舞妓
credit : UniBay via pixabay.com (license : CC0)


<目次>
  • 1 古典と嵯峨
  • 2 白拍子のかくれ里
  • 3 京都はかわった
  • 4 武者をとろけさせる女たち
  • 5 共有された美女
  • 6 王朝の力


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『京都ぎらい』という本が3年前に出て、そこそこ売れたのだと思いますが、その続編です。


「きらい」となっていますが、心底嫌っているというよりも、どちらかというと愛情表現です。著者の井上章一氏は、京都の嵯峨出身。嵯峨は洛中(平安京)から見れば洛外なわけで、洛中に対する被差別からやや屈折した趣があります。だからでしょうか。ご自身の屈折した気持ちを前面に打ち出していることもあり、最初は「選書をはずした」と思ったのですが、読み進めるうちに、やはりと申しますか、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。


タイトルに見紛うことなく、本書は「京都」の「官能」を扱った本です。


京都はエロいのか?


これは世の中「官能」論全般に言えることですが、男性が語っているため、「官能」と言いつつも男から見た「女性」論です。誤解を恐れずに言えば、「女の存在自体がエロい」と言ってもいいかもしれません。これはもう男の妄想です。


「京都はエロい」と言われてもピンとこなかったのですが、京都といえば、芸妓、舞妓の街であるということを思い起こせば、なるほどと合点がいきます。現在の花街は健全だと思いますが、もとを正せば、風俗街と表裏一体でした。


著者は1955年生れです。著者の経験から、1970年ごろから嵯峨を訪れる若い女性観光客が増えたとのこと。嵯峨には、後醍醐天皇らを輩出した大覚寺統の大覚寺、京の白拍子らが都落ちして隠棲した祇王寺、夢窓疎石が開山した天龍寺などがあります。女性観光客が増えた理由は何かといえば、1964年に新幹線が開通したこと、女性の大学進学が増え仏閣見学をしようという教養ある女性が増えたのではないかということ、それとanan、non-noと言った女性誌の登場を挙げています。


著者が年長者にきいたところによれば、新幹線開通とともに、洛中の浄化・健全化が進んだとのこと。新幹線開通前、嵯峨の男たちが「ちょっと京に行ってくる」といえば、「京に女を買いに行く」という意味だったそうです。ちょっと偏った意見のような気もしますが。


じゃ、ちょっと私も京都に行ってみようかな。


以上、ほとんど第1章についてで、第4章から平安末期から南北朝時代の京都を舞台にした天皇家、貴族、武士らの色恋沙汰になります。端的に申せば、歴史が動いた裏には「女あり」でした。源平合戦と平家の没落、大覚寺統と持明院統の分裂、建武の新政の失敗。女に失敗した側が、身を滅ぼしまました。そしてそれは、現代にも通じるものがあるようです。


つづく。

【書評】『京都ぎらい 官能篇 (朝日新書)』(2)古今女難集 : なおきのブログ


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