SMイラスト
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<目次>
  • プロローグ あなたはS?それともM?
  • 第一章 そもそもSとは?Mとは?
  • 第二章 SMって何?いつから発生した?
  • 第三章 SMは、どのようにエスカレートしたのか?
  • 第四章 SMは、歴史の必然から生まれた
  • 第五章 SMの理想の相手は、どこで見つかるのだろう?
  • 第六章 SMは、文化のバロメーターである
  • 第七章 日本人にとって、SMとは何か?
  • エピローグ
  • 編集協力


プロローグ


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忘れもせぬ8月21日の朝活読書サロン。S系女性とM系男性の集う当読書会で、とあるS系の女性が本書を紹介したかと思うと私に目配せをし「ほら、あなたも読みなさい」と有無を言わさず私に手渡しのが本書でした。


なお本書の著者はフランス文学者の鹿島茂氏。共立女子大学にて教鞭をとり、女子大生たちに悪女の道を示す方です。なんともうらやましい限りです。


書評本編


本書は西洋および日本でのSM誕生の秘話を紐解きます。古今東西問わず、SMの主はMです。Sではありません。Mの被虐性に応えるのがSの役目です。


キリスト教圏のSM

西洋でのSMの誕生は、言わずもがな、18世紀末にサド侯爵が嗜虐的な文学作品を生み出したことにあります。モンテスキューやルソーらに端を発した自由主義的な時代の風潮が、嗜虐的な文学作品を生み出したのでしょう。


しかしそれはきっかけに過ぎず、そもそもの根本原因とは言えません。本書では「キリスト教がセックスを『繁殖』と『快楽』に分離して、快楽を禁止した」ことに端を発し、快楽を追求した結果がSMの誕生だとしています。


さらに時代を遡ります。キリスト教圏のSMはムチを振るいます。ムチを振るわれ磔にされた代表的人物と言えば、イエス・キリストその人。この虐められるキリストのイメージは現代では当たり前のものですが、鹿島氏によると、この虐めらたキリストのイメージが定着したのはキリスト教がゲルマン人やケルト人に普及して以降とのこと。彼らの原始宗教の要素を取り入れたからではないかと鹿島氏は分析します。


というのも、彼らに受容される前のキリスト教絵画には磔シーンがなかったとのこと。えっ?!そうなの?びっくりですが、本当にそうらしいです。


ローマ帝国から見て、ローマ化(キリスト教化)される前のゲルマン人やケルト人は野蛮人でした。

野蛮人は家畜をムチ打ちます。磔されムチ打たれるキリストのイメージは、そこから来ているそうです。


いずれにせよ、ムチを打つスタイルのキリスト教圏のSMは、①磔されムチ打たれたキリストのイメージ、②キリスト教の禁欲主義、③18世紀の自由解放的な気運によって誕生した、と言えます。


磔イメージはキリスト教の原点ではなかった!
キリストの磔
credit : music4life via pixabay.com (license : CC0)


日本のSMの源流

とすると、日本のSMの源流はどこにあるのでしょうか?西洋のSMがムチを打つのに対し、日本のSMは縄で縛ります。なぜ縄なのか、本書を読んでもいまいちよく分かりませんでしたが、縄は稲作文化の一つですので、縄を用いることになった必然もきっとどこかにあるのでしょう。


本書では、日本のSMの源流は『源氏物語』にも垣間見れるとしています。虐めてほしい宮廷女子たちが理想のS男性を描いたのが光源氏とのこと。引用します。


「絶世の美男子で、全能で、女の子の気持ちはすべてわかっている光源氏といSが、Mの女の子たちをいたぶりまくる」

これは、世界の生んだ、最初の偉大なSM小説といえます。光源氏は自分の意思で振る舞っているように見えるのですが、じつは、大和朝廷の女の子たちが、読者として集団的に「育てあげた」理想のSにほかならず、読者の意のままに動いているのです。 (P180)


エピローグ:文明社会の成熟がもたらす男女関係の変化


さて、翻って現代。女性が社会進出し、女性の発言権が増すことは、文明が成熟過程にあると言えます。本書でも「文明の解放度は、女性の解放度に正比例する」としています。


従来の「仕事=男性、家庭=女性」という性的役割が見直されつつある昨今、「S=男性、M=女性」というSM界における性的役割も見直され、女性の解放度に比例し、S的な女性、M的な男性が増えていくのではないかと想像します。谷崎文学作品はまさにその象徴であり、私の参加する読書会も、まさにその様相を呈してきています。


免責事項

本書評は私の主観によるものです。読書会がS系女性の集いとか、本書を無言で読めと命じたとかは、私の頭の中の勝手な妄想であり、事実とは限りません。なお、本書評はこの本を紹介した女性にも内容確認いただいています。また、新たな目配せ指示も依頼しました。


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