<目次>
  • CASE 1 北村孝紘 【大牟田連続4人殺人事件】
  • CASE 2 松永太 【北九州監禁連続殺人事件】
  • CASE 3 畠山鈴香 【秋田児童連続殺人事件】
  • CASE 4 鈴木泰徳 【福岡3女性連続強盗殺人事件】
  • CASE 5 宇野ひとみ【高槻養子縁組保険金殺人事件】
  • CASE 6 下村早苗 【大阪2児虐待死事件】
  • CASE 7 山地悠紀夫【大阪姉妹殺人事件】
  • CASE 8 魏巍 【福岡一家4人殺人事件】
  • CASE 9 高橋裕子 【中州スナックママ連続保険金殺人事件】
  • CASE 10 角田美代子【尼崎連続変死事件】


2020年7月9日、本記事へのアクセスが急増しました。大田区の3歳女児放置死事件が原因でした。子どもの虐待が後を絶ちません。犯人の母親も子どもの頃虐待を受けていたとのこと。虐待の連鎖を食い止めるには思いやりを育む教育しかありません。ご冥福を祈ります(2020年7月14日追記)




【書評】『殺人犯との対話』(その1)~本書を読む意味、そして殺人犯に共通している部分


本書の中で印象に残った二つのケースを紹介します。


CASE 6 下村早苗 【大阪2児虐待死事件】


23歳になる二児の母下村早苗は、3歳と1歳の子どもの育児放棄をし、自宅に閉じ込め、50日間帰宅せず(複数の男の家に寝泊まり)、子どもを死なせました。お腹を空かせた子どもが、食べ物を探すために家の中を這いずり回った形跡が残されていたとのことです。この本の中で一番息が詰まる思いがしました。


著者は早苗の父親とも面会し、彼女の生い立ちを聞き、本書にも著しました。そこで明らかになったのは、早苗自身が母親から育児放棄の被害を受けていたとのことです。その間、母親がしていたのは不倫です。


父親は学校の先生でラグビー部の顧問。教え子たちを花園へ連れていき、ある意味、先生としては成功の部類に入るでしょう。しかし、家庭は円満ではなかった。育児放棄し不倫に走った妻とは離婚、三人の子どもを引き取り、男一人手で育てたとのこと。


早苗は、父親の愛を受け取って成長したのだと思います。しかし、幼少のころの母親の仕打ちが結局早苗の人生に重くのしかかります。意識していたかどうかは別として、母親にされた仕打ちを自分もまた、子どもたちにしてしまいました。さらに酷い状況で。


私は、この早苗という人物が不憫でなりません。彼女が両親に愛されて育てられていれば、このようなことにはならなかったでしょう。



CASE 8 魏巍 【福岡一家4人殺人事件】


読んでいて不憫に感じたもう一人が中国人留学生魏巍(ウェイウェイ)です。この事件のことは覚えています。

2003年6月20日に、福岡県博多湾で4人の遺体が発見された。遺体には首を絞められた跡があり、捜査の結果4人の遺体は近くに住む一家のA、Aの妻、Aの子供二人のものと判明した。 発見現場近くの目撃証言と、犯行に使われた手錠とダンベルが販売された店舗の防犯カメラの映像から3人の容疑者が割り出されることとなった。3人は一家4人をベンツに乗せて、手錠をはめて遺体を海に沈めていた。


犯人2人は中国に逃亡、1人は死刑判決が出て既に死刑済み、1人は無期懲役。そして帰国できずに日本に残ったのが魏巍です。本書の著者小野氏は、魏巍本人のみならず、中国在住の彼の父親にも面会します。お金を貯め息子を日本に送り出した父。そして、親に心配をかけたくない余り、送金を断り、日本でやりくりしようとした息子。


書評(その1)で、殺人犯に共通しているのは「家庭環境に恵まれなかったこと」と書きましたが、唯一の例外が魏巍です。お金が工面できず、授業料を払わなければ、退学させられてしまう窮地に追い込まれ時、親に助けを求める声を上げることができたら、犯罪に巻き込まれることはなかったでしょう。


父親は被害者へ謝罪の手紙を書き、著者はその手紙を日本に持ち帰り、そして魏巍に見せます。涙を見せる魏巍。


一審で死刑判決が出ますが、既に死刑を受け入れていた魏巍は控訴を見送ろうとします。そんな魏巍に著者は控訴を薦めます。

死刑が確定すると、あなたと外の世界との扉が閉ざされます。制限付きで家族や弁護士に会うことはできますが、たとえば私と会ったり、手紙を交わしたりすることはできなくなります。他の人ともそうです。ああ、あのときあのことを話しておけばよかったと、あとになって後悔しても、やり直すことはできません。私が言いたいのは、あなたには、いますぐに結論を出すのではなく、もう少し考える時間が必要だということです。考えに考えた末、控訴を取り下げることはできます。でも、控訴しなかったら、その機会すら失くしてしまうのです。控訴することは、反省していないことではありません。まわりの人のためにも、あなたのために、考える時間が必要なのです。(p247)


最終的に、2011年に最高裁で上告は棄却され、死刑が確定しますが、今も著者と魏巍の間には、手紙のやり取りが続きます。他の犯人と魏巍との違いは、彼にはまだ心配してくれる家族がいることです。


著者は親とも面会し、ある意味、殺人犯とその親との間の橋渡し役になったわけですが、親身になり魏巍と向き合った著者小野氏の姿勢、家族のために少しでも生きる時間を確保し報いようとした姿勢には、他のケースとは異なり、少しほっとさせられました。


追記

2018年6月15日

目黒虐待死事件の報道により、虐待死への世論の関心が高まったせいか、2018年6月7日より、本記事へのアクセスが継続的に増えました。虐待死を防ぐ社会的セーフティネットの一つが「特別養子縁組」です。「特別養子縁組」への理解が深まるよう、合わせてこちらの【書評】『「赤ちゃん縁組」で虐待死をなくす』も読んでいただければ幸いです。


2019年6月21日

山田詠美氏が『大阪2児虐待死事件』に着想を得た『つみびと』を上梓したことにより、本記事へのアクセスが急増しました。



接見室

image via ac-illust.com



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