新規事業開発投資の審査業務に携わってかれこれ5年経ちます。その経験で得た知見を少しでも多く書き出しておこうと思います。
ほぼちょうど1年前に書いたテーマなのですが、今日もふと同じことを考えました。新規事業開発における成功と失敗の差はなんだろうかと。1年前は単に「『お金になること』と『お金になりそうだけどならないこと』の違い」を理解することだと述べました。引用します。
ピーター・ドラッカーは、イノベーションとは顧客の創造・市場の創造だと言いました。顧客とは「お金」を払ってくれる人のことであり、「お金になりそうだけどならない」人は顧客とは呼びません。今週お会いしたベンチャー企業の方々は、この二つの違いをよく理解されていて、関心しました。一方、事業に失敗する時というのは、ほとんど、この二つの違いを理解されてないケースのような気がします。
そうは書いてみたものの、これはなんとしたことか。その違いを理解ができれば誰も苦労はしません。その違いをどうしたら見抜けるようになるかについて言及していませんでした。
で、今日はそのことを言及します。ずばり以下の方程式です。
成功確率=目利き能力x試行回数
この方程式では右辺は掛け算なので、目利き能力か試行回数のどちらかがゼロの場合、成功確率もゼロになります。
この方程式は、なにか経営学やイノベーションの教科書を調べたわけではありませn。自分の経験から考えた方程式です。実は教科書には、他の方程式や類似の考え方が書かれているのかもしれませんが、ここでは私の経験則に過ぎないということでご容赦ください。あとで学ぶ機会があれば、学習します。
目利き能力とは
目利き能力とは、お金をはらってくれる顧客を見抜く能力です。「いいね!」と言うけどお金を払わない人は顧客とは呼びません。英語で言えば、excellent eyes for business、あるいは、excellent eyes for customers、といったところでしょうか。その目利き能力は、次のように表されます。
N=Nature(素質) E=Experience(経験) H=Honest(誠実さ)
目利き能力は、素質、経験、誠実さの関数であると。
5年間の投資審査経験を振り返ると、稀に目利き能力に長けた人がいます。ここで私が念頭に置いているのはほぼ1人です。
どうやってその能力を磨いたのでしょうか?実はよく分かりません。本当はなんらかの経験を踏まえて培った能力なのでしょうが、それが何なのか他人には分からないため(暗黙知のため)、ここでは「持って生まれた能力」=「素質」ということにしておきます。形式知化できるといいのですが、おそらく本人も分かっていないので、形式知化が困難です。この「素質」だけは真似することができないので、他の「経験」と「誠実さ」を挙げるしかありません。
1年前に記事を書いた時も、やはり「誠実さ」を挙げていました。引用します。
実は一番大切なのは、誠実さではないでしょうか?当初言っていたことを反故にする人は、まず、成功した試しがありません。
徳川家康の幼少時代の師、太原雪斎和尚は、兵や食よりも信が大切であると解きました。そのことと同義です。ベンチャーキャピタルやエンジェルの方々も、投資候補先の人の人間性を見るといいますしね。
ゲイであることを告白したアップルの現CEO Cook氏、青色LEDを発明したノーベル賞受賞者赤崎先生、スパイバーの関山社長、今週会ったベンチャー企業の方々、これらの方々には誠実さを感じます。
「経験」については、次の「試行回数」と同義なので、そちらに説明をゆずります。
つづく
コメント