文系学部解体 (角川新書)
室井 尚
KADOKAWA/角川書店 ( 2015-12-10 )
ISBN: 9784040820514

<目次>

はじめに 大学がいま大変なことになっている

第一章 国立大学改革プランの衝撃 文系学部はいらない?

第二章 大学改革はいかに進められてきたのか

第三章 戦前の大学と戦後の大学

第四章 大学が崩壊する

第五章 大学をどうやって守っていくか?

第六章 それでも大学は死なない

あとがき


国立大学の文系学部、特に教育養成系の新課程と呼ばれる分野(著者が課程長を務める教育人間科学部が該当)が廃止の憂き目に遭うとのことで、大変だそうです。文科省サイトで公開されています。



著者の横浜国立大学に関するページを見ると、「人間文化課程については、第3期中期目標期間末までに廃止し、全学的な視点から資源を再配分する。」とあります。なるほど。横浜国立大学の教育人間科学部は、確かに大変なようです。


しかし、大変なのは、一部の(あるいは半数未満の)大学、一部の学部であって、国立大学の『文系学部解体』という本書のタイトルは、煽り過ぎではないか、偏ったものの見方ではないかと私は感じるのですが、いかがでしょうか。


偏っていると感じる点


国立大学の文系軽視は、今に始まったことではないこと。

本書の中でも述べられていることですが、戦前から国立大学は理系のためにあるようなものでした。私自身、1988年から1992年まで、国立大学に通いましたが、分離格差は歴然としていたように思います。


大変なのは、一部の国立大学ではないのか?

昨今の政府の政策などを見ていると、国際競争力を担う大学とローカル経済・ローカル雇用を担う大学との二極化が進んでいると言われています。いわゆるG型大学・L型大学です。文科省はスーパーグローバル大学を提唱していますが、その中に横浜国立大学は含まれていません。横浜国立大学は、L型であればおそらくトップクラスなのでしょうが、G型では及ばないというポジションではないでしょうか?一番淘汰を受けやすいポジションのように感じます。


すべての文系学部が大変なのではなく、教員養成系の新課程だということ。

少なくとも、商学部や法学部が軽視されているというのは聞いたことがありません。教員養成系の新課程というのは、教員を目指さない心理学系の学科とのことです。私自身、心理学は、ビジネスパーソンの教養として必須の学問、必須のリベラルアーツだと考えています。心理学系の学問が淘汰の対象となると、さすがに否と感じます。


逼迫する国家財政・少子化という視点の欠落

本書で違和感を感じたのは、まさにこの点です。日本において、大学の規模縮小は時代の趨勢として避けられないこと。そのことについて、ほとんど言及がありません。30の大学で教員養成系の新課程があるとするならば、1/3ぐらいを廃止する、という結論はあっても致し方ないことだと思います。これはすでに民間ではとっくに起きていることです。
文系の研究者はそもそも大学に通勤しなくても自宅研究で十分だということをおっしゃるわけですが、このあたりの感覚が全くずれているという印象を受けます。


自画自賛ではないか?


著者は、横浜国立大学の人間文化課程領域は「規模の大きさと充実した内容はその中では圧倒的」だと自負しているとのことですが、著者の著作一覧を見て、本当にそうなのか、正直、よくわかりません。Amazonレビューを見る限り、批判に対して反論ができていない、統計を無視しているといったコメントが散見します。「圧倒的」というのは、自画自賛のような印象を受けます。


また、文科省を徹底批判している点も気になります。読後感が決してよろしくありません。この著者の物言いに接して、果たして文科省の官僚が胸襟を開き、著者の意見を聞こうとするのでしょうか?煙たがって敬遠するのでは?これまで文科省とどのような折衝をしてきたか存じ上げませんが、自ら文科省との対話の扉を閉ざしてしまったような印象を受けます。


以上、心理学を含めたリベラルアーツ教育に対する警鐘という点ではプラス評価、それ以外はどちらかというとマイナス評価でした。



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