピーター・ドラッカー | △ |
風姿花伝 | 世阿弥 | × |
君主論 | ニッコロ・マキャヴェッリ | ● |
悲しき熱帯 | レヴィ=ストロース | × |
生きる覚悟、生の美学 | ||
きけ わだつみのこえ | 日本戦没学生記念会 | △ |
平家物語 | - | ◎ |
「いき」の構造 | 九鬼周造 | × |
存在と時間 | ハイデガー | △ |
死に至る病 | キェルケゴール | ◎ |
武士道 | 新渡戸稲造 | ● |
五輪書 | 宮本武蔵 | △ |
ツァラトゥストラはこう言った | ニーツェ | ◎ |
夜と霧 | フランクル | ● |
- | 凡例 | |
● | 原文・現文訳を読んだ。 | 9冊 |
◎ | マンガ/児童書は読んだ。 | 13冊 |
△ | タイトルだけ知っている。 | 21冊 |
× | タイトルも知らなかった。 | 7冊 |
意外とマンガや児童書で読んでいるなということに気づきました。また、タイトルも知らない本もいくつかありました。
読了していた9冊について、おさらいしておきたいと思います。
齋藤50選で読了していた9冊
『学問のすゝめ』
読書記録によると、別の著者の方の翻訳を4冊読んでいます。齋藤孝氏の現代語訳がお薦めです。この後も齋藤孝氏の本が続きますが・・・・齋藤氏に見事にはめられました。
『生物から見た世界』
IT業界では「人工知能」バブルが生じています。しかし、これこそ浮足立っていると言わざるを得ず、人工知能学者の三宅陽一郎氏は、「人工知能以前に知能が分かっていない」と論破します。三宅氏の推薦書にあったのが本書。「知能」とは何かの洞察を深めるには、本書が欠かせません。
『饗宴』
読みましたが、ほとんど記憶に残りませんでした。ギリシア古典は私には相性が悪いようです。先日もプラトンを読みましたが、途中で挫折しました。
『フランクリン自伝』
アメリカ合衆国建国の父の一人と言われるベンジャミン・フランクリン。アメリカ人的なるもの、アメリカ人の思想は、彼の思想に依拠すると思いますが、本書を読了後の書評を書きそびれたため、それが何であるか、今となっては思い出すことができません。読了後にアウトプットは必要です。書評を書くだけでなく、「人に紹介する」でもよいと思います。
『変身』
この本を読んだのは、大学を卒業して社会人1年目の1992年。なぜ覚えているかというと・・・当時、交際中の女性がいなかったこともあり、週末は毎週映画を観にいっていました。カフカの映画を観て、『変身』という本を知り、主人公が虫に変身してしまうという物語に興味をそそられ、読みました。なんの映画だったか、今の今まで忘れていたのですが、検索すると出てきました。便利になったものです。モノクロ映画だったことは覚えており、この映画で間違いありません。
『マクベス』
こちらは1990年5月、大学三年生の時にE.S.S.で講演しました。シェイクスピアの原文を読んでいます。もちろん新潮文庫版も読みました。シェイクスピア悲劇の中では一番好きな作品(内容をほとんど諳んじている作品)です。
『変身』といい、『マクベス』といい、新潮文庫は無地だったのですが、現在はデザインされているんですね。
『君主論』
読書記録を見ると、解説本を含めて5冊を読んでいます。原文訳に触れたければ、講談社学術文庫の佐々木毅訳がお薦めです。佐々木氏は東大総長を務めた方です。以下の書評は中公クラシックス版を読んだ時に書いたものです。
2書とも、イタリアの人名・地名がバリバリでてきます。『君主論』でチェーザレ・ボルジアのことを知り、その後、チェーザレの漫画を読みました。
また、こちらは成毛眞氏の「君主論」論です。成毛氏の解釈・持論であって、君主論の学術的解釈ではないので、その点ご注意ください。
『武士道』
『武士道』は、PHP文庫本しか読んでいません。1冊しか読んでおらず、書評を書くに至っていないこともあり、未だ説明できるほどの理解をしていません。岩波文庫版は読んでいないため、再読しようかな。
『夜と霧』
本50選の中で、第二次世界大戦後に書かれた3冊のうちの1冊です。他の2冊は、『悲しき熱帯』と『きけ わだつみのこえ』です。齋藤氏は『余計な一言』でも推薦しています。
齋藤50選からの選書6冊
さて、齋藤孝氏の選書から何を読むのかも洗い出しておきたいと思います。
『カラマーゾフの兄弟』
筆頭は『カラマーゾフの兄弟』。これほどまでに私に読め、読め、と今迫って来る本はありません。世界の文学作品を読む(2018年に向けて)でも取り上げました。
『アラビアン・ナイト』
ケイト・D. ウィギン, ノラ・A. スミス, W.ハーヴェイ,
Kate Douglas Wiggin, Nora A. Smith, 坂井 晴彦
福音館書店 ( 1997-06-25 )
ISBN: 9784834014204
ディクソン, ジョン・キデルモンロー, E. Dixon, 中野 好夫
岩波書店 ( 2001-09-18 )
ISBN: 9784001140903
こちらは、ライフネット生命創業者の出口治明氏のセレクトからの一品です。出口氏、齋藤氏の2名に「読め」と迫られたことになります。世界の文学作品を読む(2018年に向けて)にも追加しておきます。福音館書店版はハードカバーで厚いようで、やや平易な文章になっているかもしれませんが、岩波少年文庫版で読んでみることにします。
『万葉集』
本書、手元にあることになっており、このブログ記事を書く前に探したのですが、どうも見当たりません。『万葉集』には「やまとことば」だけで書かれており、今はなくなってしまった言葉もあるかもしれませんが、『百人一首』、『枕草子』、『徒然草』などと同じく、「日本語を味わう」には、もってこいの本かと思います。
『福翁自伝』
『学問のすゝめ』は幾通りも読みましたが、福沢諭吉氏自身は、自分について何を語っているのでしょうか?こちらも齋藤孝氏の現代語訳版です。
『徒然草』
『万葉集』とならび、「日本語を味わう」ために読んでみたいと思います。日本人の美意識のよりどころが見つかるような気がします。
『論語』
『論語』は、漢文訓読で読破したつもりでしたが、読書記録を見るとありませんでした。もちろん、いくつかのフレーズは知っていますが、全体を見渡したわけではないということになります。チャレンジしてみたいところです。
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