今日、ランチを取りながらある人とIT産業の競争力の話をしました。その内容についてお話することはできませんが(厳密にはIT産業の競争力というお題目ではない)、ふと、大前研一氏の『企業参謀』を思い出しました。


結論を先に言ってしまうと、本記事のタイトルどおりです。日本のIT産業は生産性が低く、競争力がありません。


IT産業の平均年収の比較


海外駐在経験があり、かつ海外のIT企業と頻繁にやり取りした経験から、肌感覚として分かっているつもりではいましたが、念のため、客観的数字を確認しました。情報源が異なり、母数などの前提条件が分からないため、厳密な比較はできませんが、あまりにも差が大きすぎるために、それら前提条件の差異は、誤差と考えて差し支えないでしょう。


<情報サービス産業協会>

日本:30歳で4109千円

日本:35歳で4851千円



<リクルートR25>

アメリカ:8380千円

日本:4630千円


<シンガポール政府>

シンガポール:

ソフトウェア&アプリケーションマネージャー:10733千円

ソフトウェアデベロッパー:5546千円


ざっくりと、アメリカは日本の2倍、シンガポールは日本の1.3倍から2倍、といったところでしょうか?私がシンガポールに駐在していた1998-2000年ごろは、むろん、ローカルスタッフの賃金は日本人以下でしたが、現在では一部逆転現象が出ていると聞きます。


IT業界の年収比較


低い労働生産性


グローバル化の進展ともに世界同一賃金に収束していく方向性にありますが、とりわけIT産業は、成果物をインターネットで瞬時に送信できることから、最も世界同一賃金への圧力の強い業種・業界だと考えています。この彼我の差は一体どこから来るのかというと、原価のほとんどが人件費だと考えれば、そのまま、「労働生産性の差」ということになります。


そのようなことは、2011年から2012年に私が情報サービス産業協会の委員を務めていた時も「IT業界の業界構造の課題」と指摘があったのですが、一向に改善していません。


情報サービス業界の5つの構造改革


日本のIT産業は、労働集約型から知識集約型への必要だと訴えながらも、現実には労働集約型に踏みとどまっています。年収比較の出典にあった『2014年情報サービス産業基本統計調査』の調査回答企業の本社所在地の分布が書かれているのですが、66%の企業が東京です。


世界の主要なIT企業の本社所在地を考えてみてください。GoogleやFacebook、Appleはシリコンバレー界隈ですが、Microsoftはシアトル、IBMはニューヨーク州です。私がお付き合いのあるベンダーやその競合も、拠点はロスアンジェルス近郊、オハイオ州、デトロイト近郊、マサチューセッツ州など、地理的にあちこちに分散しています。そして開発拠点となるとさらに分散し、アメリカとインドで二交代制で開発しているのも、アメリカでは今やデファクトです。


東京に66%もの企業が集約している状況は、有人工場と同じで、労働集約産業だからです。しかし世界のIT企業は、地理的に分散して開発を進めています。知識集約産業への転換が終わっていると言えます。


日本の中でも、徳島に本社を置くジャストシステムや、福井に本社を永和システムマネジメントは、日本における知識集約型のIT企業といってよいと考えます。


『企業参謀』で著されている労働集約脱却の方策


では、冒頭述べた『企業参謀』で、著書の大前研一氏は何を語っているのでしょうか?この講談社文庫版は1985年の出版ですが、ハードカバーの初版は1975年です(Wikipediaによる)。企業参謀というのは、まがいなく、彼が働いていたコンサルティング会社マッキンゼーのことを指すわけですが、ある意味、本書はマッキンゼーの手のうちを明かしています。それは「情報の機密性を守った中央サービス機関」です。


中央サービス機関は、クライアント企業の財務情報などの公開情報だけでなく、非公開情報もインタビューなどを通じて取得します。そしてそのクライアント企業の競合企業からもすべからく情報を取得します。他の業種の情報も取得します。そして統計処理を行い、クライアント企業の科目別偏差値を出します。偏差値の悪い科目について強化しましょう、という予備校まがいのビジネスを企業経営者向けに行っているのが、マッキンゼーという会社です。もちろん、クライアント企業に提供してよい情報は、その企業の情報と全体平均値と平均偏差です。個別企業の名前は明かしていけません。機密を担保することによって情報収集するわけですから。


この本が書かれたのは1975年です。2015年現在、クラウドを使うことによって圧倒的に安くかつ圧倒的なスピードで情報収集が可能になりました。そして今、IoT、M2Mの技術イノベーションにより、さらにもう一段階、情報収集の敷居が低くなります。人月単価いくらではなく、得た知識を分析した結果をクライアント企業に言い値で売る、というのが、IT企業が脱皮すべき知識集約産業のひとつの形ではないでしょうか?


Salesforce、Amazon、MicrosoftやIBMといった企業は、その価値に気づいて着実に布石を打っています。日本のIT企業、ITエンジニアの方々も、現在岐路に立たされているのではないでしょうか。


それではまた。




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