<目次>
イスラームの統一性と多様性
第1章 イスラームの誕生
第2章 イスラームとは何か
第3章 歴史のなかのイスラーム
第4章 イスラームの知と文明
第5章 イスラーム変革の努力
コラム
カーバ神殿のキスワ
カリフの3つの称号
イブラーヒムの回心の物語
- 前半の書評につづき、後半です。
前半目次
- イスラム教徒への改宗の仕方
- イスラムの歴史
ジハード:イスラム帝国の快進撃
image via Wikipedia under license of CC BY-SA 3.0
イスラムの過激派組織が指す「ジハード」ってこういうことだったのか、ということが理解できました。ジハードとは、元来「神のために自己を犠牲にして努力すること」のことであり、決して戦闘のことではないと解説されます。
イスラムの創始者ムハンマドの死後、イスラム勢力は快進撃によって、わずか20年あまりの間に、ペルシャ、シリア、エジプトなどの地域を獲得していきます。ササン朝ペルシャは滅亡し、ビザンツ帝国はシリアからエジプトまでの領土を失いました。ISISなどの過激派組織は、このイスラムの勃興の再来を期待して、「ジハード」と言うのでしょう。年号を追って見たいと思います。
- 632年 ムハンマド没
- 633年 ジハード開始
対ビザンツ帝国戦
- 635年 ダマスクス陥落
- 636年 ガッサーン王国滅亡
- 636年 ヤルムーク渓谷での戦い、ビザンツ帝国がシリアを失う。
- 641年 エジプト・バビロン陥落しアレクサンドリアをアラブ軍に譲渡。
同年、ビザンツ帝国がエジプトを失う。対ササン朝戦
- 637年 ササン朝首都クテシフォン陥落
- 642年 ニハーワンドの戦い
- 651年 ササン朝滅亡 (P45)
科学技術先進国としてのイスラム
そして、この時代のイスラムがすごかったのは、ヨーロッパや中国を差し置いて、科学技術先進国になったことでしょう。我々が使っている算用数字は「アラビア数字」と言いますし、代数学の英語Algebraもやはり、アラブから来ています。
イスラム世界では、学問は「アラブの学問」と「アジャム(外来)の学問」に分けられているとのことです。
アラブの学問
- (1) 法学(フィクフ)
- (2) 神学(カラーム)
- (3) 文法学(ナフウ)
- (4) 書記学(キターバ)
- (5) 詩学(シール)と韻律学(アルード)
- (6) 歴史学(アフバール)
アジャムの学問
- (1) 哲学(ファルサファ)
- (2) 論理学(マンティク)
- (3) 医学(ティップ)
- (4) 数学(アダド)
- (5) 幾何学(ハンダサ)
- (6) 天文学(ヌジューム)
- (7) 音楽(ムースィーキー)
- (8) 機械工学(ヒヤル)
- (9) 錬金術(キーミヤー)
しかし・・・・
ヨーロッパがイスラーム文明の成果を積極的に吸収しようとしているあいだに、西アジアのムスリムたちはヨーロッパ文明にはほとんど興味を示さなかった。
とのことで、産業革命以降、ヨーロッパ諸国に追い抜かれていきます。ナポレオンのエジプト遠征、ヨーロッパ列強の植民地獲得競争、そして第一次世界対戦によって、ヨーロッパ人によって国境が策定され、それが今日も中東の混迷を決定づけてしまいました。
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