米国産トウモロコシの85%は遺伝子組換え作物トウモロコシ畑

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もうダマされないための「科学」講義 (光文社新書)
菊池 誠, 松永 和紀, 伊勢田 哲治, 平川 秀幸, 片瀬 久美子
光文社 ( 2011-09-16 )
ISBN: 9784334036447

<目次>

はじめに

1章 科学と科学ではないもの       菊池誠

2章 科学の拡大と科学哲学の使い道    伊勢田哲治

3章 報道はどのように科学をゆがめるのか 松永和紀

4章 3・11以降の科学技術コミュニケーションの課題

   日本版「信頼の危機」とその応答   平川秀幸

付録 放射性物質をめぐるあやしい情報と不安に付け込む人たち 片瀬久美子

 1.放射性物質をめぐるあやしい情報

 2.不安に付け込む人たち

 3.では、どうしたらいいのか?

 4.まとめ

あとがきにかえて

著者・編者紹介


遺伝子組換え作物は既に摂取済み


本書で取り上げられている怪しい言説の一つが「遺伝子組換え作物」に対する反対です。意外と知られていない事実として、我々日本人は既にかなりの遺伝子組換え作物を摂取している点です。

日本は穀物をどのくらい輸入しているか。トウモロコシはほぼ100%輸入で、そのうちの90%以上を占めるアメリカでは、約85%が遺伝子組換え品種です。すでに日本には大量に入ってきている。ダイズも、95%ぐらい輸入されていて、アメリカ産のシェアが約7割り。そのうちのおよそ9割は遺伝子組換えの品種です。

日本での流通量に対する遺伝子組換えの割合を計算すると次のとおりになります。


  • トウモロコシ=100*0.9*0.85=76.5%
  • 大豆=100*0.7*0.9=63%


遺伝子組換えが盛んなカナダやオーストリアからの輸入を勘案していませんので、実際は上記数字より多いはずです。そんなにどこで使われているのかというと、家畜の飼料、食用油などの調味料、甘味料などです。

食用油や、清涼飲料水に使われている異性化液糖などは、遺伝子組換え作物を原料として作られていても、表示義務がありません。分析しても遺伝子組換え原料を使っているかどうか判別がつかないからです。食品企業は、判別がつき表示義務がある豆腐や納豆などには、組換え作物を使いませんが、表示義務がない食品の原料には使っています。したがって、ほとんどの人が遺伝子組換え作物から作られた食品を食べているのが実態です。


もし、「遺伝子組換え作物」から逃れるには、ありとあらゆる調味料、お菓子、清涼飲料水、牛肉、豚肉、鶏肉、乳製品を避けなければなりません。


自然は安全で人工は危険なのか?


反対市民団体は、健康被害・自然への影響を問題視します。本書でも、「遺伝子組換え作物が100%安全です」とは言いません。では、遺伝子組換えではない自然栽培の作物は100%安全なのでしょうか?


反対団体のホームページを見てみましたが、本書が指摘しているとおり、推測・可能性に言及があるものの、自ら検証したものは見当たりませんでした。遺伝子組換え作物と甲状腺がんの相関を示したような図を提示していたりするのですが、相関関係と因果関係は別です。

「自然が安全で人に害を与えない」なんてとんでもない誤解です。天然の毒性物質は、フグ毒やキノコ毒などいくらでもあるし、これまでわかっていなかった発がん物質もいろいろと見つかってきています。

自然は安全で人工は危険という発想は、反原発運動にも言えます。自然にできた化石燃料が安全なのでしょうか?決してそんなことはない。


科学には常に不確実性がつきまといます。「ある」ことは証明できても「ない」ことは証明できません。遺伝子組換え作物は有害だ、自然の作物は無害だという主張をされるのなら、自然の作物に害がないことを証明する必要があります。しかしそのようなことはできるはずもありません。


自然は安全、人工物は害がある、リスクはゼロでなければならない、という発想から抜け出しませんか?


理科教育に必要なのは、正解ではなく探究心


この世の中はまだまだ不確実なことでいっぱいです。科学は100%正解を導き出すものではありません。リスクゼロを100%検証することは不可能です。100%リスクゼロを求める声が、遺伝子組換え作物反対運動でも、反原発運動でも大きい。このような声が大きくなってしまったのは、本書にも指摘があるとおり、高校までの日本の理科教育の失敗だと私は考えています。


高校までの理科は、「正解」を学びます。しかし大学以降理系に進学された方、製造業に勤められている方には自明のことですが、科学とは「正解」を学ぶことではなく「正解」を求めて「探求」することです。

明確な答えがあるのが科学だと思われている。でも、実際は、そうじゃない。エコナも遺伝子組換えも、まさに最先端の科学の中で動いていて、そこには不確実性がある。そして、多くの角度からの実験や研究が行われて不確実だった部分が仮説となり、仮説を確認する研究がさらに行われて確定し次に進む。次に進むとまたさらに、今まで見えていなかった不確実な部分が露になり、さらに研究を進めていかなければならない。


リスク最小化の努力はするものの、決してリスクはゼロにはなりません。それは遺伝子組換え作物でも従来農業でも有機栽培でも同列です。そのことを理解するには、小学校から高校までの理科教育の見直しが必要かもしれません。



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