布団

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2015年7月の「千年読書会」の課題図書は、田山花袋の『蒲団』。このタイトルを知ったのは、今となってははっきり覚えていませんが、中学生か高校生だった時ではないかと思います。要は、国語の教科書に載っている明治・大正の文豪の作家とタイトルを暗記しただけのことです。最近まで、明治・大正の文豪の本などほとんど読んだことがありませんから、私の文豪に関する知識はほとんど高校生止まりです。特に『蒲団』は、ぱっと見た目で読み方がわからなかったため、「ふとん」と読むと知った時は、少しばかり驚いたことを記憶しています。


しかしですね・・・・


はっきり申していいですか。


田山花袋は変態です。


これでいいんでしょうか?変態小説だという事実を知らせずに、中高生にタイトルだけ覚えさせて。。。文部科学省、検定教科書の出版社、教育委員会の方々に、本書を含めた変態小説をなぜ国語教科書に掲載しているのか、その見識を伺いたいのですが。


書評前編~女性は読まないで


さて、本題(書評)です。小説『蒲団』は、ごく短い小説です。岩波文庫版で、ページ数にしてわずか99ページ。この小説の中で「蒲団」が登場するのは、わずか最後の7ページ。


妻と3人の子どもがいる主人公竹中時雄(30代?)は、しがない作家。作家家業だけでは決して食べていけず、副業で編集のアルバイトをしています。そんな時雄のところに、19歳のうら若き女性芳子が弟子入りしてきます。芳子の美しさに悶える時雄。あれやこれやといやらしい妄想を掻き立てられます。


あぁー!なんということだ!もし私が時雄と同じ立場であれば、同じようないやらしい感情を抱いていたに違いない。まずい。私を慕ってくれる年下の女性が何人かいますが、彼女たちはこの書評を読みませんように!


書評後編~因習とハイカラの狭間で


時に明治40年(西暦1908年)。日露戦争に勝利した日本は、いよいよ脱亜入欧の機運が盛んになってきたのでしょうか?それまでは、独身女性が男性と歩くことすら許されない時代でした。しかし、芳子はハイカラな神戸女学校の卒業。古風な結婚観の時代から、自由恋愛の時代へと時代は移りつつありました。


そんな芳子が実家の岡山に帰省し、再度上京する際、寄り道した京都で同志社の学生田中秀夫と恋仲になってしまいます。さらに、秀夫は同志社を中退し、東京へ芳子を追いかけてきます。


秀夫に嫉妬する時雄。芳子のハイカラな態度は容認しているのに、時雄は、秀夫に対しては古風な考えを持ち出し、学校を卒業し、芳子の親の許しがなければ交際を認めないと言う。芳子の父も上京し、ついには芳子を父親と一緒に帰郷させ、強引に秀夫と別れさせる。時雄の家に残されていたのは、芳子が使っていた蒲団。最後の7行でこう結びます。


暫しばらくして立上って襖を明けてみた。大きな柳行李が三箇細引で送るばかりに絡からげてあって、その向うに、芳子が常に用いていた蒲団ふとん――萌黄唐草もえぎからくさの敷蒲団と、線の厚く入った同じ模様の夜着とが重ねられてあった。時雄はそれを引出した。女のなつかしい油の匂いと汗のにおいとが言いも知らず時雄の胸をときめかした。夜着の襟えりの天鵞絨びろうどの際立きわだって汚れているのに顔を押附けて、心のゆくばかりなつかしい女の匂いを嗅かいだ。

 性慾と悲哀と絶望とが忽たちまち時雄の胸を襲った。時雄はその蒲団を敷き、夜着をかけ、冷めたい汚れた天鵞絨の襟に顔を埋めて泣いた。

 薄暗い一室、戸外には風が吹暴ふきあれていた。


女の使っていた蒲団の匂いを嗅ぐ。この気持ちがよくわかるのでした。


関連リンク


<千年読書会のイベントページ・参加者の書評>


<千年読書会での書評>


<映画『蒲団』>

早稲田大学の学生が、自主制作した映画がありました!芳子役の女優さんのブログもありました!





<代表的変態小説>

痴人の愛 (新潮文庫)
谷崎 潤一郎
新潮社 ( 1947-11-12 )
ISBN: 9784101005010


代表的な変態小説といえば、谷崎潤一郎の『痴人の愛』。『痴人の愛』もまた、『蒲団』と同様、作者自身を描いた私小説ですが、『蒲団』が1908年の発表に対し、『痴人の愛』は1924-1925年の連載。田山花袋は、谷崎より16-17年も前に変態の境地を切り拓いたことになります。



女神 (新潮文庫)
三島 由紀夫
新潮社 ( 2002-11 )
ISBN: 9784101050256


自分の娘を美しく育てるという、別の角度の変態小説。



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