<目次>
- はじめに
- 第Ⅰ部 苦手な人のための読書術
- 第1章 本と苦労なく向き合う方法
- 第2章 難解な本の読み方
- 第3章 多読、速読、遅読の技術
- 第Ⅱ部 仕事を効率よく進めるための読書術
- 第4章 アウトプット優先の読書術
- 第5章 本の集め方、整理の仕方
- 第6章 読書メモの取り方
- 補章 読まずに済ませる読書術
- おわりに
本書は新書新刊サイトを巡回していて見つけたのですが、ちょうど今月、読書に関して人前で話す機会があり、その草稿はある程度できているものの、何かの足しになるだろうと考えて読み始めたのですが、読書術に関する本としては予想以上に良書でした。私自身の読書スタイルの変革を及ぼすことになりそうです。
読書が苦手な人のための本
本書の構成は、目次を見ての通り、二部構成になっています。第Ⅰ部は、文字通り、読書が苦手な方のための読書術で、第Ⅱ部のほうは、どちらかというと読書に限った話ではなく、知的生産の技術に関する内容です。まずは第Ⅰ部について、コメントをしておきます。
読書術の本は世の中にたくさんあります。私もこれまでにもたくさん読んできました。たとえば齋藤孝氏の『古典力』などはお薦めです。読書術本は、その都度新しい発見があり、先人に学ぶために、機会があるたびに読むようにしています。
しかし、著者はそれが読書術本の落とし穴だとしています。読書術本は読書に精通した人が読書を嗜んでいる人向けに書かれた本であり、読書を「苦行」だと感じる人の処方箋になっていないと。そこで本書は、読書が苦手な人向けに書いたとのことです。事実、第Ⅰ部はその通りの内容です。私も10年前まではそれほど読書をするほうではありませんでしたから、そのことがよく分かります。
読書が苦手な人の五大悩み
さて、著者によると、読書が苦手な人の悩みは5つに大別されるとのことです。
- ①億劫で読み始められない
- ②読みはじめても最後までたどり着かない
- ③読む時間がない
- ④ビジネス書と小説の読み方の違いがわからない
- ⑤そもそも読書がなぜ大切なのかわからない
②④⑤については著者の言うとおりで、②と④のビジネス書に対しては読破しなくてもよいと割り切ること、⑤に対しては「本は好奇心を満たし、自分の世界を広げてくれるもの」としています。
読み始めるきっかけの私案
①③について、本書では肝心なことがあまり触れられてないと思うので、私のお薦め方法を述べます。
まず①の読み始めのきっかけですが、周囲の人と読書の情報を交換する人からお薦めします。読書をしない人と話をしても意味がありません。自分よりたくさん読んでいそうな人と話をします。最近何読んだ?で構いません。そして、もし可能であれば、どこかの読書会に参加してみるといいでしょう。
なぜ、人と話をすることが有効だと思うのか。それは、人はなかなか自分の習慣を変えることのできない生物だと思うからです。一人では変えられないことも、他の人がいれば別です。人間は社会的動物ですので、一人で人格を形成しているわけではありません。周囲の人たちと影響を及ぼし合っています。自分より読書をしている人に影響を受ける、というのは良い方法です。
読む時間の私案
③の読む時間について。「馬上枕上厠上」という中国の故事があります。馬の上、枕の上、厠(トイレ)の上です。『思考の整理学』で著者外山滋比古氏が思考の最適な場所としています。馬上というのおは、現代風に読み替えれば、通勤途上の電車の中と言えます。事実、私の読書時間の8割は、通勤時間です。通勤時間は、読書をするか、考え事をするか、どちらかにしています。
忙しいビジネスパーソンに、時間的余裕はありません。通勤時間こそが最後の聖域です。にもかかわらず、通勤電車の7人掛けのシートを見れば、7人中4人はスマホをいじり、1人か2人は寝、読書をしているのは1人か2人というのが現状です(山手線の場合)。時々観察していますので、この傾向は数年来変わりません。もったいないことです。
答えは明確です。読書時間を確保するため、移動中は「スマホの電源を切れ」です。
第Ⅱ部書評へつづく。
【書評】『理科系の読書術』(2)知的生産 : なおきのブログ
副読本
次の3冊は『理科系の読書術』で引用されています。
著者が座右の銘の一つとしています。外的権威を否定し、「要素分割法」というものを提唱し、それが17世紀以降、「科学」の進展の礎になったとのこと。未読につき読んでみたい。
この、著者の別著がたびたび引用されます。ちなみに著者は地学者ですが、理系の学者が読書術・古典論を解くのは、私が理系にいちばん大切な科目は国語と主張しているのに通じるものがあります。
第Ⅱ部にて、ショウペンハウエルについても言及がありました。こちらも未読につき、あぁそろそろ読まないといけないなぁと感じます。
以上
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