小西美術工藝社が補修した霧島神宮

霧島神社の屋根

霧島神社の屋根 posted by (C)mimizk ライセンス:CC BY 2.1 JP



2020年の東京オリンピックを控え、日本在住の外国人による日本観光論の本が増えているように感じるのは気のせいでしょうか?『外国人だけが知っている美しい日本~スイス人の私が愛する人と街と自然~』、数日前に読了した『ニッポン景観論』、そして本書。


本書は、日本の文化財の保護・保全に努めている小西美術工藝社の社長デービッド・アトキンソンさんの著書です。国宝を守ることにより経済成長をさせようという意欲的なタイトルが目立ちました。


<目次>

はじめに

第一章 外国人が理解できない「ミステリアスジャパニーズ現象」

第二章 日本の「効率の悪さ」を改善する方法

第三章 日本の経営者には「サイエンス」が足りない

第四章 日本は本当に「おもてなし」が得意なのか

第五章 「文化財保護」で日本はまだまだ成長できる

第六章 「観光立国」日本が真の経済復活を果たす

おわりに


日本の政治・経営批判の本


しかし、本書のふたを開けてみると、観光立国論は二章分のみで、残りの四章は日本の政治・経営批判です。政治家・官僚・経営者の方々は、かなり耳が痛いかもしれません。


デービッドさんは、元々ゴールドマンサックスでアナリストをされていた方です。日本の政治や経営には数字が使われず科学的ではない、未だ精神論・感情論に立脚した非効率性や自画自賛が横行していることをずばり指摘しています。デービッドさんの指摘事項をざっと書き出しました。


  • 日本が技術立国だという根拠はない。
  • 日本人は都合のいい話をくっつける傾向にある。
  • バブル崩壊時の不良債権の数字をうやむやにした。
  • 効率は他の欧米諸国と比べて高くない。一人当たりの購買力平価は25位。
  • 公共事業において検査制度がない。
  • 最近の経営者に楽して儲けたいという姿勢がある。
  • 過去をすぐに忘れる。
  • 働かない経営者がいる。
  • コンセンサスは時間の浪費。コンセンサスよりも客観的事実や数字が大事。
  • 会社に居座る元経営者は老害。根回しは高齢者に有利。
  • 日本に必要なのは分析。
  • オリンピック選考で「おもてなし」が評価されたというのは大いなる誤解。
  • 供給者側都合、自画自賛の「おもてなし」になっていないか?


文化財保護


どうやら、日本人は、「日本は外国人がうらやむ独自の歴史のある国だから、歴史的建造物はほかっておいても人が集まる」と勘違いしているのかもしれません。しかし、日本への観光客数は、中国のみならず、韓国やタイ、マレーシアよりも少ないです。訪日外国人が1000万人を超えて、喜んでいる場合ではないようです。文化財の補修と観光客呼び込みを戦略的に行っていけば、もっと観光客数を増やすことができそうです。つまり、まだまだ伸び代が大きいです。


アナリストらしく、デービッドさんは日本と英国の文化財補修費も数字で比較しました。


日本 イギリス
保存修理予算 81.5億円 約500億円
GDP 478兆円 276兆円
GDP比率 0.0017% 0.18%
人口 1億2713万人 6411人
1人当りの予算 64円 780円
観光客 1036万人 3117万人
雇用 187万人 310万人
文化財訪問率 23.5% 80%以上
指定文化財建造物   2630件(4895棟)   約12500棟


京都を訪れた外国人は、いろんな統計情報があるようですが、ざっくりと100万人から200万人です。一方、ロンドンのほうは、大英博物館単独でも、訪問した外国人は420万人にも上るとのこと。


世界平均ではGDPに占める観光業の割合は9%。日本はわずか2%です。訪日観光客を今の2倍、3倍に伸ばし、GDPを押し上げるというのも、それほど無理なことではなさそうです。総人口以上に生産人口の減少が速い日本では、日本人自身の消費を増やすことはほぼ絶望的です。日本にとって観光産業は、日本国内の消費を押し上げる成長産業の切り札になりそうです。


関連した考察


伝統工芸

実は、文化財保護ともう一つ、重要な施策が必要です。それは伝統工芸の保護です。右下がりの産業になっています。過去30年の間に伝統工芸品の産業は5分の1に減ってしまいました。



日本に対する誤解

また、慰安婦問題等、日本が英語圏諸国から誤解を招く原因も、訪日観光客の少なさも影響を与えているかもしれません。なぜなら中国や韓国を訪問する欧米人のほうが多いとなれば、日本人の主張よりも、中国人や韓国人の声のほうが耳に入りやすくなります。



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