細雪 (上) (新潮文庫)
谷崎 潤一郎
新潮社 ( 1955-11-01 )
ISBN: 9784101005126

細雪 (中) (新潮文庫)
谷崎 潤一郎
新潮社 ( 1955-11-01 )
ISBN: 9784101005133

細雪 (下) (新潮文庫)
谷崎 潤一郎
新潮社 ( 1955-11-01 )
ISBN: 9784101005140


谷崎潤一郎の代表作、『痴人の愛』『春琴抄』、そして『細雪』へと読み進みました。それぞれの出版年は1924年(谷崎38歳)、1933年(47歳)、1944年(58歳)。約10年間隔で出版されたこの三作品を俯瞰すると、谷崎が成熟していく過程がよく分かります。『痴人の愛』では10代の少女に狂う20代の男を描き、『春琴抄』では純愛を、そして『細雪』では、阪神の良家蒔岡家を描きます。


舞台設定


蒔岡家の四姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子。鶴子、幸子の二人は婿養子を迎え、鶴子は六人の子どもに恵まれ、幸子には子どもは悦子のみ。雪子は婚期を逃し独身で華奢で奥ゆかしい性格。末娘妙子は20歳の時に駆け落ちするなど奔放な性格です。


全編、ほぼ幸子を一人称にして描いており、雪子・妙子は長女の鶴子の家は寄り付かず、芦屋の幸子に居候し、鶴子はやや影が薄い存在です。


舞台は芦屋で阪急電鉄沿線。1937年から1940年。支那事変、ヒトラーによる独墺合併、欧州戦争勃発などが描かれています。幸子の家には電話が引かれており(本書注によると昭和26年時点で家庭用電話は86000)蒔岡家の人も登場するゲストもみなタクシーで移動します。
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あらすじ


話しの中心は、雪子の見合いと妙子の男関係。雪子は上巻で2回、下巻で3回、都合5回見合いし、5回目にしてようやくゴールイン。見合いをする際、相手の年収だけでなく、相手の財産、親族の有無、性癖まで徹底的に調べるというのが、当時の良家の風習だったようで、現代からすると、かなり違和感を感じます。一人目は相手の母が精神病を患っていることが発覚して破談。二人目は、義兄の貞之助(幸子の夫)より年上であるばかりか、年より老けて見え、かつ亡き妻子の遺影を見せられたことにより、破談。三人目は、義兄の辰雄(鶴子の夫)の姉の計らいで大垣で見合いするも、初めて先方から縁談を断られて破談。四人目は、貞之助が奔走し男同士意気投合するも、雪子の煮え切らない態度で断られ破談。五人目は、子爵家の庶子でようやく婚姻が成立。東京へ向かう列車に乗ったところで幕閉じ。


一方、妙子は、本書が始まる前に、ボンボンの奥畑と駆け落ち騒動を起こし、それが新聞沙汰に。奥畑とは距離を置きながら人形作りや舞に精を出す。奔放な性格ながらも、才能豊か。阪神間の大雨で生じた洪水に妙子は巻き込まれ、彼女を救ったのが写真師の板倉。板倉といい仲になり、板倉との結婚を考えるも、幸子はどちらかというと、出自の低い板倉との結婚には反対する。しかし、板倉は病死。奔放さと実家(辰雄・鶴子の家庭)へ帰ることを拒絶した妙子は、絶縁される。その後、妙子は奥畑の家に出入りし、また奥畑の家で病床に就くも、実は三好というバーテンとも深い仲になっていた。三好の子を妊娠し、そのことを幸子に打ち明け、世間から遠ざけるために有馬温泉で療養しながら出産することにしたが、流産してあっけなく幕切れ。
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谷崎の描写


幸子を一人称として描かれているわけですが、二人の妹との関係、夫との関係、実家の姉・義兄との関係、雪子に見合い話を持ち込む井谷や、雪子との見合い相手との関係など、きめこまかに描写していきます。特に、歯切れが悪く引っ込み思案な雪子、奔放な性格でたびたび問題を起こす妙子、二人に対していろいろ忖度しては思いめぐらせ対処しようとするも、しくじり続ける幸子。そして三姉妹が京都へ和服を着飾って出かけていく様など、谷崎の女性描写には、圧巻です。谷崎が女性読者にも支持されていることを考えると、谷崎の女性心理の描写には間違いないのでしょう。


あなたはなぜそこまで女性のことを知り尽くしているのでしょうか。うらやましくもありますが、そこまで女性のことを知り尽くしてしまうと、かえって悩みも深くなってしまうような気がします。そしてまた、私自身も、谷崎と同じ道を歩んでいるようにも感じます。



谷崎潤一郎。大正2年撮影。

谷崎潤一郎。大正2年撮影。

image via Wikipedia lic:P.D.



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