目から鱗が落ちるとはこのことか?それが、本書を読み終わった第一印象です。


日本の財政問題、少子高齢化、経常収支、世界のエネルギー問題、環境問題、食糧問題。こうした社会課題に関心のある方には必読の書ではないかと思いました。


本書は、『デフレの正体』の著者・藻谷浩介氏の最新刊です。12月18日のプラネタリーデザイン講座の課題図書ということもあり、早速読んでみた次第です。


藻谷氏のことは存じ上げませんでした。タイトルからして清貧を説いた本ではないかと勘ぐってしまったのですが、そうではありませんでした。誤解をいたしており、申し訳ありません。


本書は、金融資本経済・貨幣経済社会に代わる、社会資本経済・評価経済・非貨幣経済社会、著者がいうところの「里山資本主義」へのシフトを促す啓発書です。


日本において、依然、財政が課題です。世の中には、国債はいくら発行してもよいといったような、単眼的で本質において誤った政策を提言する本が多い中※、財政問題・形状収支・少子高齢化・エネルギー問題・環境問題・食糧問題を多面的に分析した上で※2、本書の提言を行っています。


少しだけ、本書の中身に触れたいと思います。



※1アベノミクスも、その本質において誤った政策です。日銀総裁黒田東彦氏は、2005年の著書で日銀による金融緩和策はよい結果をもたらさないことを述べています。彼がアベノミクスになぜ加担したのか不思議なのですが、本心は別のところにあるような気がしています。

※2 このことを著者は「根本原因分析」と呼んでいます。


<目次>

はじめに 「里山資本主義」のススメ

第一章 世界経済の最先端、中国山地

 ー原価ゼロ円からの経済再生、地域復活

第二章 二一世紀先進国はオーストリア

 ーユーロ機器と無縁だった国の秘密

中間総括 「里山資本主義」のごっくい

 ーマネーに依存しないサブシステム

第三章 グローバル経済からの奴隷解放

 ー費用と人手をかけた田舎の商売の成功

第四章 “無縁社会”の克服

 ー福祉先進国も学ぶ“過疎の町”の知恵

第五章 「マッチョな二〇世紀」から「しなやかな二一世紀」へ

 ー課題先進国を救う里山モデル

最終総括 「里山資本主義」で不安・不満・不信に訣別を

 ー日本の本当の危機・少子化への解決策

おわりに

あとがき

なぜだか分かりませんが、カバーが変更になっていました。


捨てていた木屑などの木材資源を再利用・バイオマスによる地域活性化


第一章では岡山県真庭市、第二章ではオーストリアの片田舎で、木屑などのこれまで捨てていた、見向きもされなかった木材資源を再利用し、地域活性化を行っている例です。真庭市の製材業・銘建工業では、木質ペレットを用いたバイオマス発電で2000世帯分の電力を賄っており、市の電力消費量の10%になるとのことです。



耕作放棄地の再利用


第三章から第四章では、若者のUターン、Iターンの模様を描いています。


田舎には多数の耕作放棄地があります。食糧自給率の低下は、高度経済成長した日本では農業は低生産と見なされ、あきらめた結果とも言えます。誰も見向きもしなかった耕作放棄地を若者が入植し、自活の道を歩み、付加価値の高い製品を作り、かつ、地域社会のつながりをも再生していきます。


本書で取り上げられている事例をインターネット上で探し当てました。



マネー資本主義へのアンチテーゼ


中間総括では、マネー資本主義へのアンチテーゼとして、3つのポイントにまとめています。


  1. 「貨幣換算できない物々交換」の復権
  2. 規模の利益への抵抗
  3. 分業の原理への異議申し立て


「あなたはお金では買えない」という言葉が心に突き刺さります。あらたな「里山資本主義」の定理といえます。


都道府県収支


この「都道府県収支」という考え方も目から鱗でした。


なぜ都会は経済的に潤い、田舎が貧しくなっていくのか?その答えが「都道府県収支」です。国家単位の経常収支が黒字であれば国は富み、赤字であれば貧しくなっていきます。同じことが都道府県単位・市町村単位でも起きています。


どの都道府県が黒字で、どの都道府県が赤字か、なんとなく分かるのではないでしょうか?本書では高知県を例に取り、黒字品目・赤字品目を列挙しています。


  • 黒字品目:農業・漁業・林業など
  • 赤字品目・石油・電気・ガス・商業・飲食料品・製材・畜産


重化学工業製品は省きました。工場立地状況により左右されるからです。一次産業が黒字でエネルギーと一次産業の加工産品が赤字であるというのは、田舎と呼ばれる県の共通項ではないでしょうか?


赤字収支の自治体は、エネルギーを外から買っているために赤字になります。一次産業の生産があるのにも関わらず、その加工を県外に委ねて再輸入に頼っているために赤字になります。


都道府県収支の引用元の論文にリンクを張っておきます。



里山資本主義


高度経済成長以降、都会と田舎の地域格差が拡大するということで、日本政府は都会の税金を田舎に回すことによって格差縮小を図ろうとしてきました。その結果が失敗したことは自明です。


果たして、田舎は都会に依存しないと生きていけないのでしょうか?


本書の答えはNOです。赤字品目とされているエネルギーを自活し、また、一次産業の加工も県内で行いかつ輸出に回すことによって全体の赤字額の縮小・黒字化をめざし、そして、田舎社会が自立した社会へ再生する道のりを示したのが「里山資本主義」です。



関連書籍

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング) ( 2010-06-10 )
ISBN: 9784047102330



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