1ヶ月半ぶりとなる朝活読書サロン。前々回は鎌倉での合宿研修のため早朝移動し、前回は、前日の夜更かしのため、うっかり寝坊をしてしまいました。そして、今回は、一人参加者を招待していたため、寝坊するわけには参りません。
それなのに、まさかの雪!東京都内の11月の積雪は、明治時代の1875年からの観測史上、初とのことです。という、飛んでもない日に当たってしまいました。通常ですと、11月にコートを着ることはないのですが、今回はコートで出動しました。
今回は、女性6名、男性3名の参加。やったー!女子率が高い!
9人の開催は、全員分を紹介するのにぎりぎりの人数です。シミルボンでお世話になっている(?)真珠子さんをご招待、そしてもう一人、私が不参加の間に連続参加中のカナさんと初対面となりました。
紹介した軽いほうの本(18禁)
(11月30日、本記事をリライトしました。そちらを参照ください。
【書評(18禁)】『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』 : なおきのブログ)
初対面の女性いる中で、しかもお隣に座られてしまったのですが、この本を紹介するか?!と躊躇しつつも、ポケットに忍ばせていた本書。シゲさんに指摘され、かつ、紹介する前に、写真タイムが来てしまい、出してしまいました。というわけで、引込みがつかなくなり、紹介いたしました。
天才からの転落
本書を書いたのは、全国ナンバーワン偏差値の中高一貫校・筑波大学付属駒場中学・高校出身の森林原人さん。「もりばやしげんじん」と読みます。どこにも書いていませんが、まあ、芸名でしょう。偏差値78というのは、釣り文句です。それ、中学入試時の合格ラインの偏差値です。大学偏差値ではありません。筑駒といえば、卒業生の半分ぐらいが東大に進学してしまうような日本一の東大進学率を誇る高校です。東大合格者数の絶対値は開成のほうが多いのですが、筑駒は一学年4クラスなのに対し、開成はたしか10クラスあります。母数が違うんですよ。在校生に占める東大進学率は筑駒のほうが上なのです。
半分東大に行っちゃうような学校なのに、彼の進学先は専修大学。たぶん、筑駒で最底辺レベルです。誰もが筑駒から行く大学ではないと思うでしょう。しかも一浪ですよ?同窓会には顔を出せないでしょうし、大学に入っても「この人、筑駒から一浪したの?」と思われてしまうでしょう。案の定、本人曰く、大学では友達ができなかったとのこと。ご愁傷様です。(専修大学出身の方、気を悪くされたら、ごめんなさい。)
見つけたポジション
そもそも、中学に進学した時点で、周りが凄すぎて、間違った中学に来てしまったと悟ったのもあとのまつり。中学の中で自分が見つけたポジション、誰にも負けないのは「エロ」でした。そう、彼はエロ知識だけは、負けなかった。人一倍、エロいことを考えて考え抜いた。人生の3分の2をエロいことを考えてきた三浦じゅん氏よりも、もっとエロかったんじゃないでしょうか?そして興味が募り、大学在学中に、AV制作現場の門を叩き、入門します。
最初の一年ぐらいは汁男優(端役みたいなもの)でしたが、二年目ぐらいから絡み(つまり本番)を任せられるようになったとのこと。そしてかれこれ17年間、AV男優を続けています。
『セックス幸福論』
AV男優を続けて悟ったこと。それは、セックス自体を、セックスが好きであることを、卑下する必要も何でもないこと。セックスを恋愛感情抜きでも純粋に楽しんでいいこと。もちろん、愛にはセックスがあったことほうがいい。だけど、それは相手のためにするというのは実は傲慢なことではないか、自分が楽しむ、その結果、相手も楽しむこともある、ぐらいに謙虚に考えた方がいいのではないか、それが、セックスで幸福になるのではないか、とまぁこんな話です。
なにしろ、一ページの間に「セックス」というキーワードが10回以上も出てきます。セックス、セックス、セックスって、早朝から初対面の女性が隣に座っているのに、どうして紹介できようか?
