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本書の構成

昨年10月に発売され、ベストセラー中の同書について、ひょんなことから読むことにしました。原著は2012年に発売され16章構成で、前半は形而上学的な問題を、後半は倫理と価値の問題を採り上げていますが、日本語版では2章から7章を省略し、その部分をわずか12ページの「日本の読者のみなさんへ」に集約しています。そのため、本書のサブタイトルには「日本縮約版」と書かれています。


著者曰く、本書は「死」に関する本とはいえ、死に至るプロセス、悼み、悲しみ、葬儀などは取り上げず、「死の本質」あるいは「死という現象にまつわる心理学的な疑問や社会学的な疑問」を取り上げます。


魂の存在有無と人格の同一性

「日本の読者のみなさんへ」によると、日本語版で省略されてしまった章で念入りに触れているのは、魂の存在の有無や人格の同一性の問題です。これらの案について、複数案提示するものの、筆者自身は既に結論を持っています。読者に対し説得を試みるつもりであるとしていますが、一方で読者自身が自ら考え、死に向き合うことの大切さも訴えます。


魂の存在の有無については、二つの考え方を提示します。身体と魂は別々に存在する、つまり身体が死んでも魂は残るという考え方の二元論と、魂なるものは存在せず身体の死で終わりとする物理主義です。著者の結論は魂は存在しない物理主義で、この点、私も同意見です。


また、人格の同一性の問題については「魂説」「身体説」「人格説」の三説を提示します。今日の私と明日の私が同一であるという条件は何か、それぞれ魂が同一であること、身体が同一であること、人格が同一であることとしています。魂説は二元論、身体説は物理主義に対応しますが、人格説は両方にまたがります。図示すると以下のようになります。


人格の同一性の問題~『「死」とは何か』より


テクノロジーの進化により、たとえ身体が死んでも、人間の記憶や感情全てを抜き取り人格を再現することができるようになるという考え方もあります。


ここまでは本書の第二章までに書かれていることで、ここからは私の考察です。


<目次>
  • 第1講 「死」について考える
  • 日本の読者のみなさんへ
  • 第2講 死の本質
  • 第3講 当事者意識と孤独感──死を巡る2つの主張
  • 第4講 死はなぜ悪いのか
  • 第5講 不死──可能だとしたら、あなたは「不死」を手に入れたいか?
  • 第6講 死が教える「人生の価値」の測り方
  • 第7講 私たちが死ぬまでに考えておくべき、「死」にまつわる6つの問題
  • 第8講 死に直面しながら生きる
  • 第9講 自殺
  • 死についての最終講義 これからを生きる君たちへ
  • 訳者あとがき


考察


映画ではよく描かれている世界観で、私が知る限りでも3点あります。


  • 『トータル・リコール』(1990年) 人間の脳に夢をインストールする。
  • 『シックス・デイ』(2000年) 人間の網膜経由で人格全体をインストールする。
  • 『トランセンデンス』(2014年) 人間の人格を量子コンピュータに移植する。


さて、私の考えはというと、「身体説」です。身体が死ねば一巻の終わりです。他へ移植することはできません。なぜそう考えるのか?


ここで人格を構成するものには、知覚・感覚・意識を含みます。感覚や意識は全て脳に宿っていて、脳のレプリカができれば移植が可能かもしれません。しかし、感覚や意識というのは、脳に局在しているのではなく、全身に分散してしまっているのではないかと思います。たとえば、手のひらや足の裏には、さまざまな反射神経(いわゆるツボ)が存在すると言われています。


脳科学が示すもの

さまざまな脳科学の本を読みましたが、脳科学が示しているのは、意識というものはどこにもなく(つまり魂はどこにも存在しないということ)、電気信号にしか過ぎないということです。それなのにどうして「私」が存在するのか。それはまだ解明されていません。


脳のどこかの部位に「私」が局在するのなら、人格を移植することを可能とする「人格説」が成立ち得りますが、人格が全身に分散していたら、全細胞ごとクローンを作らない限り、人格を移植することはできないことになります。今のところ、私はこの考えです。


ということは、死ぬと、一巻の終わりです。そこから先は一切知覚することができません。電気信号が流れません。何も知覚することができない、そもそも知覚主体がない、魂が抜けて遠巻きに自分の身体を眺めるなどということは決してありえないと考えています。


つづく。


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参考書籍

『脳には妙なクセがある』

『脳の意識 機械の意識』


以上二冊は、脳科学の入門書としてお薦め。


『生物から見た世界』


「知覚」というものの拠り所となっている本。



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