<目次>
  • はじめに
  • 序章 人はなぜ本音を明かさないのか
  • 第1章 本音をしゃべらせる
  • 第2章 何を話すべきか
  • 第3章 どう話を聞くべきか
  • 第4章 人を見抜く
  • 第5章 相手を追いつめる
  • 第6章 心を動かす
  • 第7章 実践編 相手の本心を知るためのQ&A
  • あとがき


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タイトルだけ見ると、強面の検事が強引に口を割らせると思われるかもしれませんが、そうではありません。これは「傾聴」の本です。また、本書に愛があります。


「傾聴」の教科書


「相手の立場に立つ」、「共感する」、「心と目と耳で聴く」、「相槌を打つ」。言うは易しいですが、実戦するのが難しいのが「傾聴」です。ビジネスパーソンに必要な素養が傾聴です。提案をするために相手の課題を聴き出す、上司が部下のキャリアプランを聴き出すなど、今ほどビジネスシーンで、聴く力が問われている時代はないのではないでしょうか。


犯人は、なかなか口を割らないものです。しかし、立件するには犯人の証言が必要です。裁く姿勢で聴いたら心を閉ざすだけ。聴くとと判断することは分ける必要があります。

相手を裁くためには、被疑者自身の言葉が必要です。そのためには相手に話させなければならない。その課程においては相手を断罪してはいけないのです。 (P43)

相手から話を聞き出すことと、相手の評価をすること。この二つはしっかり分けておく必要があります。話を聞く側が自分の価値観で簡単に決めつけてしまったら、話になりません。 (P46)


「聴く」というのは、心を平静に保ち、堪え続けることが必要そうです。いや、無理して堪えていてはダメでしょう。無理していれば、相手にも伝わります。かなり精神的に余裕をもって臨む必要がありそうです。


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「傾聴」には「愛」が必要だ


重大犯罪を犯したもの、隠している事実が重ければ重いほど、犯人にとってもつらいことのはずです。相手の立場に立ってそのつらさの琴線に触れられるかどうかがポイントのようです。


ちょっと長いですが、次のエピソードがほっこり来ましたので、引用します。

その店長の女性を調べ始めて、二週間が過ぎたあたりでしょう。

取調室に連れられてきた店長の女性に、依然、覚せい剤の入手経路についてだけは話しません。私は仕方なくいつものように雑談を始めました。そして彼女を見ると、いつもと少し感じが違うんですね。

それで、「君、今日はどうしたんだい?」と聞いてみました。相手が「検事さん、何のことですか」と言うので、「前髪だよ、ちょっといじったよね」と答えると、「わかるんですか」とびっくりしています。だから私は思わず笑いながら、こう言ったのです。

「わかるよ。これだけ毎日見ているんだから。僕はずっと君のことばっかり考えているんだよ」

すると、店長の女性はいきなり涙をぽろぽろ流し始めたのです。「検事さん、わかるんですか」と言いながら、その後で彼女は「全部お話しします」と言い、すべてを語り始めました。 (P57)


著書に愛があるなと感じたのは、こういうところです。検事も人間です。人それぞれでしょう。こういう姿勢で聴かれたら、絆されてしまうなと感じます。もちろん、検事という職業も人それぞれでしょうから、全員がこのような取り調べを行うわけではないとは思いますが。


政治圧力と警察の隠蔽


本書で気になったもう一つのエピソードが政治圧力による警察の隠蔽です。ある集団強姦事件の首謀者が県会議員の息子だったとのこと。担当刑事によると、「逮捕」ではなく「在宅送致」にするよう指示があったとのこと。著者は担当刑事の口を割らせてそのことを聴き出すやいなや、警察署に乗り込み、警察が逮捕しないなら検察が逮捕に踏み切るぞ、と半ば恫喝し、警察を動かします。


1990年代のテレビドラマ『踊る大捜査線』でも、政治家の息子が逮捕されたことに対し、政治家からの圧力があったシーンがありました。そして最近では千葉大学集団強姦事件。こちらも当初、犯人の名前が伏せられていましたが、後に名前が公表され、犯人の一人の父親が弁護士であり、一部上場企業の監査役を務めていることが発覚します。



1999年の桶川ストーカー殺人事件でも、警察は調書を改竄し隠蔽しました。



警察も人間の集団。人間というのは、自分のメンツを守ろうとする生物であることを忘れてはいけないのだと思います。


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