けど、紹介してしまいました。
紹介した重いほうの本
もう一つが岩波の赤本。岩波新書は、新書の中では最硬派の新書です。『読書と日本人』というタイトルの本ですが、日本における読書史の本です。我々が考えている「読書」というものは、いかに変遷して今日の形に至ったかを歴史を通じて解説します。目次と照らして見ていきましょう。
<目次>
- Ⅰ 日本人の読書小史
- 1 はじまりの読書
- 2 乱世日本のルネサンス
- 3 印刷革命と寺子屋
- 4 新しい時代へ
- Ⅱ 読書の黄金時代
- 5 二十世紀読書のはじまり
- 6 われらの読書法
- 7 焼け跡からの再出発
- 8 活字ばなれ
- 9 <紙の本>と<電子の本>
平安時代から室町時代
1章は、『源氏物語』を『更級日記』の著者菅原孝標女が黙読していたのか音読していたのか?という話と、手書き模写で、誤字脱字、転記ミスで濫造される中、定本を定めのが藤原定家だったという話。
2章は、足利義政が、今日の書斎である「書院」を造ったという話。銀閣寺のことですね。これで、明治時代までの読書スタイルが確立します。
戦国時代から江戸時代
3章は、戦国時代の一向一揆が生じた理由は、戦国時代・江戸時代初期のキリシタン急増の謎に迫るもの。ヨーロッパでは、グーテンベルクの活版印刷の改良により聖書が大量生産された結果、マルティン・ルターによる宗教改革が起こります。それまで、教会に行き神父を通じてしかアクセスできなかった聖書に、誰もが文字を習えば聖書を自ら読めるようになったからです。
同じことが日本でも起きます。木版画による仏教の経典の普及が、圧倒的な経典読書人口を増やし、一向一揆をもたらしました。戦国時代、ポルトガル人は活版印刷機ももたらしました。聖書を日本で日本語に翻訳し、日本語の聖書が大量生産されました。だからキリシタンが急増したんですね。
今回、初参加の真珠子さんは、実は天草出身。最もキリシタンが多かった地域です。活版印刷機がもたらされたことをご存知でした。おー!本書に書かれていたことの裏が取れました。
さらには、江戸時代。『好色一代男』や『東海道中膝栗毛』が、町民たちに普及しました。また、寺子屋の普及により、江戸末期には男性識字率が40%になります。他のアジア諸国では見られないこの識字率の高さが、明治維新の原動力になりました。ただ、江戸時代の印刷は、活版ではなく木版画、活字体ではなく草書体でした。
明治時代から昭和戦前
4章で明治維新を迎え、福沢諭吉が登場します。『学問のすゝめ』の発行部数は300万を超え、大ベストセラーになります。そして、義務教育が始まり、大正時代には男性の文盲率はほぼ0に収束し、男性に遅れること10年のちの昭和初期には、女性もほぼ文盲率が0になると推察されます。
5章は、本のブームがどのように起こったのかということ。明治末期ごろには、夏目漱石らの登場により文言一致がなされ、明治の文豪たちによる小説が一気に花開きますが、関東大震災により、一気に焼失。しかし、そこからのリカバリーがすごい。1920年代半ばに立て続けに、後に100万部を誇る雑誌『キング』が創刊、1円の文学全集、円本ブームの到来、岩波文庫が創刊します。
6章では、同時期に、電灯が普及したことにより、蝋燭や蛍雪に頼らずとも夜に読書ができるようになり、通勤電車の登場により、電車の中でも読書ができるようになりました。もちろん、持ち運ぶには文庫本が便利です。また、購入した文学全集は、リビングの本棚にドーンと構えて納まりました。そして、1936年には、出版数の戦前のピークを迎えます。そして、戦争がはじまり、再び、本は焼失します。
戦後から今日まで
7章は、戦後のスタートです。紙を失っただけでなく、紙工場も失いました。紙が手に入りません。既に読書習慣を身につけてしまった人たちは、読書に飢えました。著者は1938年生まれ。その時のことを覚えているとのことです。しかし、朝鮮戦争が勃発し、出版業界も急回復します。1950年代から1960年代、読書の黄金時代を迎えます。
8章になると、時代は1970年代へ。すでにテレビが普及し、人びとの生活が豊かになりました。映像メディアに奪われるかっこうで、余暇に占める読書の割合が減っていきます。しかも、重厚な本、哲学的な本を読む比率が減り、軽薄短小化が進みます。本よりも雑誌やマンガ、岩波書店よりも新潮社へ。雑誌のスタイルも、それまでの文芸雑誌から、今日の雑誌のスタイル、消費を喚起するための手段へと変わります。
これは奇異に感じるかもしれません。しかし、今の時代から、インターネットもテレビもなかったと考えてみて下さい。映画はあったかもしれません。しかし、それ以外、一人で過ごすには何をすればいいのでしょう?人々、少なくとも大学出身者は、読書以外、他に余暇を過ごす手段がなかったのです。
9章は未読ですが、電子化後の話になります。
歴史を考察すること
以上、ざあっと駆け足で説明しましたが、いやぁ、けっこう目から鱗でした。歴史教育のよくないことの一つが、年号を暗記させるだけという点です。なぜ、そこへ至ったのかという考察がありません。重要なのは、そこです。キリシタン急増の意味、震災や戦争の影響、消費文化の隆盛など、それがなぜ起きたのか、それらと読書がどう関係するのか、本書を読めば、その答えが分かります。
読書家の方、本屋さん、出版社の方、必読書ということでお願いします。
紹介を受けた本は、こちら。
【朝活読書サロン】真珠子さん登場(11月24日) | コラム | シミルボン
朝活読書サロンへの参加記録
2014年
2015年
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2016年
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