ゆめのはいたつにん
教来石 小織
センジュ出版 ( 2016-03-01 )
ISBN: 9784908586002

<目次>
  • はじめに
  • 第1章 ライフ・イズ・ビューティフル
  • 第2章 はじまりのうた
  • 第3章 セレンディピティ
  • 第4章 スタンドバイミー
  • 第5章 ボレロ
  • あとがき


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本書の著者・教来石小織さんを知ったのは、1月13日の学校公開日のことでした。写真家の桜木奈央子さん、音楽家の永原元さんたちがウガンダと我が子らとの交流のミュージックビデオを届けに来られた際に、一緒に来校されたのが教来石さんでした。


どちらかというと物静かな印象の方だったのですが、本書に彼女の心に秘めた熱い情熱と夢が語られていました。読みながら、何度かほろっと来てしまいました。


途上国を変えるのは映画


本書は、カンボジアの子どもたちに映画を届けようというNPOの物語です。志一つに何もないところから始め、やがて仲間が集まり、笑いあり涙あり、紆余曲折ありながらなんとかNPOが立ち上がっていく、そんな物語です。


映画を届ける先のカンボジアの村には、電源がありません。映画を上映するには、プロジェクタだけでなく、発電機やスクリーンも一緒に運ぶ必要があります。また、映画には上演権料も発生します。


なぜ、途上国に映画を届けるのか?


届ける先の子どもたちは、映画を見たことがありません。自分の村から出たこともありません。世の中を知りません。この世にどのような仕事があるのかも知りません。知らないから、将来の夢は「教師」や「医者」としか答えられません。


本書の中で、社会起業家を支援している竹井善昭さんは「途上国を変えるのは映画」だと言い切ります。映画には、途上国の子どもたちの知らない世界があります。夢があります。未来があります。


映画を観る子どもたちの情景


本書の中では、映画を観入る子どもたちの情景が描かれています。二回目のカンボジアでの上映では、やなせたかし氏原作の『ハルのふえ』でした。『アンパンマン』もそうですが、やなせたかし氏のマンガには言語を超えた普遍性があります。



ごく簡単にあらすじを述べると、タヌキが人間のお母さん(ハル)に化け、子ども(パル)を育て、やがて大きくなった子どもが旅立ち、母が子を見送る、というお話です(もう少し丁寧な説明は、Amazonの内容説明で確認ください)。この映画をカンボジアに届けた際の情景の描写があります。引用します。


「子どもたちは、こんな顔で映画を見てくれたんです。タヌキのお母さんの行動にお腹を抱えて笑ったり、お母さんと少年が別れるシーンでは、ボロボロと涙をこぼしたり。最後には拍手をしてくれました。この光景を見たとき、私はこの活動を一生続けようと決意しました。なぜなら初めてだったんです。私の人生で、こんなにもたくさんの人たちに喜んでもらえたのは。」 (P180)


あぁ、いいな。この情景。子どもたちが嬉々藹々と映画に見入る姿。心を打たれました。



変わるのは子どもだけではない


また、変わるのは子どもだけではありません。ボランティア活動に参加している人たち、支援をしてくれる人たちが何人も登場します。手探りで作りながら、いろんな障害がありながらも、前へ前へと進みます。仲間がいるということは大切です。


そして、カンボジアの大人も変わります。


電気もない村に映画を届けるわけですから、現地側の協力も不可欠です。本書のタイトルにある「夢の配達人」とは、カンボジア人のタクシードライバーの男性のことです。彼が映画を届ける一役を担うわけですが、その彼の言葉にもまた心を打たれます。


「子どもたちに夢を贈る素晴らしいアイディアだと思った。スクリーンに映像が映ると子どもたちが喜ぶんだ。笑って映画を観て、終わると『次はいつ来るの?』と聞きに来る。

この仕事は楽しい。

この仕事をくれて、ありがとう」

ビデオカメラの画面の中で、カンボジア人の夢の配達人が笑っていた。 (P232)


宝物


そして、本書の最後の教来石さんの締めくくりの言葉。この言葉に一番心を打たれました。この映画を届ける活動の中で、彼女自身が大きく変わったのだ、成長したのだということが分かります。数多くの障害を乗り越えながらなんとかやってきたゆえに、その言葉は重く響きます。引用します。


もしもいつか自分の子どもに出会える日が来たときは、毎晩のように抱きしめ伝えるでしょう。子どもというのは、世界から守られるべき宝物であり、そしてあなたは私の宝物だと。 (P239)


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教来石さんが代表を務めるNPO法人 World Theater Project



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