<目次>
- 第1話 六畳一間のマリー・アントワネット
- 第2話 フリーランスは辛いよ
- 第3話 真夜中のスイカとショパン
- 第4話 煩悩ババア
- 第5話 「ご報告」恐怖症
- 第6話 セーラー服姿のアラサーよ、どこへ行く
- 第7話 ふたりだけの軽井沢旅行
- 第8話 アイドル生命が終わる
- 第9話 さよなら、ササポン
- 第10話 前奏曲第一五番『雨だれ』
- あとがき
「人生を詰んだ元アイドル」ということで以前話題になっており、気になりましたので読んでみました。著者は元SDN48の亜希子さん(SDN48:2009年~2012年)。
SDN48解散&卒業後、2015年にしらべぇ編集部に入社し、2018年には退職。円満退職と思いきや、本書によるとどうもそうではないらしい。精神異常から働けなくなり退社。食い扶持がなくなり、一人でいることに危険を察知した姉が紹介したおじさんと、藁にすがる思いで同居。再生への道のりも含めてその顛末を赤裸々につづったのが本書です。
結局、何が彼女を精神的に苦しめたのかというと、1)元アイドルという肩書きと2)結婚への強迫観念、というところでしょうか。「元アイドル」という自己紹介が痛々しく、また、男性にすり寄る「ノルマ飯」、つまり婚活も痛々しいです。
「ノルマ飯」
私は男性と出会い、食事をして、恋人候補者の手札を増やしていく行為のことを、陰でそう名付けて呼んでいる。自分にこうしてノルマを課すことで、”適齢期”までに結婚できるよう必死で調整している。
- 亜希子「いや、ササポン。私、もう若くないです。もうすぐ30になるオバサンですよ」
- (中略)
- ササポン「自分のことを、必要以上に『年寄り』だと思わないほうがいい」
30歳を「オバサン」と評するところが、「20代で結婚せねばならない」という強迫観念の裏返しです。また、結婚する友人を祝福するだけでなく妬ましく思えてしまう元凶も結婚への強迫観念から来ます。
- 亜希子「親友がひとり、減っちゃいました」
- ササポン「あら、そう」
- 亜希子「同志がひとり、減っちゃいました」
- ササポン「なんの同志?」
- 亜希子「人生の同志っす」
- ササポン「なんで、その子が結婚しちゃうと、同志じゃなくなっちゃうの?」
もし私が20代後半の女性に同じことを言われたら、ササポンと同じ言葉を返すでしょう。彼女がやっているのは「恋愛ごっこ」であって「恋愛」ではない。恋愛をする自分に恋をし、そんな自分を追い求めてしまってたように見えます。
悩んだ末に、私は自分から男性を誘うことをやめた。
元アイドルという呪縛から解け、恋愛ごっこの愚かさに気づき、ようやく本当の自分に向き合えたようです。
本書に登場するバツイチのササポン56歳。男女の関係になるわけでもなく干渉もない。一軒家の三階にササポン、一階に亜希子さんが住み、二階はLDKなどの共用スペース。ほぼリビング・ダイニングで些細なやり取りを交わすだけの間柄ですが、実はその些細な会話が一人暮らしでは決して得られない貴重な体験です。その体験により精神的に弱っていた亜希子さんは自分の人生に折り合いをつけていくのでした。
この本、このエピソードがそれなりにバズったということは、同様にもがき苦しむ20代、30代の方が多いということなのでしょう。私の年齢はササポンに近いので、どちらかというとササポンと同じ目線です。
自分の人生とどう向き合うか、自分の人生とどう折り合いをつけるのか、いろんな肩書を剥がした真っ裸になった自分は何者なのか、本書を読まれた20代・30代の方には、その考えるきっかけになればと思います。
なんてえらそうなことを書いてしまいましたが、20代後半の時分、自意識過剰で自分で折り合いがつけられなかったのは私も一緒です。結婚していたから、家に帰れば家庭があり、病むことはありませんでした。そうやってふりかえってみると、家族という存在は貴重ですね。両親兄弟であろうと、夫婦であろうとも。
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