LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
リンダ グラットン, アンドリュー スコット
東洋経済新報社 ( 2016-10-21 )
ISBN: 9784492533871

<目次>
  • 日本語版への序文
  • 序章 100年ライフ
  • 第1章 長い生涯 - 長寿という贈り物
  • 第2章 過去の資金計画 - 教育・仕事・引退モデルの崩壊
  • 第3章 雇用の未来 - 機械化・AI後の働き方
  • 第4章 見えない「資産」 - お金に換算できないもの
  • 第5章 新しいシナリオ - 可能性を広げる
  • 第6章 新しいステージ - 選択肢の多様化
  • 第7章 新しいお金の考え方 - 必要な資金をどう得るか
  • 第8章 新しい時間の使い方 - 自分のリ・クリエーションへ
  • 第9章 未来の人間関係 - 私生活はこう変わる
  • 終章 変革への課題



現在読書中ですが、書かれている内容が豊富なため、一旦、書き出しておきます。


リンダ・グラットンの前著『ワーク・シフト』を読まれた方は多いかと思います。先日の朝活読書サロンでも数名読まれていました。その時は読まなかったのですが、新作が出たということで、あらためて読み始めました。


なぜ前著を読まなかったのかというと、二番煎じの本に思えたからです。ダニエル・ピンクが2002年に出した『フリーエージェント社会の到来』のです。『フリーエージェント社会の到来』は、私のバイブルになっている本の一つで、『パーソナルメディア戦略』のスライド作成時の底本となりました。そしてこのスライドは好評いただき、何度か講演もさせていただきました。


現在5分の3ほどを読み終えて、たしかに、リンダ・グラットンの主張は、ダニエル・ピンクの主張の延長線上にあるように思います。もちろん、それだけなら読む価値がありませんが、ダニエル・ピンクが叙述的な表現を得意であるのに対し、リンダ・グラットンのほうがより論理的で、寿命の予測、資金計画、無形資産、新しい働き方など、体系的な説明がなされています。グラットンとピンクの両方を読みこなしてスライドを起こせば、論理と文脈の両面において未来の人生のあり方について、講義ができるようになります。それを2017年上半期の目標としたいと思います。


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延びる平均寿命


前著を読んでいませんので、前著を読んだ方には、平均寿命の話はご存知かもしれません。


本書ではアメリカの話を中心に書かれていますので、ここ日本においての統計上を確認したいと思います。


厚生労働省の発表によると、2015年時点の日本人の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳です。グラットンによれば、現在生まれた世代は、今後の医学の進歩により平均年齢が100歳になる可能性があるとのことです。えっ?そんなばかな、と思ったのですが、考え方はこういうことです。


1955年時点の平均寿命は、男性63.60歳、女性67.75歳。寿命の延びは鈍化しているものの、過去30年の間の平均延び年数は、1年あたり男性0.200年、女性0.219年です。この延び率を2095年まで引き延ばしたのが、次のグラフです。


日本人の平均寿命


女性は2075年に100歳を超えます。もし仮に、過去60年間の平均延び年数(1年あたり男性0.287年、女性0.322年)を適用すると、女性は2056年に100歳を超えます。


2015年時点で40歳の人の平均余命は、男性41.80歳、女性47.73歳。しかし、40年後の2055年時点で80歳の人の平均余命が男性1.80歳、女性7.73歳とはなりません。もっと延びているでしょう。過去を振り返ってみればわかります。


さきほど述べた通り、1955年生れの人はその当時の平均余命は、男性63.60歳、女性67.75歳でした。2015年時点でこの方たちは60歳になっています。60歳の平均余命から計算すると、男性は83.55歳、女性は88.83歳まで生きることになります。もちろん、この60年間に亡くなった方もおられますので、現在60歳の方の平均寿命と言うことはできませんが、それでも現在まで生き延びた60歳の人たちにとっては、この60年間の間に平均余命が男性で19.95歳、女性で21.08歳も延びたことになります。それをグラフ化してみました。


生年時点と2015年時点の平均余命


つまり、今40代の人は、80歳まで生きるのではなく、もっと長生きすることになります。ざっくり計算すると、2055年時点で80歳の人の平均余命は40+41.8+8.0=89.8歳になり、90歳まで生きる可能性が高いということです。


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従来のライフステージ(教育・労働・引退)の崩壊


1955年時点の平均寿命は、男性63.60歳、女性67.75歳。当時の定年は55歳でした。つまり、男性の場合、引退後の人生は8年でした。当時の主流は高卒です。37年働いた蓄えで8年の引退後の人生を過ごしました。1985年では、平均寿命は男性74.78歳でした。当時の定年は60歳です。引退後の人生は15年でした。大卒だとすると、38年働いた蓄えで15年の人生を過ごすことになります。


ところが今はどうでしょう。60歳で定年を迎える男性は、引退後の人生が20年以上もあります。38年働いた蓄えで20年以上を生きねばなりません。そして現在40代の私の場合は、60歳以降の人生が30年もありそうです。


もはや60歳の引退がないどころか、定年延長の65歳でも足りません。1955年から1985年ぐらいの引退後の人生の長さを目安とすれば、90歳まで生きるなら、75歳から82歳ぐらいまで働く必要があります。


生涯現役社会へ


本ブログでもたびたび述べていることですが、我々40代以下の世代は、生涯現役を覚悟しなければならないと考えていました。それは日本の厳しい財政の現実が理由です。1940年代問題を問題提起した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏が、2030年代の財政崩壊の警鐘を鳴らしています。財政崩壊を免れるためには、年金の所得代替率を現行の50%コミットメントから40%に下方修正する必要があるとのことです。


しかし、『LIFE SHIFT』は、もう一つの事実を突きつけました。寿命の延びです。このことを見落としていました。


本書を読むまで、75歳まで働き、80代前半に亡くなるだろうと思っていたのです。ところが本書によれば、我々世代は90歳まで生き延びてしまう。引退年齢を80歳まで引き上げる必要がありそうです。


ただ、私はそれほど悲観はしていません。現在77歳になる私の父は、現在でも週5日、働いています。その働きぶりを見るに、私も80歳まで働くことは、健康を害さない限り、なんら問題ないでしょう。そう、重要なのは、経済的資産以外の3つの無形資産です。


  • 生産性資産:収入を得るための知識・仲間・評判
  • 活力資産:健康、バランスのとれた生活、友人など
  • 変身資産:内省、多様性に富んだ人脈、オープンマインド


この3つの無形資産については、日を改め、書こうと思います。


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推敲時間:68分


つづき:【書評】『LIFE SHIFT』(その2)ワーク・ライフ・アンバランスの現実 : なおきのブログ



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